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観劇レポ「마리퀴리(マリーキュリー)」

↑行くまでのお話


⭐︎ネタバレしかないよ⭐︎

予習

推しのミュージカルが見たかっただけで正直内容はなんでも良かった。

人気俳優のジチョルさんはなんだかんだほぼ毎日公演がある。ということで自分の休みに会う日に見に行ける「マリーキュリー」のチケットをとった。

スーツが似合う推し俳優。最高。


キュリー夫人!良かった!実話!!!予習がしやすい!!!

韓国語の出来ない私は予習しないと起承転結すらわからない。日本のお芝居は断固としてネタバレ食らいたくない私だけど異国となると話は違う。(鑑賞後の考察はいつでも大好物)

しかもありがたいことにこの半年前、『マリーキュリー』の日本公演が行われてる。日本人による日本語のネタバレ込みの観劇レポ。涙が出るほどありがてぇ…。

10月見に行こうとしてたミュージカルは時代劇でまぁ調べても用語が全くわからなかったからこっちに行けて正解かもって思った。(あとその作品はアドリブが多い芝居で日によっては日本を指したブラックジョークとかあって若干気まずいなぁとか思ってたから笑)(日本人が最前列座ってる中で福島の水の話とか…良し悪しはおいといても反応に困る…)



とりあえず家にあった埃の被ったキュリー夫人の伝記と、図書館で借りた小学生向けの本から少し堅いものまでの数冊を読むことにした。

小さい頃おじいちゃんに買ってもらったたくさんの伝記。音楽が好きだったからベートーベンもモーツァルトも好きだったし、ナイチンゲールやアンネフランクも憧れみたいなものがあって何度も読んだ。
けど科学はどこかとっつきにくくてキュリー夫人を読んだ記憶は一切なし。

新鮮な気持ちで読み進めていくにつれひとつのことに気づいた。




死ぬ。


何回読んでも推しが死ぬ。






推し俳優キムジチョルが演じるのは主人公マリーの夫ピエール。


どの伝記を読んでもピエールが途中で事故って死ぬ。

いやいやいや、と思いつつミュージカルの公式インスタ見たら「1906年、夫死亡」ってがっつり書いてる。

公式インスタより


前から思ってたけど韓ミュって公演始まる前からオチまで言いがちじゃない???いいの?


そんなこんなで私の初めての韓ミュ鑑賞は推しの死亡が確定された状態での出発となった。
(………『ファンレター』でもジチョルさん死んだのに泣)

当日

飛行機が遅延した上、東大門行きのバスで運転手が長すぎるタバコ休憩に行きブチ切れそうになりながらなんとか滑り込みで会場に到着。



チケットは当日チケットボックスでの引き取り。ここは全然韓国語話せなくても大丈夫だった。

チケットをもらって

ずーーーっと憧れてた韓国のキャストボード


昼公演
夜公演


スタッフのお兄さんにチケットをもぎってもらっていざ座席へ。
お兄さんがもぎりながらなんか言ってたけど全く聞き取れず…夜公演の時も聞き取れず…
おそらく状況的に「再入場の際は半券をお持ちください」か「座席は前方右側になります」って言ってたんだろうなぁ。なんて言ってたんだろう。分からずにネーっていう癖やめたいね。

あと始まるまでのアナウンス。「開演に先立ちまして皆様にお願い申し上げます…」みたいなやつ。
日本だと小劇場でもマイク通していうよね…?(最近行ってないから知らないけどそうだよね?)まさかのスタッフさんが地声で客席回りながら言うてて…中劇場でそれは………効率悪くない………????ってなったりしました(余計なお世話)

あらすじ

(詳しいあらすじは多分他の方のをみたほうが分かりやすいと思うのでざっくりと)

マリーはフランスでの留学への期待感を胸に汽車に乗る。そこで出会ったアンヌと意気投合し、マリーは自分のサインをした周期表をアンヌに、アンヌは祖国の土をマリーに渡し、互いの新しい生活へ健闘を祈った。多分。

