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マニュアルは「わからない人」が「わからない人向け」に作ると「わかりやすい」

10年以上前に、2年間の期限付きでマニュアルを作るためだけにとある会社に採用されたことがあります。

まる1日かけて適正検査を受け、翌日面接。
短時間勤務の募集だったからなのか、そこに応募したのが私しかいなかったという稀な体験をしました。
仕事の内容については1日目に詳しく明かされず、2日目の面接の段階でさらっとお伺いしました。

そもそも受けたのが私しかいなかったので、採用せざるを得なかったのではないかなと考えつつ、勤務開始となりました。

一応前任者がいて、引き継ぎは1ヶ月間。
試用期間は3ヶ月間。
研修はその期間を含む6ヶ月間。
……すごいでしょ?

2年の勤務期間の間の、半年間が研修なんて今なら考えられません。

(いま、新卒の研修期間て短すぎよね)
(1年かけて大事に育てたら離職率減るのに)
(大事にってところが大事)

話が逸れました。

前任者が退社したあと、直属の上司が担当になりました。
その方から言われたマニュアル作成に関する5箇条が、以下の内容です。

「うちのマニュアルは、中卒が読んでもわかるように作ってください」

「余白は多めに取ってください」

「画面のキャプチャーを多用してください」

「手順の抜けがないようにお願いします」

「ネットの普及で横書きに強い子が増えるから、縦は意識せず横に読む意識で配置してください」

当時、こちらの会社は中卒採用も行なっていて、私が勤務している期間、実際にいました(書きながら調べたところ、今でもそうみたい)。
マニュアルに添える文章を、社会人経験者や大卒に合わせるのではなく、少しでもわかりやすくして欲しいという配慮はとても素敵だなと感じました。

余白を多めにという理由は、どんなに完璧なマニュアルであっても、持ち主は必ずメモを取る。だから余白が必要なのだ、と。
そりゃそうだ!と納得したのを覚えています。

今どきの子は「読む」より「見る」が強いので、操作画面のキャプチャーは惜しみなく撮り、載せてOK。
これも、今になって実感しています。
ネットで縦書きのページに出会うこと、ほぼないですよね。
スマホで読める漫画も横にスワイプがほとんど。小説も、横書きですし。
もちろん、noteも。

当時は、ゲームの攻略本を作っている感覚でした(RPGは自分で地図を作るタイプ)。

ワンクリックごと、アラートも逃さず載せること。

私は縦書きの業務マニュアルを見たことがないのでアレですが(探せばあるのか…?)、A4、横書きで見やすい配置を心がけるというのは作業しながら「なるほどな」と感じました。

端から端まで文字で埋めず、ときには文字と画像を左右対象に配置したり、適宜テキストボックスを活用する。
テキストボックスに画像を入れるのもあり。

そして余白を取り、見やすく。
項目ごとのタイトルが画像に埋もれないようにする。

文章を書くことが好きで、同人誌の発行もしたことがあるけれど、小説は基本縦書き。
ページを延々と文字で埋め、頭の中で映像化してもらえることを願いながら書いていました。
挿絵は最小限だったなぁ。

マニュアルはまったくそれに当たらず、スタートからゴールまで、真実しかない。
パソコンを動かすことなく紙の上、またはパソコンのモニターで操作画面を練習として見てもらい、間違いなく仕事を進めてもらうことが目的だ。

実際の操作をする前に、どのくらいの手順を踏むのかがわかる。
ちゃんと整備されていれば、事前学習ができるわけです。

どうして長く勤める正社員が対応しないのだろうと考えた結果、「わかる人」が作ったマニュアルは「わかる人向け」なことに気づいた。
わからない人への配慮が、あまりない。
説明文にも抜けが多く、「次はどうなるか予想がつくよね?」という感じで、進んでいく。

わからない側からすると、全然わからないし親切設計じゃないのだ。

ホイっとそのために採用された新人が、「何もわからないまま」「わからない人向け」に作るのがよいのだろう。
何がわからないのか、わかるから。
共感のしどころが同じということは、マニュアルを作る上で大事なことなのかもしれません。
2年間それに携わり、「わかってきた」を実感しながら契約満了を迎えたのでした。

私が作ったマニュアルはもう古くて、きっと誰かがブラッシュアップしただろうから保存すらされていないと思うけれど、とてもやりがいのある仕事だったという満足感はしっかり残っています。
むしろブラッシュアップされていて欲しい。

システムも変わるだろうしwinだってバージョンアップする。適宜手入れをするのは、とても大事な作業ですからね。

誰かに仕事を引き継ぐとき、どうしたらいいのか。
それも含めて学んだ2年間でもありました。

そしていま、私は10数年越しにご縁あってまたマニュアルを作ることが仕事の一部となっています。
何とも不思議なものです。
ルーティンワークを終え、空いた時間に対応しています。

今回も「わからない人向け」のマニュアルを作っています。
とても楽しい。
私自身、仕事の理解度も上がるので一石二鳥だと思う。

システム操作に不安がないように、頭の中が(???)で埋まらないように。
わかれば、仕事をする手は滞らず進む。
そうなってもらえるように。
(私が急に休んでも、大丈夫なように!)

文章はわかりやすく、簡潔に。
余白多め。
画像たくさん。

迷える人を作らないマニュアルを作るのだ。

ちなみに余談だが、今回は「いつまでに」という納期は設けられておりません。

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