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なぜTENTIALは「アスリートとのつながり」を大切にするのか。その歩みと想いの話

2024年2月6日にTENTIALは創業7年目を迎えました。たくさんのお客様や関わってくださるパートナーに支えられ、年々成長を続けていますが、その背景には多岐にわたるアスリートの方々との取り組みがあります。

TENTIALではアスリートの知見や最新の技術・研究を活用して製品を開発していることもあり、現在社内で働くBuddy(従業員)の中にも元アスリートが多数在籍しています。

例えばプロ選手としてJリーグを経験した後に入社してくれたメンバーや、現在もフランス式ボクシング(サバット)の日本代表として活動しているメンバーもいます。僕自身も高校時代まで本気でプロのサッカー選手を志していました。

2019年からはサッカー日本代表も経験された播戸竜二さんがTENTIALのCSO(Chief Sports Officer)を務めてくださっており、2020年には“投資家”としてプロテニスプレーヤーの西岡良仁選手にも参画いただきました。

現在では大学の体育会からプロ選手まで、たくさんのアスリートの方々が​​事業成長に携わる仲間としてTENTIALに関わってくださっています。その人数は延べ1000人を超えました。

直近では「コンディショニングサポート契約」を筆頭に、”TENTIALだからこそ実現できるアスリート支援の新しい取り組み”も進めているところです。

アスリートの方々との取り組みが加速している中で、そもそもなぜ僕たちが「アスリートとのつながり」を大切にしているのか。今回のnoteではこれまでの歩みとともに、その背景にある想いを書いてみたいと思います。


ビジネスを通じてスポーツ界に貢献したい

スポーツで培った資産やノウハウを活用して、社会に貢献する。そしてそこで得られた成果(対価)をスポーツに還元・再投資できるエコシステムを作りたい。

それがサッカー選手としてプロになることはできなかった僕が、ビジネスの世界に進むにあたって考えていたことです。

僕は周りの方々に恵まれたことなどもあって、ビジネスの領域で新たなチャレンジをすることができました。一方で自分の周りを見渡すと、プロになるつもりで頑張っていた人や実際にプロ選手の夢を掴んだ人が、「プロとして生きていくことの壁の高さに挫折していく姿」を何度も目の当たりにすることもありました。

こうした経験はTENTIALを創業する背景にも繋がっていて、以前のnoteに詳しく書いています。

特に課題だと感じていたのが、セカンドキャリアです。現役を引退した選手に限らず、幼少期からスポーツに自分の人生を懸けてきた人たちが「アスリートとしての選択肢がなくなったときに生きていける間口」があまりにも狭すぎると感じていました。

その現状を少しでも変えることができないか。そんな想いから、起業のプランとして「アスリートのセカンドキャリア」を直接支援する事業なども考えましたが、当時は「スタートアップの事業として取り組むには収益性やスケールの観点で難しい」という結論に至りました。

そこでTENTIAL創業時はインターン生として体育会出身のメンバーを採用したり、元アスリートを正社員として採用したりなど、“スタートアップの一員”という形でスポーツ経験者がセカンドキャリアを歩めるきっかけを作ることから始めました。

祖業であるメディア事業も、「アスリートだからこそわかるスポーツやコンディショニングに関する知見」を集約しながら創り上げていったものです。

当時のTENTIALは名前も全く知られていない、立ち上げ直後のスタートアップでした。それでも想いやビジョンに共感してくれた数十人のアスリートやスポーツドクターの方々がコンテンツ作りに協力してくださり、メディアとしての土台ができていきました。

最初は自分たちの個人的な繋がりを中心に協力者を集めていたのですが、事業の広がりとともに、少しずつアスリートの方々との輪や、その取り組みの幅が広がっていったのです。

元日本代表のサッカー選手による、社員全員との1on1

TENTIAL×アスリートの取り組みに関して1つの転機になったのが、2019年にCSOに就任してくださった播戸竜二さん(以下、播戸さん)です。

創業間もない頃、スタートアップ企業の代表が集まる食事会に播戸さんがいらっしゃっていたことが出会いのきっかけでした。

サッカーをやっていた僕は、播戸さんのことを以前から知っていました。食事会当時は現役選手でしたが、ちょうど引退を検討されていたタイミングで、まさにご自身の新しいキャリアについてお話しされていたことをよく覚えています。

