08 金木犀
さんざん抵抗したけれど、狭いかごの中に入れられた。これに入れられると、次に出されるときは、だいたいとんでもない場所になっている。めったに見ないおじいさんの広い家だとか(なんと玄関の外じゃなくて家の中に階段がある!)くさい匂いのする、いやな台の上だとか。
今回は、いやな台の上だった。白衣を着たおじさんに、おしりに何か入れられて、じっとしてたら「熱はないですね」と言われ、さらに一言二言続く。
その帰り道だった。突然、かごの窓がすこしだけ開いたかと思うと、ふわりと匂いが漂ってきた。
「もう咲いてるんだね、金木犀」
あの子が言う。どうやら、嗅がせようとしてくれているらしい。
あの子が使うトイレと同じ匂いなんだけど、どうしてだろう、空が青くて、雲が白かったからか、うれしかった。
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