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いつか迎える死のための(13)-薔薇と薔薇の騎士-

4月14日(火)気持ちの良い晴れ。風も穏やかで心地よい春の一日。空気が澄んでいる気がする。思い切って平日なのにシーツまで洗う。出かける予定を入れないことは洗濯に選択の自由をもたらした。

この日記を始めてから2週間になる。ほとんど家から出ず、買い物も最小限にして、そろそろ息苦しい気持ちもある一方で、この生活に馴染み始めた部分もあることに気づく。

昨夜遅くにツイッターを眺めているとエッセイストの紫原明子さんがアンケートを取っていた。コロナの流行に伴って、何か心身に思わぬ変化があったかというもの。思い当たるところもあり、早速回答した。

私に起こった変化といえば、まずゆっくり眠れるようになったこと。特に引きこもりに腹を括った、そう、この日記を書くようになってから私は平均8時間くらい寝られるようになった。それまでは深夜まで寝付けなかったり、夜中に何度も目が覚めるのがいわば普通の状態だったのだが、ここ最近は12時前には眠っていることも多い。そして朝までちゃんと寝ている。すこぶる体調が良く、食欲もあるのはこのせいかと思う。時々寝過ぎて腰が痛いほど。

もうひとつ睡眠にまつわる変化としては、夢をよく覚えているようになった。一度ツイッターにも書いた、その後出会う人に夢で会っていることや、接待のレストラン予約で席が足りていないことに焦る、など細かい内容までよく覚えているようになったのが、私の大きな変化だ。

それから、花をよく買うようになった。
家にいる時間が長いので、何か目の前に変化がほしいことと、やはり美しいものを眺めているだけで、心が少し安らいだり華やいだりすることを実感する。手に入れたばかりのライカで撮る被写体にもちょうどよく、週に一、二度は近所の花屋に寄るようになった。お店の方にも覚えていただいて、いつも少しおまけしてくれる。こうした少しの喜びの積み重ねが花によってもたらされ、この閉塞した世の中から少し引き離してくれる。

今日は薔薇を何本か。ピンクと一緒に薄い紫の薔薇を。

偶然だが、今日はウィーン国立歌劇場のストリーミングでオペラ「薔薇の騎士」を見られる日だった。クライバーの1994年録画。名演を見るだけでまた気分が変わる。

ウイルスに翻弄され、思わぬ人生の苦労が降りかかったのだが、こうしてひとつずつ考えていくと、そこには悪い側面ばかりではなく、美しい物も、美味しいものもあり、そして体は健康に保たれて、芸術を鑑賞できる暇をくれたとも言える。

少し、またギアチェンジをする段階かもしれないと思う。
この生活がまだ続くとしたら、ただそれをやり過ごし、不安を不平で埋めてしまうのではなく、よい側面にも光を当てて、そろそろ考えを変えていく時期かもしれない。

状況は良くはない。世間は政治への不満と助成への不公平ばかりを垂れ流している。真実は何か。何を判断すべきなのか。

大事なことはいつも、小さな声で囁かれる。

それを逃してはいけない。

日本の感染者数 8,028名。死者 152名。


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