播戸さんは日本代表としてのご経験に加えて、J1~J3までの各リーグでプレー経験があり、その全てのリーグで優勝を経験されています。そのため対人面での嗅覚や直感力がずば抜けており、お話を伺う中で「プレーヤーとしてだけではなく、強いチーム作りにも貢献されてきた方」なのだと感じました。

そのような経験をされている播戸さんから、組織力強化やチームマネジメントについて勉強させていただけないだろうか。

播戸さんも「経営者を目指す」という志を掲げられていたため、自分のビジネス経験やスタートアップ経営者という立場を通じて提供できるものがあるかもしれないと感じ、何かご一緒できないかとお声がけをしたのです。

ちなみに、後から聞いたところ、当時播戸さんはすでに7人ほどの経営者から「何か一緒にできないか」と話をもらっていたそうですが、実際に具体的にやりたいと声をかけたのは僕が最初だったようです(笑)

もともと播戸さんがスタートアップに興味を持たれていたこともあり、CSOに就任いただいて以降は、経営会議や社内イベントのような“経営のリアル”に触れられる機会をできる限り設け、積極的に参加していただいています。

もちろん播戸さんからも、さまざまなご縁や知見をいただきました。例えばTENTIALの投資家でもあるセゾンベンチャーズ社には播戸さんからのご紹介でプレゼンの機会をいただき、最終的には投資いただくことに繋がりました。

また、ユニークな取り組みだったのが「播走」という名の1on1です。経営者の僕だけではなく、当時のTENTIALメンバー全員(20人ほど)と1on1をしていただき、播戸さんならではの視点からアドバイスをいただいていました

現在も播戸さんからたくさんのご縁をいただいていますし、僕たちとしても播戸さんが新たな挑戦をされるにあたっての後押しができるような取り組みを続けていけたらいいなと考えています。

現役スポーツ選手からの投資

播戸さんはCSOという形でしたが、プロテニスプレーヤーの西岡良仁選手は投資家としてTENTIALにジョインしてくれました。

西岡選手には知人の紹介で出会い、かねてから「スタートアップへの投資に関心があった」ということを伺ったため、僕から投資をしていただけないかとアプローチしました。

ただ、交渉を開始した当時、TENTIALの商品はマスクとインソールのみ。それ以外は僕の想いくらいしか存在しない、非常に不安定なスタートアップでした。当時の西岡選手や彼の周りの方々からすれば、不安しかなかったと思います(笑)

当時説明に使っていた資料の一部。不安に思う気持ちを払拭できないかと西岡選手にはもちろんのこと、西岡選手をサポートされている方々にも必死にプレゼンをしました

スポーツ選手の場合、大手企業と取り組みができる機会はあるのですが、スタートアップとの接点はまだまだ少ないです。投資の機会となるとほぼないでしょうし、仮にあったとしても「友達が経営しているので投資する」といった、予め関係性が深い方への投資機会が主ではないかと感じていました。

そのような中でもTENTIALの製品や会社について面白いと感じてくださり、僕たちと同世代で共通点もあったことなどから、「西岡選手にとっては初となる投資先」に選んでいただけたことは嬉しかったです。

西岡選手が投資を決めた背景についてはForbs JAPANの記事で語られているので、よろしければこちらもご覧ください。

投資に関しては、昔からずっとやりたいと思っていたのですが、今まで機会がなく……。今回、アスリートのサポートをしている友人の紹介で、TENTIALの中西さんにお会いし、事業もそうですし、組織も面白い会社だな、と思ったんです。

僕自身、競技用のインソールはこれまでも使っていたのですが、TENTIALのインソールは従来のインソールとは全くの別物で、健康を目的に日常生活で使用する。「コンディショニング・インソール」という名前を聞いたときに、その発想は今までなかったと思いましたし、僕たちアスリートは体が資本なので、疲労の軽減にもTENTIALのインソールは良いなと思いました。また、中西さんを筆頭にTENTIALで働くメンバーのほとんどが元アスリートですし、年齢も僕と同世代ということで共通点があったのも魅力的でした。

