13 うろこ雲

第1話「01 鍵」

前話「12 坂道」


 その日は自転車を押して帰りました。あの子は早く帰って、ケージから出してほしかったんでしょうけれど。

 ときどき立ち止まって、ケージの上蓋を開けるんです。だってこれからきっと、家の中ですら歩くことができなくなっていくんですから。ちょっとでも、外を憶えていてほしくて。

 おかしいでしょう、あんなに元気なときは、外になんか行ってほしくなかったのに。

 空を見上げたら、とても青く澄んでいて、うろこ雲が白く散っていました。

 短い秋が来て、やがて冬になったら、この子は冬を越せるんだろうか、と思いました。


第14話「14 裏腹」

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