記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

映画「インサイド・ヘッド2」を見てきた。ラストまとめ方が美しい。

https://www.disney.co.jp/movie/insidehead2

映画「インサイド・ヘッド2」を見てきました。すごくよかった。公開初日八月一日に行ってきました。二十一時十分の回だったからか、満員というわけではなかったですね。見るのは子供が多いでしょうからね。
前作は見ていて、すごく感動した思い出があります。感情を擬人化するってすごいアイディアですよね。

物語は高校入学を控えた女の子「ライリー」の、アイスホッケー合宿(中学での活躍で、強豪の高校に特別参加したようなかたちなのかな?)の3日間を描いています。大きな事件があるわけではないですが、感情を擬人化して見せることによってドラマチックな物語になっていて、思春期の子供ちょっとした特別な日常をこんなにもドラマチック描けるのかと、感動しますね。

ライリーは仲良しの二人の友達とアイスホッケーの合宿に参加。しかし、行きの車の中で二人が自分と同じ高校に行かないことを知ってしまう。
合宿では憧れの先輩と出会い、彼女に惹かれる。そんなこともあり、友達との距離が遠くなりつつ、合宿ははじまる。
友達と、これから行くであろう高校のアイスホッケー部の先輩との関係どちらを優先するか。アイスホッケーで認められたいという、焦り。先輩たちと合わせようとして、普段の自分ではなくなっていくライリー。その感情の動きを擬人化した感情たちが表現していく。
映画ではあまり小説のように心の声を表現することはしません(全くないわけではないけれど)。
でも、感情の擬人化してしまえば、できちゃいますよね。すごいアイディアですよね。自分の中でも、感情が動いている時は「心の中の個性を持つ感情が働いているのかな」なんて思っちゃいました。

ライリーは思春期になり、心の中に新しい感情たちがやってきます。いわゆる、大人の感情が。今までは希望に満ちた前途だけを見てきたのに「心配」するようになり、何をやっても楽しくできていたのに「恥ずかしさ」を感じたり、憧れの中に「嫉妬」がはいり、めんどくさい「怠い」と言え感情が生まれます。要するに不安からくる感情(「心配」「恥ずかしい」「嫉妬」「怠い」。「怠い」は不安から身を守るための感情かな。「嫉妬」は不安から自分に自信がなくなることで生まれる感情かな)ですね。「喜び」「悲しみ」「怒り」「怯え」「ムカムカ」という元いた感情のように、何かに対してすぐ反応を示すような感情ではないですね。二次感情とでも言うのかな(私の考えとして、二つに分けるならこうなるかなと思いました)。
この二つのグループが対立して、新しい感情の方がライリーの中で勝ってしまう。
実際のライリーも不安の中で行動していく。今までの自分の良いところをなくしていってしまう。
昔からいた感情たちは、新しい感情に追放されてしまう。どうにか、捕まった牢から出てきて、自分たちが作り上げてきた感情の集積のようなものを(新し感情たちに捨てられてしまう)取り返しに冒険しにいく。
不安にとらわれているライリーの描写をしながら、ライリーの中の擬人化された感情たちも描いていく。
ライリーの行動は緊張感を覚えさせるもので、ドキドキしながら見られるし、ヨロコビたち元からいた感情の行動は面白く見られる。ただ、心の中の出来事なのでヨロコビたちを阻むものは脈絡がない(ライリーの感情とひもづいてはいるが)。私は楽しく見られたけれど、気になる人はいるかも。牢からの脱獄なんか、ご都合主義です。いきなり出てくる新キャラクターたちが助けてくれます。でも、この場面すごく楽しめてしまったんですよね。何でだろう? キャラクターの力なんだろうなとは考えます。キャラクターがとにかくコミカル。

ライリーの行動は、表面上は間違ってはいないかもしれないけれど(みんなに合わせて、波風立たせてないし)、「そんなふうに周りに合わせていいの」とメタ的視点からは思えるし、自分の将来のために先輩と仲良くするのはいいけれど、今の友達をおざなりにしていいのとは思ってしまいます。表面上は友達でいたいだろうから喧嘩とかはしないだろうけれど、中学を卒業したら二度と会わないだろう関係になってしまうことを思うと、緊張感がでてきます。
そして、ライリーを元に戻すには元からいる感情たちが、昔の彼女の感情を取り戻すことにかかっているので、元からいる感情たちのパートは応援してみられます。
しかし、元からいた感情にしても、新しい感情にしても、ライリーを支配していることには変わりがないのではないかという疑問が湧いてきます。
前作はすごく楽しめて、秀逸なアイディアからも好きな作品なのですが、正直内容は覚えていません。ライリーの小さい頃の話しで、奔放なライリーの行動に振り回されながら、ライリーを感情たちが正しい道に導くような作品だったと思います。親が子を導くように。しかし、この作品ではライリーはもう子供ではありません。元いた感情たちも、ライリーの素敵な思い出以外の、嫌な感情を呼び起こす感情を捨ててました。
ヨロコビたちはライリーの良き思い出だけで作られた記憶(それによって生まれるライリーの心)を取り戻します。ライリーの心の制御室に戻るために、ライリーの嫌な記憶で波を作って戻ります。