マリーは大学に入ったものの女性であることを理由に浮いていた。(ここの曲好き)
そこで女性としてではなく1人の科学者として自分のことを見てくれるピエールと出会い、恋に落ち結婚をし子供もできて家庭に研究に充実した日々を過ごしていた。

研究を重ね発見したラジウムだったが、ノーベル賞として選ばれたのはピエール。マリーはあくまでキュリー氏の夫人としての立場でとしか評価されなかった。

その悔しさをバネにその後もマリーは実験を進める。ラジウムによって金を儲けてるルーベンは研究の援助をしてくれるが、ピエールは危険性を指し実験に反対する。(と言いながら自らの体を使って実験してくれるピエールの愛…泣)
2人の対立する意見に挟まれながらマリーは自分の道を悩みながらも進んでいく。

一方アンヌはラジウムを使ったルーベンの工場で働いていたがある時からラジウムの被害と見られる症状に仲間たちが倒れていきマリーのしていることに疑問を感じ始める……



*○*○*○*○*○*○*○*


あれ??主要キャスト4人のはずなのに…私ルーベンの記憶なさすぎじゃないか…ルーベン台詞があまり聞き取れなくて…工場によって金儲けてる人、くらいにしか読み取れなかった…ごめんよルーベン…
(でも悪役にしては正論しか言ってない気がしたし、愛すべき悪役かって言われると愛すべき点は特になく笑 キャラは薄かった気がする…笑)

感想

行く前に韓国人の感想を色々見てたら気になったのが2つあって。
一つ目は「祖国」。二つ目は「フェミニズム」。

「祖国」
マリーが生まれたのはポーランド。当時ポーランドはロシアの領土で、それが韓国の歴史に重ねて考えちゃうね、みたいな感想がちらほらあって

おう…まさかのキュリー夫人の話でもそういう絶妙な気持ちになるやつ含まれてるのか…日本人の私にその雰囲気理解できるのか……え、これ私行っていいやつだよね??とかかなり深読みしながらの渡韓に。

結果としてはやっぱり全然わかんなかった。それが日本人だからなのか、単に韓国語が分からなくて理解できなかったのかは分からないけど。


「フェミニズム」
まぁ女性の科学者の話だし。あと韓ミュってほとんどが男性主人公だから、この作品が女優の活躍のために作られたミュージカルっていうのもあってそういう声が上がるのは不思議じゃないんだけど。

私が人生ではじめて読んだ韓国小説がフェミニズム系のだったの。で1ミリも共感できなくて、そのあと韓国の小説数冊読んだけどそれもたまたま全部フェミニズムであんまり合わなくて。それだけ私が女性という理由で社会においてまだ不利をそんなに感じてないって言う意味では幸せなことなのかもしれないけど「韓国×フェミニズム」ってハマるかなぁって心配だった。

が!しかし!!!なんか思ったより刺さった…
やっぱ食わず嫌いは良くない!!!
特に今日本で夫婦別姓とかって話題になってる中でマリーが世間から「キュリー夫人」としてしか見られないことへの共感が大きかったと言うか。この時代から何も変わってないんだなぁと悲しくなったと言うか。

あと思ったよりも女子VS男子の構図じゃなくて。科学ヲタVS非ヲタの構図とか、労働者VS経営者とか。え、全然フェミニズムがメインじゃないじゃん。なんなんだ。最近は何でもかんでもフェミって言えばいいと思ってるのか?とすこし毒づいたりもした笑


*○*○*○*○*○*○*

ここからは少しずついろんな感想を。

まず、予習して良かったよ!本当に!!全然ピエールどこで死んだかわかんないの。どーんとその場で死んでくれたり、死体に泣きつくようなシーンがあれば分かるんですけどおそらく手紙?電報かなんかでマリーがピエールの死を知るという演出になってる構造上、韓国語がわからないと全然いつ死んだかわからない。しかもその直後失意の中にいるマリーのそばに亡霊(幻覚?)のピエールが現れるので死んだことに気づいてなかったらそれがお化けとすらも気づかない←
予習しといてよかったーーーー!!!!ってなった笑

