【掌編小説】とべないわたし/飛由ユウヒ
「ねぇ。年始にさ、旅行にでも行かない?」
連日の妄想で貯まった勇気を糧に尋ねてみる。二度温められた生姜焼きを無表情で頬張る彼は、仕事で疲れているのかあまり元気がない。せっかく作ったんだから、嘘でもおいしそうに食べてほしいと思いながらも、彼よりもちょっぴり大人なわたしは冷静に、いかにも素敵な提案をしている風を装ってみせた。
「付き合って半年経つし、お互い四日まで休みでしょ? それにこれ見て」
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