債権者集会

倒産した出版社から未払い印税を回収した話(3)

 10月下旬、私は債権者集会へ出向いた。場所はF書房の弁護士の事務所から近い、都心の貸し会議室であった。

 債権者集会には100名ほどが来ていた。

 F書房の弁護士(3名)はいずれも倒産の処理が専門らしく、「みなさまに、ご迷惑をおかけしております」などとへりくだった口調で話しはじめた。F書房のT社長も「申しわけありません」と深々と頭を下げ、とても経営責任を追及したり、「カネ払え!」と叫んだりする雰囲気ではない。

 その後、弁護士からT社長夫妻が離婚していて、同社長に資産がないことを説明されても、「弁済逃れの偽装離婚だ」と非難する声はあがらなかった。相手が平身低頭していて、何か言う気力をそがれるのだ。

 債権者集会では、「資産と負債の概要」という表が配られた。資産はF書房が保有する預金や現金、売掛金、固定資産など。負債は、税金や社会保険料、労働債権(社員の未払いの給料や退職金)という、法律上、優先的な弁済が認められるものとそれ以外のものが区別されていた。私への未払い報酬は後者に含まれる。

 その表の末尾にさりげなく「回収諸費用 650万円」とある。どうもF書房の倒産処理にかかる費用らしい。と思っていたら、弁護士が「私たちもかすみを食べて生きていくわけにはまいりませんので…」とまわりくどい説明をした。

回収費用

 この回収諸費用(大部分は弁護士報酬と思われる)も優先的な弁済が行われる。私のような「フリー」が生活に直結する約25万円の未払い報酬をもらえないなか、弁護士が先にF書房の資産から600万円以上も報酬を確保するというのは、いかにも不公平な感じがした。

 だが、話は、これだけではすまないのであった。

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