Forbs JAPAN「【独白】プロテニス選手・西岡良仁がスタートアップへの投資を決めたワケ」より引用 

西岡選手は“現役選手”が発信したり、テニス以外の取り組みに挑戦したりすることに意義があるとこだわっていらっしゃり、投資やYouTubeの活動はもちろんのこと、主催されているYoshi’s Cupの協賛もご自身で営業して集めているそうです。

TENTIALとしてはスポーツ界の現場やビジネスについて情報交換をさせていただいているほか、定期的に製品に関するフィードバックもいただいています。実際に以前BAKUNEのサイズ感についてフィードバックをいただき、それをきっかけに商品をアップデートしたこともありました。

その他にも新しいご縁を繋いでいただいたり、逆にこちらがお繋ぎしたり、”こうあるべき”という形は固定せずに、いろいろなお話をしています。これからも達成したい未来に向けて、お互いに伴走者として、応援団として、様々な領域の取り組みができたらと考えています。

連携するアスリートは延べ1000人以上に

最初のうちは僕や創業メンバーの個人的な繋がりやアクションをきっかけにご一緒させていただくアスリートがほとんどでしたが、近年では社員からの紹介や、TENTIALに期待いただいた選手側からお声がけいただくことも増えてきました。

現在は社内に「アスリートリレーション」という専門のチームを設立し、延べ1000人以上のアスリートの皆様と連携をしています。

取り組みの内容も商品に関わるご相談やインタビュー、アンケートへのご協力を中心に広がってきています。いただいたフィードバックが商品の改善や、新規商品の企画につながることも多いです。

商品満足度が一定基準未満の商品については必ず商品の改善をしています。その際には満足度などの定量的な指標だけではなく、使い心地や機能面での定性的なコメントも必ずいただいています。

アンケートを通じたフィードバックはもちろん、ご協力いただける方には、商品開発チーム自らがアスリートの方とオンラインで打ち合わせを実施。知見をいただいたり、普段のコンディショニングで困っている点を教えていただくことで、アスリートの方が向き合う課題に対する解像度をあげながら商品開発に取り組んでいます。

なお、平野美宇選手、池村寛世選手、筑波大学蹴球部、京都大学アメリカンフットボール部、南葛SC、Cyber Agent Legit、和田毅選手、今永昇太選手とは「コンディショニングサポート契約」を締結させていただき、幅広い取り組みを実施しています。

発足したばかりの試みで契約内容やサポート体制については発展途上ですが、常に「今できる最適解」を一緒に議論しながら、より良い契約形態を模索しているところです。

TENTIALの従業員の“採用”という観点では、現在はアスリート経験を優遇するようなことはありませんし、直近はスポーツの経験がない(少ない)メンバーもかなり増えてきました。ただ多様な部署で活躍されている人たちの経験をキャリアパスとして型化することで、今後もアスリート・元アスリートのメンバーが活躍できる機会を広げていけたらとは考えています。

もっと「アスリート一人ひとりに寄り添った支援」が実現できる

この6年間で様々なアスリートとのご縁をいただき、TENTIALとして共創のかたちを模索してきました。

それでも大手のスポーツメーカーと比較した時に、まだまだ取り組みの幅が狭く、十分な体制が整っていないことも事実です。たくさんの声をいただいているのに、その一部しか活かしきれないていないことに対する葛藤もあります。

まだまだ課題だらけで試行錯誤の日々ですが、TENTIALとしては”持続的な関係性の構築”をポリシーとしながら、2024年も新しい取り組みをいくつか進めているところです。

今後サポートの幅を広げていくことはもちろんですが、アスリートの方々と連携させていただくのであれば、金銭的な対価以上のものをご提供したいですし、もっと「アスリート一人ひとりに寄り添った支援」を実現できるのではないかと考えています。

ただ“慈善活動”として終わってしまうとサステナブルではありませんし、取り組みの幅を広げていくこともできません。だからこそTENTIALとしてはアスリートの方と共創しながら、事業としてもしっかりと結果を残し、会社の成長に繋げていくことにも引き続きチャレンジしていきます。

励みになります。