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映画「ラヂオの時間」Prime Videoで見ました。作家さんかわいそう。

映画「ラヂオの時間」をPrime Videoで見ました。面白かったです。
生放送のラジオドラマの当日の準備から、生放送が終わるまでを描いています。
ほぼ舞台はテレビ局の中だけという狭い空間内だけで展開していて、大きな事件はありません(人が亡くなるとか、大きな事故が起きるとか、そういう事件)なので、この映画の中で起きるドラマは人によってもたらされます。
人それぞれの個性のぶつかり合いからドラマが生まれるのです。それへのハラハラと、個性的な人物の誇張されたやり取りこら笑いが起き続き見たくなります。そういう点がとても面白かった。

人物の紹介と個性を書きながら物語の感想を書こうと思います。
工藤学。ディレクター。唐沢寿明さんが演じているのですが、すごく格好良かった。「俺は与えられた仕事をこなすだけだ」と言いながらも、元の台本からめちゃくちゃになったラジオドラマを賢明こなそうとする。作家の鈴木みやこに「この仕事を続けるのは辞めたほうがいい」と言いながらも、みやこの脚本の大事な部分を変えることを抵抗し、生放送中にディレクターを降ろされながらも、裏からみやこの脚本通りに終わらせようとする。冷たい感じだけれど、大事な部分は守ろうとしているところがすごく格好良かった。

鈴木みやこ。ラジオドラマの作家。シナリオコンクールの優勝作でのドラマで、今のとこらプロというわけではないらしい。とにかく可哀想である。演者の都合でどんどん脚本が変えられてしまう。「ああこういうことおるよね」って、自分を重ねてしまうところがありますね。そういう見ている人への同情を集める役どころなのかな? だけれど後半声を入れる場所に侵入して、言うことは言う場面もあって良いです。「きちんと報われて欲しいな」なんて思わせますね。脚本はメチャクチャになったものの、物語のラストは想定していたものになって報われています(脚本がめちゃくちゃになった時点で報われてないけれどね)。
ラジオドラマ冒頭の自己紹介で声が上擦っていたりと、こう言う場面から個性がでますね。
脚本ご自分と夫を重ねた感じの物語なので、見学に来ていた夫とのトラブルを感じさせて、これも物語に緊張感を与えています(大きなトラブルはないけれど)。

千本のっこ。ラジオドラマの主人公メアリー・ジェーン(元の役名は律子)。そもそも、この人が役名を外国の人の名前に変えたからその後のトラブルが起きまくることになるのです。職業もパチンコ屋の店員から弁護士に代わっているし。舞台と職業変えたら、物語のテーマが変わりますよね。後にこの人溺れる設定なんだけれど、アメリカのシカゴを舞台にしてしまったから「海がない」といういことになって、脚本が変わっていく。こんな感じで、何か一つを変えたがために、脚本がおかしくなってまた変える、そして脚本上の無理が生じて、それがドラマを生むというのがこの映画の主な展開なっていくわけです。この人が役名を変えたりするのも、きちんと理由があって昔スターであったけれど、いまは若手のバーターという感じであまりこのラジオドラマに乗り気でないということです。小さな一言が、状況をどんどん悪くするという展開ですね。名前と職業変えた以外は、のっこさんが何かしたというわけでもないんですけどね(最初のトラブルメーカーだけれど、劇中ずっとトラブルを起こすような人物ではない。狂言回しというわけではない)。この人をきっかけに、他の人たちがさらに好き勝手行動するようになって(相手役の浜村錠さんも名前を変えて、職業も漁師からパイロットに変わる。しかもスポンサーの都合上、飛行機のパイロットこら宇宙船のパイロットに)、どんどん事件が起こるのです。その後事件は起こさないけれど、憎たらしい演技をしていて良い人物でした。最後はこの人が「満足してよかった」というのがオチになってましたね。

牛島龍彦。プロデューサー、。番組の責任者。最初は作家さんの見方をしていて「いい人」っぽいなと思わせつつ、八方美人で「番組が無事終了すること(と女のこと)しか考えていない」人とわこる。それでも、番組をきちんと終わらせられるから優秀なんだとは思うけれど。この人がきちんと役者さん達を説得できないから、トラブルが起こるわけです。実際には中間管理職で下からも、上からも文句を言われていると思うので大変なのだろうけれど。作中ではそういう面はあまり描かれず、いい加減な面と仕事が終わるなら人の気持ちなんてどうでもいいという面が強調されますね。見ている人の憎しみを一身にあびる役どころ。役の配置として上手いですよね。これで同情させる面をだしすぎると憎まれ役がいなくなってカタルシスが少なくなるのでしょうね。

他には「保坂卓」というラジオドラマのナレーターを担当するアナウンサーが良い役どころでした。言葉にこだわって、脚本を直させそうとします(「上を見上げた」を直させようとする)。こういうこだわりは人物の性格を特徴づけますね。シカゴに海がないことに気づいたのもこの人。この人が脚本を直させる場面は、千本のっこが役名を変える前の、物語のほぼ始まりにあるのですが、ここからもう脚本がが変わる展開を予想させているんですね。

バッキーという牛島に頼まれて脚本を変える放送作家さんもいい味出していました。この人のこだわりで舞台がシカゴになったし。

伊藤万作という守衛さんで、元効果音を作っていた人もいい役どころでした。ラジオドラマだけに音が重要なんですね。効果音どう出すかで揉めることが三回くらいあったかな。最後の物語上のトラブルもこのひと活躍で解決します(花火の音)。

各々の役となる人たちの個性がときにトラブルを生み、時にそのトラブルを解決します。人間と人間のやり取りのみでドラマを生み、笑いも生んでいる良い作品でした。

オチはこのラジオドラマを聴いて感動した人(トラック運転手)が、ラジオ局に来て感動を伝えます。たとえそれが生み出された過程どうであれ、作品は誰かの心に届くということでしょうか? ウィキペディアを見ると、監督の三谷幸喜さんが自分が書いた脚本をシリアスなものに変えられたことを題材にして作ったとあります。なので、一番のテーマは「都合によって大切なものが変化させられる」なのかもしれません。同時に社会の理不尽。それでも物語は感動を生むというのもテーマとしてあったかもしれませんね。複数テーマを考えられる作品は良い作品ですよね。

物語のキャラクターについて考える良い教科書ではないでしょうか。


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