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映画「TENET テネット」を見てきた。見せられる逆行した時間の中の情景が私たちを惑乱させる。

「TENET テネット」を見てきました。

面白かったけど、映画のテーマのひとつである時間の逆行についてはよくわからん。

物語はオペラハウスにいるたくさんの人たちの映像から始まる。何かが起きる予感をさせて、つかみはOKって感じである。人がたくさんいると場所の映像って、何かが起きる予感をさせるよね。実際、テロが起こる。

テロを阻止するための部隊に参加していた主人公が、時間逆行の謎を追う物語。

時間逆行というワンアイディアで最後まで物語は引っ張られる。ワンアイディアだが、最初は抽象的な概念的なものを追っていたけど、だんだん具体的なものを追っていくことになる。

時間逆行の謎を追うため、セクターという男に会おうと主人公とその相棒のニールがあれやこれや行動する。その行動のひとつひとつが緊張感を生むような事柄ばかりで、実に面白く見せてくれる(時間逆行の意味はよくわからないけど)。

最後は、主人公たちが、セクターが時間逆行の力を使い世界の理を変えようとするのを止めるために戦うことになる。と同時にセクターの動きを止めるため、物語の重要人物であるセクターの妻とセクターの対峙も描かれる。この二人の確執は物語を通して描かれてきたので、こちらはこちらで緊張感がある。「時間逆行の力を使い世界の理を変える」それによって、世界が崩壊するという大きな障害があって、それに向かうために小さな障害を主人公たちは超えようとし、それと同時にセクターの妻がセクターの決断を遅らせようとする。そのような多重構造が物語の結末を盛り上げる。

結局、時間逆行の謎はわからないけれど、それを使ってセクターが何をしたいかも謎としてあって、それは明かされる。

最後にこの物語の黒幕が誰かがわかって、うまいこと物語が締められる。黒幕がどうのとかはあまり劇中で言及されなかったので、これ自体が物語を引っ張るような力はなかった。もっと言及されたり、黒幕を追うような展開があったら、引っ張る力になっただろう。それは別のテーマになり、そんなこと描いていたら物語が冗長になるからあえて行わなかったのだろうけど。

時間逆行についてはよくわからない。時間逆行はテーマでもあると思うのだけれど、これに関して何か示唆的なこと最後にいうわけでもない。時間逆行に意味は特になく(視聴者に新しい視点を与えるような)、監督はこの時間逆行で描かれる映像をとる方が目的だったのかもしれない。言葉ではよくわからないけれど、映像で逆再生された時間逆行の描写は、見ていると惑乱させられて、映像から「これはどういうこと。どうなるんだ」という期待が現れて、先が見たくなる力がすごいあった。これぞ映像の力という感じである。

映像という点を抜けば(抜いたらこの映画が成り立たないけど)、時間逆行はただのマクガフィン(それ自体には意味はないけど、それを巡って周囲の人間の動く推進力になる)である。時間逆行がなかったら、ただアクションがすごい、それだけの映画になってしまう。時間逆行とはどういうものか、それによって何が起きるのか、それによって起きることが、実際の「動き(外面的にも、内面的にも)」に反映され、その「動き」は視聴者にそれがもたらす未来を期待させる。それが物語を面白くさせる。というか、最後まで見たいと思わせる。

時間逆行というSF的なワンアイディアで物語を進めるのが素晴らしい。それが、ただのマクガフィンに止まらず、人間の動きを変え、視聴者に「違う世界を見せる」ことに成功しているのがまた素晴らしい。これがただの謎のみで、それを主人公が追うだけでは対して面白い作品にはならないと思う。アクションも素晴らしかったから、まあそれなりの作品にはなったと思うけど。

人物造形はコミックのような強いキャラクター性はない。まあ、大人の映画だからね。主人公は正義感は強いなとおもう。冒頭で捕まったとき毒を飲む描写から、責任感の強さも感じられる。その人物の行動が人物造形を浮かび上がらせるね。セクターは過去の描写と発言、妻に対するやりとりから人物造形が浮かびあがる。妻に暴力を振るったり、お腹に銃弾を浴びせたりはして、これで十分ひどい男なのだけれど、誰かを殺したり、殺す命令などは劇中でしていない(と思う)。女性への暴力はあれ以上は見るのは辛いけど、もうプラスアルファ残酷なところを見せたら、セクターが殺されるときもっとカタルシスがあったのではと思う。これ以上のキャラ付けはコミック的になってしまって、現実感がなくなってしまうだろうか?

飛行場に、海の上、カーチェイス、荒野と色々なところを見せ、そこでアクションを見せてくれる。カーチェイス以外は、すごく広い世界を見せてくれていて、スケールのデカさを感じさせた。カーチェイスも、多数の車が走っているところ見れば、スケールのデカさは感じられるね。空間的多様性も物語を面白くする要素だよね(あとは人物の多様性、「過去、現在、未来」など時間的な多様性など)。

物語というものは、事件がありそれを解決するまでが描かれるものが多い。しかし、新しく作られる作品においてそれだけでは足りない。何か見せなければいけないとしたら「新しい価値観」や「見たことがない映像表現」「それによって通常の物語になかった驚きができる」というものが、代表的なものになるのだろう(見ている人を期待させればなんでもいいけど)。

この作品は「新しい価値観」は示唆してくれなかったけれど、「見たことがない映像表現」「それによって通常の物語になかった驚きができる」はあった。物語上の驚きは、主人公と主人公が戦っていたという点かな。時間逆行によって、傷を直したりできるらしいから、そこに山場も作れる。最後の戦いも逆行していた。なんで、逆行する必要があるのか、あそこで何と戦っていたのかは、さっぱりわからなかったけれど(笑)。

時間逆行は難しく考えるとよくわからなくなるので、そういうものだと納得して。それが見せる映像や、それによって生まれる物語のうねりに身を任せるのがいいのではないでしょうか。


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