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毎日400字小説「避妊」

    デキ婚という言い方が授かり婚と呼ばれるようになって久しく、低用量ピルの知識も広まり、望まない妊娠をなくすよう男女ともに性教育もされているというのに、それでもなお、「どうしよう、できちゃったみたい」と、慌てふためく人が後を絶たないのはいったい全体どういうことだ。私が憤慨すると、「それはあんた、恋愛をしたことないからだよ」遠藤に可哀そうって下に見られるが、今可哀そうなのは、童貞の私ではなくて、大学生の身分で妊娠、出産するにしてもしないにしても、今後の人生を否応なく変えられること間違いないお前だよって、私は言いたい。「あ、図星だった?」ってクソ。一人じゃ怖いから付き合ってって、泣いてたのは誰だよ。そんな言い合いをしてる間に一分が絶ってしまう。「無理」ぎゅっと目をつぶった遠藤に代わり、渋々検査薬を見ると陽性の反応はなかった。「よかった」遠藤の胸がむぎゅと当たる。私は絶対に避妊する。が、その機会はあるだろうか。


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