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毎日400字小説「知りたくなかった」

 生後一週間もしないうちに、俺は捨てられていたらしい。「毛布の中に一緒に包まれていたの」俺を引き取ってくれた養護施設の先生が、そう言って大事そうに包みを開け、手渡してくれたのは、ブルーグレーの、デジタル式大音量目覚まし時計だった。もしかしてあれか、心音の代わりに時計の音を聞かせたつもりだったかと思い、絶句した。デジタルて。俺は俺に流れる血のバカさ加減にうんざりする。まさか、赤ん坊の目を覚まさせるつもりだったわけではあるまい。しかも大音量、かつ暗証番号を入力しないと止めることの出来ない代物で、たぶん偶然スイッチが入って鳴り出したベルの音で、俺は発見された。しかし、ベルを鳴りやませるののにてこずったため、泣いていた俺は二の次になったという。
「結局電池を抜いてねぇ」と先生は思い出し笑いをした。受け取った俺は、どうしていいかわからず、自分の誕生日を試してみた。止まらなかった。以来俺は誰も信じなくなった。

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