桜の時期に会いに行けるように
祖父と祖母が眠るお墓に行くためには、桜並木を通るのがお決まりのコースだ。車通りも少ない田舎道を、少しスピードを落として進む。均等に並べられた桜の木には、こぼれそうなほどの桜の花が咲いていた。もうすぐ満開らしい。
私がこの道で桜を見られるようになったのは、3年くらい前になる。
毎年お墓参りには行っている。でも桜の季節には行けていなかった。行けなかったのには理由がある。私の仕事だ。
春の和菓子屋は忙しい。(正確にいうと、季節の行事がある度に忙しい)。 寒さがやわらぎ桜の季節になると、桜餅の販売が始まる。勤めていた和菓子屋の職人さんは関西で修行をしていたため、道明寺の桜餅が店頭に並ぶ。
その桜餅をお目当てに、来店するお客さんの人数が本当にすごい。(あと、おばちゃん達のパワーも……)帰る頃にはくたくただった。休日は、平日の疲れをとるために睡眠にあてる。本当に桜どころじゃなかった。
だから、私がお墓参りに行くためにこの道を通る頃には、桜はすっかり葉桜になっている。
転職をして、事務職になった3年前から、私は桜が咲いている時期に祖父と祖母に会いに行けるようになった。
そしてフリーランスになった今は、好きな時に会いに行ける。
行きと帰りの2回、その道を通る。あの頃は緑色だった道。でも今は、淡いピンク色を眺めながら通れる。
来年も、桜の咲いている時期に会いに行けるように頑張ろうと思う。その時は、満開の桜が見られるように。
最後まで読んでいただきありがとうございました。