時計を捨てた話

私は小学校4年生の頃からずっと腕時計をつけ、時間に誠実に生きてきた。何時までに終わらせようと締め切りの目安にしたり、一日の計画を決めたり、今の自分がどの段階にいるのかという確認作業にも時間を使ってきた。そのうち腕時計をつけていないと気持ち悪くなり、風呂でも寝てても時計をつけていた。時間が見えない環境下では不安な気持ちになった。

でも最近は、そんな腕時計を捨てた。

24時間で進む時間に触れることを止めて、自分が生きた時間だけを見るようになった。

どういうことかというと、かっこつけているのではなく、自分を24時間という枠で考えることが難しくなったのだ。

現在は、手作業より、脳作業の方に多くの資源を割いている。手作業なら作業時間が増える程に作業の成果も出るし、その過程もしっかりと目に見え実感できる。

しかし、脳作業はいくら時間・お金・体力を使っても、成果が出ない時は出ない。死ぬほど苦しんで、悩んで考えても、その過程は明確に見えるものではない。脳作業では、成果が出て成功して初めて実感を得られる。

そんな脳作業をしている人間にとって、24時間という概念は足かせになることもある。1日中頑張っても成果が出なかったと感じてしまった瞬間にモチベーションは下がるし、焦りや不安に押し潰されそうになる。そして、効率が下がり成果から遠ざかっていく。

そこで、脳作業をするときは時間を無視して、「自分が脳作業をした」という事実に注目した方が精神衛生的にも効率的にも良い。今日は1日考え抜けたという実感を得ることを優先し、その後に成果の事を気にするのが良いと思う。

私は、アイデアをつくったり、文章を書いたり、デザインしたり、人をまとめたりという作業に多く触れる機会に恵まれた。でも、この類の作業は、いわゆる脳作業だ。成果がでなきゃ意味が無い。そして成果を出せない自分にも意味や価値もない。そんな重圧と常に戦わないといけない。こんなの意味は無いと思い委縮し、アイデアを出すことが怖くなり、自信もなくなり、得体の知れない感情に睨まれて動けなくなってしまった。人と話すことも恐ろしくて仕方なくなる。なぜなら成果の無い自分に価値はないから。

だからこそ、成果以外の部分では無く、まずは自分が頑張った過程を見てそこで実感を得る事が大事だと思う。

もちろん、成果やそこまでの時間は1番重要だ。仕事で、「私は沢山頑張ったから成果がでなくてもいいでしょ?」なんてこと言ったら、間違いなく首をはねられる。いかに短時間で素晴らしい成果を上げる努力や技術は必要だ。でも、そんな成果や時間と同じくらい、そこまでの道のりを大切にしたいと思う。

それが自分の時間だから。

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