13 うろこ雲
その日は自転車を押して帰りました。あの子は早く帰って、ケージから出してほしかったんでしょうけれど。
ときどき立ち止まって、ケージの上蓋を開けるんです。だってこれからきっと、家の中ですら歩くことができなくなっていくんですから。ちょっとでも、外を憶えていてほしくて。
おかしいでしょう、あんなに元気なときは、外になんか行ってほしくなかったのに。
空を見上げたら、とても青く澄んでいて、うろこ雲が白く散っていました。
短い秋が来て、やがて冬になったら、この子は冬を越せるんだろうか、と思いました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?