山田悠
声を全く発さない、小学校の少し変わった同級生。 これは、彼が背負ったあまりに深い業の話。そして、僕が怪談と真剣に向き合うようになったきっかけの話。
安達くんから貰った加藤くんのSNSアカウントにメッセージを送った。 どんな内容だったか正直覚えてはいないが、かなり気を張ってメッセージを送っていたように思う。 自分は彼を虐めていた側だったじゃないか、その後突然センシティブな話を質問攻めするのはどうなのだろうかと、彼に会うことについては抵抗があった。 だが、話の本筋とは関係がないので割愛する。 安達くんと偶然会った日から1週間が経ち、僕はまたT駅に来ていた。 改札を出て、ペデストリアンデッキにあるフレッシュネスバーガーの前
当時、特別に仲の良かった訳では無いが、小学校卒業ぶりにあった安達くんとはそれなりに話が弾んだ。 「加藤って覚えてるか」 彼の言葉で、忘れていた小学生時代の加藤くんについての記憶が頭の中をよぎる。 「覚えてる。喋れない子」 安達くんは、待っていたと言わんばかりに目をかっと見開いて言った。 「あいつ今めちゃくちゃ喋ってるよ」 正直、なんと反応したら良いか分からなかった。 病気か、過去のトラウマか、いずれにせよその原因を克服できたのだろうと思った。 「加藤いまこっち戻
2017年、高校2年生にして人生初の引越しをした。 とはいっても、地元のT駅からたった数駅離れた場所で、通っている高校もその地元にあったので毎日のようにT駅には訪れていた。 それから高校を卒業し、専門学校へ通う。 ここから僕の怪談活動がスタートした訳だが、その話はここでは関係ないので割愛する。 2019年、秋口。 地元T駅に住む友人と、久々に会って遊ぶことになった。 散々通ったカラオケや、駅前のファーストフード店。 段々と外も暗くなり、そろそろ解散しようかとなったのが
※場所、人物の特定を避けるため、一部仮名等のフィクションを加えています。 この話は彼にとって、そして僕にとって、未だ完結していない。きっと、完結することはないのではないかと思う。 そのためタイトルはあえて付けず、無題とする。 2011年。話は、まだ小学校という場所が世界の全てだった幼少期まで遡る。 同級生に加藤くんという男の子がいた。 正しい言葉かどうかは分からないが、彼は少し変わっていた。 人前で、一切声を発さないのだ。 今考えると残