債権者集会

倒産した出版社から未払い印税を回収した話(5)

「フリー」より先に社員と弁護士へカネが行く

 1997年3月、私はF書房の弁護士に「私への未払い報酬25万4000円は小口債権なので、優先して弁済してほしい」という趣旨のファクシミリを送った。

 約1週間後、弁護士から「債権回収がある程度できた後、検討致したく存じます」と記載されたファクシミリが送られてきた。

 任意整理でも法的整理でも、小口債権が優先して弁済されることはよくある。債権者の数が減らせるので、その後の手続きが進めやすいこと、小口債権を持つのは個人や零細企業が多く、未払い金が致命傷となりかねないことなどが理由だ。

 私は雑誌の仕事をしながらF書房から単行本を出版し、その印税の一部、約25万円が未払いなだけだから、まだマシ。長期間、F書房の仕事に専念し、100万円単位の報酬が一切支払われていない「フリー」もいるはずだから、まったく心が痛む。

 4月早々、F書房の弁護士から「中間報告書」が郵送されてきた。それによると、労働債権のうち、F書房社員の未払い給料や解雇予告手当(使用者が30日前までに解雇を予告しなかった場合、支払わなければならない30日分以上の平均賃金)は支払いが完了しているが、退職金は未払いだという。

「フリー」でも社員同等、いや、社員以上の仕事をする者はいくらでもいる。それなのに、「フリー」はいまだに1円も弁済されず、社員はこれから退職金まで面倒を見てもらうわけである。実に不公平な扱いだと憤慨させられた。

 また、「現在における推定配当率は(中略)、10%程度であると推定されます」と記載されていた。つまり、私の場合、未払い報酬25万4000円のうち、2万5000円程度しかもらえない見込みなのだ。重ね重ね、「フリー」と社員との格差にがく然とする。

「中間報告書」には、「資産・負債・収支の概要」という表が添付されていた。その末尾に「回収諸費用 800万円」と記載されていた。

回収諸費用800

 債権者集会のときは、「回収諸費用 650万円」と記載されていたから、5カ月で150万円も増加したことになる。

 自分が1円も弁済されていないこともあり、F書房の弁護士がとても商売上手に思えた。

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