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毒になった躾

 残り物が食べられない。
 新生活を始めた時に一番にぶつかった壁。一人暮らしの定番、作り置き。それが出来なかった。

 原因は母の躾。ご飯を残すことが許されない家庭で育った。例えば夕飯でおかずを残せば、食べ切るまで次の日もその次の日も…と永遠に食卓に出された。たとえ腐ったとしても。
 さっさと食べずに「後で食べるから…」と先延ばした私も悪かったのかもしれない。それでも泣きながら腐敗した料理を口に入れ大抵はそのままトイレに駆け込んで吐いた事はトラウマとなりこびりついてしまった。今でも思い出すだけで胃液が込み上げてくる。

 だからシェルターで丸1日経った残り物は捨てるルールを知った時びっくりした。施設でも数日で残り物は冷蔵庫から消えた。初めは巨大な罪悪感を抱いたけれど、それでいいんだなと少しずつ受け入れられるようになった。

 もちろん食べ物は大事にするべきだしできるだけ無駄にしないようにすべきだと思う。でも行き過ぎた躾は間違いなく子供の毒となる。必要のない苦労なんてわざわざ負うべきじゃないんだよ。。と

 残り物食べられない問題に直面した時は本当に絶望的な気分だったけれど、数ヶ月ですでに少しずつ克服できてきている。1食分の作り置きなら大抵は食べられるようになった。あとは自炊を頑張りすぎないことも自分のプレッシャーを減らすのに一役買ってくれることにも気づいた。少しずつ少しずつ、今の過敏すぎる心をフラットにしたい。

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