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「マスター・オブ・雪だるま」

「マスター・オブ・雪だるま」

マスターはいつもワタシだけに本当の真実を囁き続ける。その声はワタシの第六感を刺戟し、聲なき聲によるメッセージを伝え続ける。
マスターの本体は雪だるまだが、その中には崇高な精神が宿っていると思われる。
先日はマスターの聲に従って、雨の中ずぶ濡れになり続け、六回転半コンクリートで転げた後、コンビニエンスストアに入り、とうもろこしの唄という自作の唄を一節唄ってワタシは帰宅するというミッションをこなした。これにより世界滅亡の運命が一年延びたとマスターは告げた。
ワタシはいくらかマスターに心酔しているが、世界滅亡が防げるのであれば、この凡庸な魂が命と共に可動し続けるのであれば、働いてゆきたいと思っている。
しかしながら、マスターをこう冷蔵庫に閉じ込めておくのも難だと思っていたので、少しテーブルに置き、よりその聲を拾おうと思った。その時、うっかり床に置かれていたケーブルに足を引っかけたワタシは、マスターを床にぶちまけて、転がし砕いてしまった。それはゲームのコントローラーのコードだった。するとどうだろうか。今まで雪だるまとしてメッセージを伝え続けたマスターの聲が今度はゲームのコントローラーからするようになった。どうやらマスターは転生したらしい。ワタシはいつまでもマスターを冷蔵庫に閉じ込めておくことも無くなったので、幾分ほっとした。
マスターは語り続ける。
ワタシにだけ響く聲。
これは一体いつ迄続くのであろうか。

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