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スポーツプロデューサーという仕事

私はこの3年間、スポーツプロデューサーとして仕事を行なって来ました。まだまだひよっ子の自分が、名だたるプロフェッショナルが存在するこの分野において、自分の経験を語るのは早すぎますが、未熟だからこそ自分なりの目線で感じたことを書きます。これからスポーツビジネスを志す若き野心家たちの参考になれば幸いです。

私は主に冬季スポーツイベントのプロデュースを行って参りました。

プロデューサーとは

「誰にも頼まれてないのに世の中に求められるものを創る。」それがプロデューサーの最大の役割だと認識しています。圧倒的な当事者意識でそこに新たな価値を生み出す、あるいは既に一定の価値を有するものに一味加えてさらなる付加価値を与える。それがプロデューサーの存在価値ではないかと思っています。

スポーツイベントプロデュースは、主にアスリート・ファン・スポンサー・競技団体及び関係者等を結びつける「機会」や「場」を創る仕事です。一つの競技会のプロデュースワークはいわば「起業」のようなもの。ある領域や分野における課題解決の為、時に既存を壊し、資金調達(スポーツにおける主たる資金調達とはスポンサーシップを指します。)を行い、立て直し、新たな常識を創る。イノベーターの精神を持って挑みます。また、既存のコンテンツを磨き上げる場合、仕事の感覚としては新製品の導入または切り替え提案を行う心境に近しく、その作業プロセスは、家のリフォームDIYや飲食店などでの新メニュー考案のような感覚です。

私に見えている世界は私にしか見えない。

プロデューサーは実に人間性が現れる職種です。経験と価値観、人となりが仕事の手段を変えるからです。目標を達成する為の手法はプロデューサーによってそれぞれ異なります。技術的な要素に加え、経験と価値観が仕事に色を与えます。経験と価値観は人それぞれ。同じ人などいない。それぞれ見えている世界が違うのです。よって生み出される演出は、全く異なるものとなります。プロジェクトの目的と目標が全体に共有されていたとしても、その設計とデザインは極めて属人的で、引き継ぎや交代が難しい業種です。人が変われば内容や趣旨も大きく変わってしまう。だからこそ個性や多様性が生まれる。

スポーツプロデューサーに必要なエッセンス

プロデューサーは常に広い視野と高い視座、柔軟な思考性と寛大な心、強い信念。そして無性の愛がなければならない。起業家精神やクリエイター精神、豊かな感性が必要になります。神聖な仕事を遂行する上で、政治的な力が働いたり、誰かの顔色を伺いながらやらなければならなくなった時点で、プロデューサーとしての能力は失われます。

スポーツが死ぬ時

現代スポーツはビジネスと密接な関係にあります。しかし、競技はビジネスや政治から永久的に独立していなければなりません。さまざまな思惑と利害が混じり合うスポーツイベントにおいて、純粋で公正な競技を守りながら、うまく周囲とのバランスをとり、皆の理想を出来る限り実現するのがプロデューサーの役割でもあります。従ってプロデューサーたる者は常に平等でなければならない。それには度胸と器を求められます。また、一つの仕事で同時に3者以上の理想を叶える力量がなければなりません。これが誰かの方を向いたり、自分を含む誰かの立場を守るためにヒヨった時点で、そのスポーツ及びイベントは死にます。

プロデューサーとは泥臭い開拓者

プロデューサーは目的達成の為にゼロから土壌を耕す必要があります。一見華やかなクリエイターのように思える職種ですが、実は泥臭く、開拓者に近い職業です。誰かが耕した畑では美味しい果実が作れないように、誰かが仕立てた現場で人を動かすことは困難です。愛を持って自ら土壌を耕し、種を植え、収穫を行い、調理し、提供する。それがこの仕事の一連の流れです。
一方で、この職種は心折られることが多々あります。入念に仕立てた案件や多大なる時間と労力を費やし準備した企画も潰れてしまうことがよくあります。企画が潰れ、夢やぶれることは日常茶飯事。最近では東京オリンピックがその最たる例です。疫病、自然災害など不可抗力からスポンサーの業績、スキャンダルなどあらゆる理由で簡単に仕事が吹っ飛びます。儚くも脆いコンテンツを扱う職種です。

何かをプロデュースすることは複数を同時に愛すること。

愛と情熱と圧倒的な当事者意識がなければ成立しないのがスポーツプロデューサーと言う仕事です。それは競技自体や選手に対するものではなく、その業界とその領域に対して。スポーツプロデュースだけなくあらゆる仕事に共通していることですが、愛と情熱と当事者意識がなければ持続出来ないし、いい仕事は出来ない。
競技界やスポンサー、地域の課題にコミットし、自分ごととして圧倒的な当事者意識で解決の為にやり続けられるか?それにはそこに登場する全ての人に対する愛と、仕事に対する情熱がなければならない。特定のスポーツや選手、スポンサーなどが好きな人は実は意外とうまくいかないのがこのプロデューサーと言う仕事です。前述の通り、どこかに愛情が偏るとうまくいかないのがこの職種です。特定の集団や個人が好きであればマネジメント業の方が向いているでしょう。
プロデュース業では、複数を平等に愛することが大切です。

以上、スポーツプロデュースについてでした。

次回、機会があればスポーツビジネスについて書きます。


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