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ラポール 4:巻き込まれに見られるドラマ性

木之下:今回のゼミでは、「巻き込まれ」のドラマ性について話し合います。
まず、「巻き込まれ」と「ドラマ」という2つのキーワードを入れた時、君たちの頭の中に思い浮かんだイメージがありますか?

(少し考えてから)

円山:恋愛ですかね。
:私もそのことが浮かびました。
木之下:他には?
:殺人。
円山:わ、いきなり衝撃的!

木之下:着眼点がすばらしいです。どちらも起こり得ます。

人の出会いは、印象、場面、事件、展開、情により、変化します。千変万化するドラマが繰り広げられます。

男女が巻き込まれて、親近感が増すことがあります。その場合、前回の講義で述べたように親密度が高まると、巻き込まれやすくなります。

男女の場合は、恋愛という結果におちることがよくあります。
フォーリンラブ(Fall in love)ですね。

また、男女の恋愛観に大きな違いがあり、一方的に男性が女性に盲目的に恋した場合、ストーカーという行為が起こり得ます。

さらに、不倫問題がもめて大きな事件になることがあります。

どちらのケースも最悪では、「殺人」という異常事態におちいることがあります。

:理屈は分かる気がするのですが、行動が極端に違うので、感情的な理解にとまどいます。
木之下:橘さんのおっしゃることは、よく理解できます。
人の感情は、両極端に触れることが多いのです。
「好き」と「嫌い」とか。
:「可愛さ余って憎さ百倍」ということですか?
木之下:はい。人は、好きと嫌いという正反対の感情を一緒に持つことが多いのです。

円山:えっ?そういうものですか?

木之下:人の感情が直角に曲がることは案外難しいものなのです。
反対に向かう方が心理的に楽に感じるのです。
:半分は理解できます。残り半分は、よく分かりません。
木之下:橘さんのような才女でも、数式のように解くことはできないのですね。
一例をあげます。

あなた方が信頼を寄せている恋人がいると仮定します。
実際、いるのか、いないのか、プライベートには触れません。
あくまで、心理学的な反応として考えてください。
:はい。

木之下:現実にありえる話です。あなたが、とても信頼をし、好意を持っている恋人が、他の女性と楽しそうにイチャイチャしていたとしたら、どう感じますか?
円山:率直にイヤです。
:後でこらしめてやろうと思うかな。

木之下:自然な感情の表出だと思います。

2人とも、自分の好きな人が自分に好意をよせて、やさしくしてくれる間は満足しているでしょう。

円山:そう思います。

木之下:しかし、その彼が他の女性と仲良くしているのを目の辺りにするとむかつく。いや、むかつくという言葉は、君たちのような才媛にはふさわしくない用語。だから、「こころ、穏やかでない」ということにしておきますね。
円山:はい。
木之下:そういう事例は、一定の割合で、日常的に起こるものです。人類史の経験上、不倫がなくなることもありません。

その結果、相手に対する情が強い人、なおかつ激高するような攻撃性の高い人は、相手を傷つける、場合によっては、殺してしまえという感情が芽生えてしまうことがありえるのです。

:なるほど。個人差はあるけれど、その人の気質と環境によって、最悪の事態もありえるということなのですね。

木之下:その通り。

さて、ここで人の感情によく起こる重要な法則をしっかり胸に刻みましょう。

人には、相反する感情が同居します。

好き ⇔ 嫌い
一緒にいたい ⇔ 一緒にいると息がつまる
静かにしていたい ⇔ 沈黙が苦痛
かわいい ⇔ ちょっといじめたくなる
1人はさみしい ⇔ 人といるとうっとおしい

このような感情をアンビバレント(ambivalent)とよびます。
アンビバレントは、よく引き起こされる感情です。

前に人の感情は、反する感情に向かいやすいということを述べました。
心は、「直角に曲がる」ことは、難しいのです。

学校で習う熟語で、有名な反対語がありますね。

「愛情」の反対は?
円山:「憎悪」です。
木之下:国語的にはそうですね。
ですが、心理学的には異なる解釈をされることがあります。

愛情の反対は、「無関心」というものです。

これは、同一線上にはない感情でしょう。
個人が発見するには、発想の転換が必要となります。
しかし、言葉を耳にすると、そう思うところがあるのではないでしょうか。

円山:なるほど。人間の感情は、一筋縄では解けないのですね。

木之下:その通りです。
それでは、次回は、巻き込まれのドラマ性の後半部の講義を行いたいと思います。
橘、円山:よろしくお願いします。

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考察:巻き込まれには、ドラマが生じやすい
人には相反する感情が共存する
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