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又貸し説は現実の信用創造ではない。簿記を学べ。

割引あり

又貸し説

Google検索で「信用創造」と検索すると、「又貸し説」を説明する記事ばかりヒットします。簿記を学んだことがない人が、又貸し説を信用創造と語っていることがわかります。本記事で又貸し説の説明はしません。知りたければ以下のリンク先で説明を読んでください。

信用創造とは

信用創造とは何かについては以下の記事を読んでください。

忙しい方のために端的に説明します。

  • 「信用」とは「債権・債務の関係」のことで、「信じて疑わない」という意味ではない

  • 信用創造は、信用(債権・債務の関係)を創り出す取引によって、「貨幣を創造する」手段のこと

又貸し説は信用創造ではない理由

又貸し説による信用創造の説明が間違っているところは以下のとおりです。

  • 【誤】銀行間で銀行預金を貸しつける

    • 【正】実際は、中央銀行の金融機関名義の口座を介して取引をしている。

  • 【誤】銀行間で現金を貸しつける

    • 【正】中央銀行当座預金と現金を交換して調達している。銀行間で現金の貸付は実際に行われることはない。

  • 【誤】銀行預金が預金準備率に計上される

    • 【正】預金準備率に計上されるのは、中央銀行当座預金と中央銀行券、つまり中央銀行の負債のみ。

    • 【正】現金(中央銀行券)に対し預金準備率を計算しているとしても、実際の預金準備率はほぼ0%で意味をなしていない。

銀行預金の又貸し

又貸し説でよく説明される、銀行間の又貸しを、複式簿記で記帳すると以下のようになります。

又貸し説では「預金準備率」を取り上げて、「自行預金の10%を残して90%を他行に貸し出す」という説明をしています。

「預金準備率」に計上されるのは、中央銀行(日本おける日本銀行)の中央銀行当座預金と、中央銀行が発行する中央銀行券(現金紙幣)です。

預金準備率を10%だと仮定すると、預金準備率の対象となる「現金紙幣」を持つA銀行はともかく、B銀行は現金を持っておらず、預金準備率が0%なので貸出できることがそもそもおかしいです。

日本銀行は、銀行の普通預金に対する準備預金制度における準備率を以下のように設定しています。

日本の銀行法銀行において預金残高が500億円以下の場合、日本銀行に対する預金準備率は0%です。従って、例えば以下の図のように、A銀行はB銀行へ100兆円貸し出し、B銀行はC銀行へ500兆円貸し出すということが可能です。

信用創造は、債権・債務の関係によって貨幣を創り出すプロセスなので、そもそも担保なんて必要ありません。理論上、いくらでも信用創造が可能です。預金者αがA銀行に預金することと、A銀行がB銀行に預金を貸し出すことは独立事象、つまり無関係なのです。

実際、銀行はBIS規制などによって預金の貸し出し制限がありますが、これはまた別の話です。

そもそも、銀行間の資金のやりとりは、コール市場(短期金融市場)で行われます。このコール市場で取引されるお金は「中央銀行当座預金」であり、日本では日本銀行当座預金です。つまり、中央銀行の当座預金を介して銀行間の決済が行われます。

中央銀行当座預金を直接使用しない銀行間の取引は、現代の金融システムおいて非常に珍しいケースで、現実ではほぼありません。

現金の又貸し

同様に以下の図のような、銀行間で現金を貸し借りすることも、現代の金融システムおいて非常に珍しいケースで、銀行にとってはこのような取引を行うメリットは皆無のため、ほぼ行われることはありません。

銀行は現金が欲しい場合、中央銀行当座預金と交換で手に入れます。

本当の信用創造

本当の信用創造のパターンは、大きく分けて3つあります。

  1. 中央銀行が金融機関に、中央銀行当座預金を貸し出すとき

  2. 中央銀行が金融機関から国債を購入

  3. 金融機関が民間(非金融法人や家計)に預金を貸し出すとき

1. 中央銀行が金融機関に、中央銀行当座預金を貸し出すとき

中央銀行が、中央銀行に口座をもつ金融機関に貸し出すことにより、その金融機関は中央銀行当座預金を得ます。

2. 中央銀行が金融機関から国債を購入

中央銀行が金融機関から、国債を買い入れた(買いオペした)ときにも信用創造は行われます。

3. 金融機関が民間(非金融法人や家計)に預金を貸し出すとき

預金業務ができる金融機関は、信用創造によって預金を貸し出します。このとき、民間は通帳の数字が増えます。

まとめ

信用創造の本質は、中央銀行や金融機関が新たな貨幣を創出するプロセスにあると理解することが重要です。又貸し説が示すような、銀行間の現金や預金のやり取りが信用創造の全体像を表しているわけではありません。

現代の金融システムでは、1.中央銀行が金融機関に中央銀行当座預金を貸し出したり、2.国債を購入すること、また3.金融機関が民間に預金を貸し出すことなど、これらの行為によって新たな貨幣が創造されています。

これらのプロセスを正確に理解し、又貸し説に惑わされることなく、信用創造の実態を把握することが、経済・金融の理解を深める上で不可欠です。

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