自律的に働いてほしいけど、辞められては困るという悩ましい問題について
「リクルートは、いずれ辞めることを前提に人を採るようだけど、
それは会社にとっていいことなのか?」
以前、このような質問をいただくことがありました。
・せっかく育てた人材が辞めてしまうのは会社にとって損失だ。
・できるかぎり、会社の中で長期間がんばってくれる人が欲しい
というのがその疑問の背景にあったように思います。
その一方で、長く働いてくれたとしても、会社にぶら下がるようでは困るというのも経営者の正直な気持ちだと思います。
今、会社では”自律型”人材が必要だと言われています。
指示待ちではなく自分で考えて、主体的に働いてくれる人がほしいという声です。
定着はしてほしい。
しかし、ぶら下がり社員では困る。
2つの要素を両立させるにはどうしたらよいのでしょうか。
私は、「会社が個人のキャリア自律を支援する」
ということがこれからより必要になると思います。
個人のキャリアの希望は個人に任されているのがこれまで当たり前でした。
しかし、個人が自己理解を深め、自身のやりたいことを見つけることなしには、会社の中で、その人の力を引き出し、主体的に働いてもらうのは難しいのではないかと考えています。
たとえば、私が前職でコンサルティングの仕事をしていた時、
一緒に働いていたメンバーは、それぞれ違うモチベーションをもって
働いているように見えました。
・「困難な状況にある事業を立て直す」というような挑戦にやりがいを感じる
・プロジェクトがうまく運ぶようにマネジメントすることにやりがいを感じる
・調査分析、人とのコミュニケーションなど自分の専門分野を極めることにやりがいを感じる
等、同じ仕事に取り組んでいるように見えて、実はそれぞれやりがいを見出すポイントが人それぞれだったように思います。
このように「自分のやりがいの源泉を自覚している」ことが、
主体的に働くために非常に重要ではないでしょうか。
目の前の仕事を自分の関心に紐づけて、意味づけができるからです。
ちなみに私は、コミュニケーションがうまくいっていない現場にかかわり、
改善のために働きかけることができるということがモチベーションで、
コンサルティングや事業再生の仕事の中で、そのようなやりがいを
見出して働いていました。
もしも会社や上司が、このように個人のやりがいの源泉を知ってくれていて、それを仕事の中で実現するよき相談相手となってくれたとしたら、
それは会社との大きな絆につながると思います。
自分のことを理解し、支援してくれる人には応えたいと思うのが人間です。
会社と個人は対等の関係性になりつつあります。
ジョブディスクリプションを明示するような形も選択肢の一つですが、
会社に愛着を感じ、長期的に働いてもらうという面で言えば、
会社と個人が相互に支援し合うような関係性をいかに築くかというのも
大事な要素ではないでしょうか。
また来月もよろしくお願いいたします。
VOL120 2020/10/31 sakaguchi yuto
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