【掌編小説】うつろな虎視/飛由ユウヒ
『こちらは、防災山尾高です。ただいま、南沢こども動物園から、虎が一匹、脱走したとの報告を受けました。これから読み上げます、ご住所にお住いのかたは、大変危険ですので、外出をお控えていただくよう、ご協力お願いします。八城地区、青台地区、鳩場地区、米井地区。ただいま申し上げた地区にお住いのかたは、外出をお控えていただくよう、ご協力お願いします。繰り返し、申し上げます。こちら、防災山尾高です。ただいま、南沢こども動物園から——』
寝ぼけた空に、防災無線が鳴り響く。緊張とはほど遠い