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米5㎏のおすそ分け

休日、ヨレヨレの白Tに前髪ぼさぼさヘアでテレビを見ていた完全にオフモードの私は、突然鳴ったインターホンの音に飛び上がった。

私の家のインターホンが鳴る時は、たいていAmazonからのお届けか、自動車学校の勧誘かのどちらかだ。ということは、また勧誘かとインターホンの画面を覗いてみると、そこにはお隣さんが立っていた。
私の頭はフル回転。
このまま、もし外に出ることになれば、このヨレヨレとぼさぼさをどうにかしなければならない、どう隠そうかということで頭がいっぱいになった。
しかし、まずは用件を聞かなければならない。
おそるおそるインターホンの画面に向かって「はーい」と言うと、「お米いりませんか?」と尋ねられた。予期していなかった質問に、思わず「へぇ?」と聞き返す。再び「お米入りませんか?」と尋ねられ、なんのこっちゃ分からない私は、「ちょっと待ってくださーい」と扉を開ける決心をした。

明らかにバタバタと音を立てながら、とりあえずカーディガンを羽織り、前髪をアップにして、テカテカの顔が気になりながらも扉をちょこっと開けてみる。
インターホンの画面では見えなかったが、お隣さんは大きめの段ボール箱を抱えていた。
「ボランティアで5㎏のお米もらったんですけど、いりませんか?私のとこ、今10㎏お米あって……」と、お隣さん。
どんなボランティアしたらお米5㎏もくれるんだ?
挨拶しかしたことなかったお隣さんが、なぜ私にこのようなお恵みを?
と、頭に大量の?を浮かばせながら、「あぁ、へぇ、いいんですか?」と、すっとんきょうな声を上げ、私は段ボール箱を受けとった。
「ほんまに、ありがとうございますぅぅ」とペコペコしながら扉を閉めてから、私の家にもほぼ5㎏の買ったばかりのコシヒカリがあるやん、ということに気づいたものの、せっかくのお恵みを無駄にするまい、とキッチンの棚に押し込んだ。

ひとり暮らしを始めてから、おすそ分けを貰うのは初めてだったが、まさか5㎏ものおすそ分けを貰うとは思っていなかった。しかも、お隣さんが奉仕活動をした対価として得たという、大変ありがたい代物だ。
これで私も、お隣さんと同じく10㎏のお米の所有者だ。
しばらくは、おにぎり、丼、カレーのヘビロテ生活。この際だから、おにぎりレパートリーでも増やそうか。
ふりかけでも買おうかしら、しっとり系のやつ。

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