双方の立場をこえたところにある解決策
今回は、ある職場にかかわったときの事例を共有したいと思います。
その職場は、雰囲気が悪い状態がずっと続いているとのことでしたので、皆さんに集まってもらい、チームでどんな問題が起きているのか出してもらうことにしました。
すると、
・仕事が属人化している
・個人に負担がかかりすぎている
・離職者が続き、常に人手不足である
と現状に対する不満がたくさん出てきます。
続けて、「なぜ問題が起きているのか?」「なぜ問題が解決されないのか?」と皆さんに聞くと、
・マネジャーがわかってくれない
・経営が問題に対処せず放置している
・問題を指摘しても、しょうがないと言われる
・どうせ言ってもムリだから
と現状を変えてくれないマネジメントへの不満の声が出てきます。
一方で、問題とされるマネジャーに事情を聞いてみると、
・たくさん(10名も!)メンバーがいて自身のタスクもたくさんあるのに一人ひとりに目を配るのは物理的に無理
・メンバーはマネジャーになんとかしてくれと他責で言うばかりだ
・会社から目標は必達と言われている。皆がそれぞれ頑張っているのに、一人ひとりの要望を聞いていたら仕事が遂行できない。
と、こちらも同じく現場の無理解や非協力的な態度にうんざりという様子です。
このように、問題が起きている職場には、相互に批判し合っている状況がよく見られます。そして、そのような職場では、誰かが感情的になって個人攻撃をしています。
「なんであなたはそんなに他責なのか!」
「マネジャーなのになんでちゃんと管理しないのか!」
こうした感情的な批判が起きると、お互いを人として嫌ってしまい、コミュニケーションがとられなくなっていきます。
すると、ますます相手の状況や立場に対する情報が入ってこなくなります。まったくの悪循環です。
本来は、それぞれに事情があって、悪気なく振舞っていたり、難しい状況であるにもかかわらず、そのことを知らずに、あるいは考慮せずに、「あの人はあえて現状を放置している」「あの人は自分のことだけ考えている」と相手が悪意をもっていると見立ててしまいます。
こうした対立・衝突の場にいくと、一刻も早くその場を修復したいとの思いもあって、とりあえず、起きている問題を仲裁して解決しようとしてしまうことがよくあります。対立にとどまり、双方の状況をしっかり聴き合うことをせずに、どちらかが我慢して自分の立場を抑えてしまう状態で話し合いを終えてしまうのです。
AとBの二つの立場がある場合、どちらの立場もちゃんと場に出されていない場合、どこかに自分の立場からの意見を表明できていないところがあると、本来の意味では問題が解消しないということが起きます。
先ほどのケースでいえば、
たとえば「マネジャーなんだからメンバーの状況を把握し、ケアすべきである」という正論で決めてしまうのではなく、状況としてマネジャーが一人ひとりに目を配ることが物理的に無理であることを皆が受け入れ、大変な状況になったら、メンバー一人ひとりが自らヘルプを出し、メンバー同士で自発的に解決策を協議してそれをマネジャーに提案するようにする。」であるとか、「定期的に今の仕事の状況を共有する打合せを新たに始め、それぞれのタスクのひっ迫状況を共有する場をつくる」などの現状にあわせた対策が生まれていくことが必要です。
双方の立場をしっかり聴ききり、問題の全体像を取り戻すことではじめて、それぞれの立場を超えた解決の糸口が現れるように思います。
この状態まで話し合いを進めることができるかがポイントだと思います。
また来月もよろしくお願いします。
2024/8/26 VOL164 sakaguchi yuto
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