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愛における嘘と自分の心について

 電車で、美少女三姉妹全員と結婚する漫画の広告を見た。その愛は嘘だろうなと思った。三姉妹全員と結婚して、彼女らは天使のように振る舞う。それはひとりよがりな欲望を仮想の世界で満たしているだけな気がした。二次元のキャラであっても、本当に愛していたら三人同時と付き合えないはずだ。
 二次元に恋するのも、アイドルを推すのも、愛があるからだと思う。でも、アイドルが彼氏を作ってたと烈火の如く怒る人たちは、ただ単に金を返せと言ってるように見えて、その愛は嘘だろうなと思ってしまう。
 愛の対象も方法も自由だ。愛は自由であることだ。ただ、そこに嘘が生まれると、すべては陳腐になり崩れる。
 愛に嘘はつきものだ。嘘をついているからこそ狂わんばかりに愛してしまうところが人間にはある。嘘のある愛は破綻する。構造として自分を保っていられず、たいてい悲惨な結果に終わる。だからしばしば人間関係は破綻する。
 夫婦円満の秘訣はただひとつ、嘘をつかないことだろう。嘘をつかないというのは、自分の心から背いたことをしないという意味だ。これが案外難しい。愛を抱えることはすごく体力が要るのはこのせいだ。常に、自分がしたい方向に自分を動かすのは大変なことだ。
 過去を振り返って、「あれは嘘だったな」と思う人間関係でも、ほんのかけらのように本質的な時間を過ごしていたりする。嘘が悲しいからこそ、わたしたちはそういう瞬間を心の中で愛撫して過ごす。
 それでも、わたしたちは嘘のない愛のなかで生きてゆくしかないのだ。自分の心の正しいと思った方へ自律しないと生きてゆけないのだ。嘘が懐かしくても、どんなに魅力的でも、心の中に留めておくのが礼儀だ。自分の心をしっかり握りしめて生きてゆくほかない。

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