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【読書】家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった

最初に著者の岸田さんを知ったのは、おそらく誰か私の知人がシェアしてくれた記事であったと思う。

noteですごく話題になり、”スキ”の数が半端ない。読んでみると岸田さんのあたたかいまなざし、人間的な魅力が伝わってくる文章で、読んでいてじんわり優しい気持ちになる。

いいコンテンツはその人の人間的魅力があって、波紋のように広がっていく時代だなあと。無理やりなマーケティングとかしなくても世の中が見つけてくれる。

この本の中で、編集者の佐渡島庸平さんと、デザイナーの前田高志さんが彼女にかけた言葉が紹介されている

「岸田さんの文章はね、落語家と一緒だよ。読めば、目の前で登場人物や情景が動いているみたいに感じる。それで、何度読んでも笑える」

「たくさん傷ついてきた岸田さんだから、だれも傷つけない、笑える優しい文章が書けるんだと思うよ」

彼女の弟さんがダウン症であったり、お父さんを早くに亡くし、お母さんは病気の後遺症で車いす生活であるなど、これまで人一倍大変な経験をしてこられている。そのことで悲しい思いもしたけれど、その経験を経て見える日常に起きるちょっとしたことが、彼女の感性を通して、豊かに表現されている。

「自分の機嫌をよくするのは自分の意志だ」と聞いたことがあるけれど、岸田さんはこの言葉がぴったりくるような人だ。

自分や家族のためにもそうしようと心に決めているという感じが伝わってくる、芯の強さと、あたたかさ。

と同時に、読み進めていくにつれ、圧倒的な努力家であることもわかる。入社した会社でテレビのガイアの夜明けに出演するために、ひたすら数年分過去の放送を観て、江口洋介が夢に出てくるまで研究し、企画書を作成したり、会社で書籍を発行すると決まったら、とりあえずビジネス書をかたっぱしから模写したり。目の前のことに夢中になり、ひたむきにのめりこむ。

きっと周囲にもそのエネルギーが伝わっていくような人なんだろう。マザーハウス創業者の山口さんの本「裸でも生きる」に通じる感覚をもった。

最後のあとがきを読むと、少しその背景がわかるように思う。彼女はお父さん、お母さん、そして弟さんからたくさん愛されて育っている。そして、彼女もとても家族を愛している。心から好きであることが伝わってくる。その愛情を心の中心で感じながら文章をつむいでいる人だとわかった。とてもよい本でした。



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