実話怪談【無題】4

安達くんから貰った加藤くんのSNSアカウントにメッセージを送った。
どんな内容だったか正直覚えてはいないが、かなり気を張ってメッセージを送っていたように思う。

自分は彼を虐めていた側だったじゃないか、その後突然センシティブな話を質問攻めするのはどうなのだろうかと、彼に会うことについては抵抗があった。
だが、話の本筋とは関係がないので割愛する。


安達くんと偶然会った日から1週間が経ち、僕はまたT駅に来ていた。
改札を出て、ペデストリアンデッキにあるフレッシュネスバーガーの前で加藤くんを待った。

その時の僕は、かなり緊張していたはずだ。
障がい者いじめの過去との対峙、怪異への好奇心、様々な思いがあったように思う。

今となってはあまり覚えてはいないが。 

「悠くん、久しぶり」

声が聞こえてスマートホンを見ていた顔をあげると、
まだ若い男がそこにいた。
その時の僕は、彼が加藤くんであることに気が付くのに3秒ほどはかかった。
見違えるほどに痩せ、元々の顔立ちなのか、ハーフのような美しい顔をしていた。

僕は、そこで初めて自分が『悠くん』と彼に呼ばれていることを知った。

「じゃあ、行こうか」

そう言って僕らは、タコ公園と呼ばれる、昔よく遊んだ公園へと歩き出した。

駅から15分ほどは歩いた。
彼はその時間、何を考えていたんだろうか。

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