私がラストのまとめ方が美しいと思ったのはこの点です。元からいた感情たちが作り出したライリーもまた、自分たちに作られたライリーだったとヨロコビが気づくところです(今シンパイたちが行っている行動でライリーの心を作っているように)。
捨てられた嫌な記憶もまたライリーの心に合流し(嫌な記憶もまた元いた感情とともに心の制御室戻ります)、元からいた感情たちが作ってきた心だけでなく、今まで積み上げたものの中(嫌な記憶、それによって生まれる負の心)でライリーは自分を取り戻す描写が素晴らしいです。
今まで、子供がゆえに守られてきた存在から、大人になっていくことを示しています。嫌な記憶から生まれる心が、もしかしたらライリーをよくない道に進めるかもしれません。その道に進まないために、ヨロコビたちは守ってきました。しかし、大人になることによって全て受け止めていかなくてはいけません。もちろん、シンパイたちが新しい感情ともうまく付き合わなくてはいけません。
元からいた感情がつくってきたライリー取り戻すというのが物語上示された解決策でしたが、そこからさらに本当の「気持ち」とは何かを示す、示されていた解決策より先の解決が待っているところが物語として素晴しく感じます。色々と気づかせてくれますし。決してフアンたち新しい感情が悪いわけでもないことも、示されています。大人になるということが、どういうことか画として見せているところが美しい。

テーマは成長なのかな。多くの物語は成長がテーマですが、その成長を示すために「何を見せるか」が、作品による違いなんでしょうね。だいたいは何かを乗り越えるような物語なると思います。が、この物語は自分中にある心に気づかせる、ことで示しています。ライリーが何かを乗り越えるわけではないです。
現実の人の心は複雑です。この作品のように、時に友達に対して理不尽な自分勝手な感情から仲違いすることもあるでしょう。しかし「物語」のように何かがあって友達の大切さに気づくとかではなく(喧嘩したから部活でもギクシャクするが、ライバルのチームとの試合の中でお互いの大切さに気づくとか)、一晩寝たら友達が大切こと気づくこともあるでしょう。そんな時、外からだけで見ていたら物語としては物足りないとは思いますが、感情は激しくうごています。「俺が悪かったな」「嫌、あいつが悪いんだ」「先に謝るのは癪だ」「謝るなんて恥ずかしい」きっと寝る前に色々考えたのかもしれません。このような心の動きを見せたとしても、物語として面白いものを作るのは大変ですね(作れる人はいると思いますが)。「感情を擬人化して動かしたら」という発想で、複雑な心の動きを感情たちの動きで見せて、自分自身の大切な心を見出す物語というアイディアがすごいですよね。
何かを乗り越える物語でなく、自分自身に気づく物語。この作品が素晴らしいと思えるのは、従来の用いられる物語の型とは違うところに私は素晴らしさを感じてしまいます。

読み返すと「感情」とか「心」とか、その言葉の定義が曖昧でですね。「感情」は今回キャラクターとして出てきた感情のことをいっています。「心」は今まで生きてきたライリーを形成するもの。考え方の方向性を示すものと考えました(説明が難しい)。「感情」の生まれ方もまた考え方次第なので、「ヨロコビ」たちは、すぐに反応する感情(元いた感情。出来事に対してダイレクトに反応できる感情)が生まれる考え方をするようにライリーを作っていたのでしょう。「シンパイ」たちも不安からくる感情が多く呼ばれる、考え方をするように、そのために必要な記憶を集めライリーを作っていきます。そう考えると、ヨロコビタチの行動が「思春期」がくるのを遅れさせていたのかもしれないですね。しかし「シンパイ」たちのような新しい感情がないと、これこらくら辛いことから自分を守るのが難しくなります。ライリーの心の中の防衛本能が、本来はもっと自然に生まれるはずだったが「元いた感情」によって生まれなくなっていた「新しい感情」を無理矢理誕生させた。それがために、自然に溶け合うはずだった「新しい感情」が暴走したということかもしれません。

吹き替えで見たのですが、台詞が早口だったような気がします。それがために、あまりダレることなく、緊張感が常にあったのかもしれない。

書いてなかったですが、元いた感情のうち「カナシミ」だけは、最後にヨロコビたちを制御室に戻す用意のために、制御室に戻ります。カナシミ一人の行動は緊張感あって見ていて楽しかったです。応援したくなります。「ハズカシ」がカナシミに協力してくれたりするところで、新しい感情が皆まとまっているわけではないことも分かりますしね。結局、最後捕まっちゃうけれど。

シンパイの行動はやり過ぎだけれど、わからないでもないですよね。

3Dアニメの中に、2Dアニメが出てくるのが面白かった。

不満を言うとしたら感情のキャラクターがいすぎて、ひとつひとつの感情たちの個性の相剋というより、物語の軸が「元いた感情」と「新しい感情」の相剋になっていたところです。悪いわけではないし、キャラクター全員に見せ場を作ると上映時間が長くなってしまうのでこれで良いとは思いますが(九十分くらいで見やすかった)、キャラクターたちひとりひとりの個性を発揮した行動も見たかった。

物語の類型があまりない形ですし、素晴らしい作品です。すごく面白かった。良かった!


更新情報はtwitterにUPしてます! フォローお願いします!
https://twitter.com/yuto_mori_blog
テーマを探求を中心とした映画ブログ書いてます。リンクは下記です。

映画の感想や、小説風の日常の記録でみなさんを楽しませたいと思っています! よろしくお願いします! 楽しめたら「スキ」「サポート」など頂けたら嬉しいです!