「生きやすい世界」について。 その1

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2019年10/23から「LGBTQについての理解を、京都発のフリーマガジンを通して広めたい!」というテーマでクラウドファンディングのプロジェクトをおこなっています。
正味20日間ほどの短期間のプロジェクトですが、10/29現在、14名の方からご支援をいただき、さらに多くの方々から情報の拡散や応援のメッセージという形で協力をいただいています。ありがとうございます!

游魚によるクラウドファンディングのプロジェクト「LGBTQについての理解を、京都発のフリーマガジンを通して広めたい!」のページはこちら


ところで、このクラウドファンディング・プロジェクトのサブタイトルは、「どんな『性』の人も住みやすい社会に!」です。
僕は、性的マイノリティと呼ばれる人たちだけでなく、いまの社会に「生きづらさ」を感じているさまざまな人々が、すこしでも住みやすい世の中になればいいと思い、このプロジェクトをおこなうことを決意しました。
そして、その第一歩は、まずは自分が「生きやすい」(こういって大げさなら「居心地がいい」「住みごこちがいい」)世界をつくることからはじまると思っています。

では、自分にとって「生きやすい世界」とはどんな世界だろう?
そこで思いだすのが、いまから15年ぐらい前に参加した、イタリアの演出家テレーサ・ルドヴィコ(Teresa LUDOVICO)のワークショップです。

彼女はイタリアでテアトロ・キスメットという子どものための劇団を主宰するほか、女性刑務所の囚人との演劇創作など社会的なプロジェクトにも積極的に数多く関わっている人で、このときは初来日公演のためにオーディションを兼ねたワークショップを東京で数日間にわたっておこなうとのことでした。

僕は友人の舞踏家の紹介でこのワークショップに参加したのですが、会場に行くと、演出家の希望にあわせて、小劇場の役者やコンテンポラリーダンサーから、オペラシアターの俳優や宝塚のスターまで、あらゆるジャンルの表現者があつまっています(僕は「舞踏ができる俳優」ということで呼ばれたそうです)。
そんな参加者たちが緊張しつつ注目するなか、当の演出家であるテレーサがあらわれました。
そして参加者たちの前で、彼女はひとことも発しないまま、音楽をかけて踊りはじめたのです。
彼女は無言のまま、自分の踊りに参加者をひとり、またひとりと招きいれていきました。
最終的には参加者全員が踊りの輪に参加して、ときに音楽に身をまかせて、ときに押しくらまんじゅうのように他者と触れあいながら、誰もがしばらくのあいだ無心に踊りつづけました。

やがて音楽が止まり、自然に踊りもおわりました。
参加者たちはすでに心身ともにすっかりほぐれています。
見事なワークショップ前のウォーミングアップでした。

そしてワークショップがはじまると、彼女はワークショップのあいだ「(演技以外で)言葉を発しないこと」を守るように参加者にいいました。また、「照れ笑い」もやめるようにいいました。
これはいまにして思えば、頭であれこれ理解しようと考えるのではなく、感じることを大切にするためのルールだったのだと思います。(「言葉」は、ときに他者や自分への批判を生みやすくなりますし、「照れ笑い」は本気で物事に取り組むこととあまり相性がよくないですよね)。

僕が見たところ、テレーサは、ワークショップのあいだじゅう、ずっと参加者が心をひらき、安心して演技ができるような環境を整えることに力を注いでいるように見えました。
この「心をひらく」というのは、「さあ、心をひらけ!」と命令されたからといってできるものではありません。
ちなみに日本の演劇界では、当時は威圧的に俳優を追いこんでいく、スパルタ式の演出家がまだまだ幅をきかせていましたが、テレーサは真逆で、みんなが「安心して自分をさらけだせる」空間をつくることを重要視していました。
彼女は「(人を傷つけること以外なら)なにをやってもここでは受け入れます」と明確に宣言していたのです。
これは、「この場所でなら、なにをやっても大丈夫」「どんな冒険をしても大丈夫」と俳優が思えたときに、その力がはじめて存分に発揮されるということを、彼女が知っていたからではないでしょうか。

これは、なにも演劇に限ったことだけではなく、家庭や学校、職場など、日常生活の場面でもおなじことがいえると思います。
まずは家族や恋人同士、友人同士などちいさなところから、「おたがいが安心して自分をさらけだせる」場所をつくっていくことが、「居心地のいい世界」をつくるためには大切なのかもしれません。
そして、安心して自分をされけだすためには「守られている」という感覚が重要になります。
先日、オランダ・アムステルダムで参加したクイア・イベントの会場では、写真撮影禁止の警告サインがあちこちに書かれており、イベントの参加者や来場者をしっかりと守る主催者側の姿勢がいたる所に感じられました。


さて、15年前のテレーサのワークショップ・オーディションの結果ですが…コールバック式(合格者だけ後日呼びだされて再びオーディションを受ける)のオーディションで、僕はなんと「雪の女王」役候補として最終選考まで残りました(演目はアンデルセンの『雪の女王』でした)。
このときの候補者は僕を入れて3人で、ほかの2名は宝塚の元トップスターの方と、当時は伊藤キムさんのカンパニーにおられた森下真樹さん(この方が公演では雪の女王を演じました)でした。
僕は惜しくも役を得ることはできませんでしたが、このメンバーを考えると、当時まったく無名のアングラ役者だった僕にしては、「よくやった」と自分にいってあげたいです。
そして、当時は特に女装をしていたわけではないにもかかわらず、『雪の女王』役で僕にオーディションを受けさせたテレーサの眼力には、ただただおそれいるばかりです。

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ギター、こえ、うた、ことば、ダンス、女装などを駆使して表現する人。 即興系宇宙バンド、彗星ミトコンドリアではヴォーカルとギターを担当。 近年はおもに文筆を生業として、女形として演劇作品にも出演している。
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