あと昼公演はピエール役がキムジチョル、アンヌ役がカンヘインだったんだけどそれが私の大好きな팬레터(ファンレター)の2人なんですよㅠㅠ
初めて生で観る韓ミュに何回も動画で見てきた2人がいて本当に嬉しかった。

ジチョルさんはアンサンブルも兼ねてて、一番最初の汽車のシーンとかただ恋人と列車の座席に座るだけのシーンなのに相手の座るところにハンカチ敷いてあげたり細かい気遣いの演技が入っててジチョルさん自身の優しさを感じた。
あとカンヘインさん。生で見ると想像以上に細くてちっちゃい方で…。どこからその声量出てるの!?ってなった。めっちゃ可愛かった。

あとOP席すごかった話。

見て…近すぎ…。キャスト降ってくるかと思った…迫力すごい。
けど夜公演をとちり席で見たらやっぱOP席じゃ見えてなかったセットとかも多くて笑
推し俳優がいるならOP席もいいけど作品を見たいならもう少し後ろの方がいいよなぁと当たり前のことを思いました。

昼公演のイジョンファさん
マリーの一番最初のシーンはかなりおばあさん。そこから過去を語りだすという韓ミュあるあるの展開なんだけど、歌いながらおばあさんから20代に戻る演技に鳥肌がだった。

ジョンファさんのマリーはちゃきちゃきしてる結構しっかりものの雰囲気。アンヌやピエールに対しても姉御肌。
それに対して夜公演のキムソヒョンさんのマリーは純粋な少女って感じ。科学に魅せられたキラキラしたお目目がとにかく可愛い。あと歌で魅せるお芝居だった。全く違う雰囲気の主人公を見れてキャスト違うだけで無限に見れるなぁ韓ミュ怖いなぁお金飛ぶなぁって思った笑



ただ作品はいいんだけどストーリーとか主人公にはうーん。なんか同情はするんだけど共感はできなくて。マリーがラジウムで世の役に立てたのは結果論でそこに至るまでに何人もの人が死んでて…。オッペンハイマーの映画見に行った時と似た感じのもやもやが残った。


あとやっぱり推しを見に行った身としてはピエールがほぼ出番なくて悲しかった。そりゃ主人公じゃないけどさ、メインとなるナンバーも特になくて。
だから余計に一つ一つ推し俳優のセリフを理解したいのに韓国語できない自分が悔しかった。


それから私が一番印象に残ったナンバー。
「死んだ職人のためのボレロ(죽은 직공들을 위한 볼레로)」
これは韓国語があまり理解できない私も鳥肌がたった。1つ目は迫力。工場で働いていた人たちが死の真相を訴えるシーン。その悲痛な声が言語を超えて伝わってきて鳥肌がたった。
2つ目は歌詞。ほとんどの歌詞が理解できなかった私だけどアンヌが倒れた(死んだ)仲間たちの名前を一人ひとり叫ぶこのシーンは本当に泣いた。働いていたのはただの従業員ではなく、それぞれ未来があった1人の人間。決してなかったことにして欲しくないその気持ちが《名前を呼ぶ》と言う行動によってその人たちの人生が見えて辛かった。

本当に前の記憶だから不確かだけど7〜8年前、読売新聞の編集手帳に印象的なものがあった。確か登山部の高校生たちが雪崩によって死亡した事故についてだったと思う。限られた文字数の記事なのに記者は「死亡した8人」と表さず一人一人の名前を記載した。高校生8人と書いてある記事を見ても何も思わなかったのに不思議と名前によって明確にその背景が見えるような気がして、それに気づけなかった自分の冷たさにも気付かされた。

このシーンを見て忘れていたこの新聞の記事がふと甦った。マリーも結婚を機にキュリーの夫人でしかなくなった。「名前を呼ぶ」「名前で呼ばれる」と言うことがこの作品のテーマの一つなんだろうなと思った。




余談


帰ってから余韻に浸りながらマリーとアンヌが和解する場面の曲をYouTubeで聞いていた。そこにこんなコメントが。


「これが愛じゃないの?

ピエールはただの実験助手にすぎない」




推し…!!!!!!


不憫…………!!!!!!!!!!!!

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