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学費返還運動に思う

あっという間に4月が終わり、5月に入った。
全国の大学では、GWを前に授業を開始していたり、GW後の授業開始に向けて教員が準備をしていたりする。

そんな中、「学費返還運動」なるものが全国300校近くの大学で起きていると言う。
発端は早慶の学生によると言うがその真相は定かではない。
多くの主張は、

・オンライン授業によって授業の質が低下する
・設備費を納入するも大学設備・施設が利用不可

と言ったところだ。

果たして授業開始間もない、または授業が始まっていない段階でこうした声を上げることは賢明な判断と言えるのだろうか。
奨学生、一人暮らしの学生にとって現状は厳しいものであることは理解している。学費はおろか明日や1週間後の生活に不安を抱えている学生が少なからずいるのは事実である。
こうした学生に対する支援は国や地方自治体、大学がしっかりと行う必要がある。
学びを止めないのも大事であるが、「コロナ退学」を起こさないことが高等教育に求められているのではないだろうか。

しかし、そうした社会課題と「学費返還」の動きは切り分けて考える必要がある。


第一に、現在はまだそうした評価を下す段階ではないということだ。
「オンラインだから授業の質が低い」というのは凄く受け身な発言に聞こえる。
あくまでも学びの主体者は学生であり、単なる授業の消費者ではない。
むしろ、時間に余裕が出来た今、学びを加速することが出来るのではないのだろうか。
大学教員を中心にオンライン授業を検討するFacebookのグループでは毎日のようにアイデアやティップスが投稿されている。
突然の状況に戸惑っているのは学生だけではないことが伺える。
教員も対面での授業のクオリティに負けず劣らずのコンテンツ開発に必死だ。
学生だけがこのコロナの被害者ではない。
夏以降、この学期ないしセメスターがどうであったかを踏まえ、秋学期ないしセメスターの学費を減額するなり、一部を返還するという議論をするべきなのではないだろうか。
今はまだ評価を下すフェーズではない。

第二に、本当に声を上げる先は大学なのかという点だ。
学生にとって恐らく一番近い存在なのが大学であろうが、本当にそうした声を上げる先は大学で良いのだろうか。
生活が苦しいという理由ならば、その声を上げる先は大学よりも文部科学省や厚生労働省なのではないだろうか。安倍首相や政府に向けてメッセージを発信し、ムーヴメントを起こすことができれば安保法制の時に勝手に若者の代表を名乗ったシールズを彷彿とさせる現象になるかもしれない。「オンラインデモ」なるものが生まれるのかもしれない。

考えるに、「オンライン授業に通常授業と同等の授業料を払いたくない」、「使わない施設に施設設備料を払いたくない」といった感情がこの学費返還運動を加速させているのではないだろうか。あたかも、自分たちが何者かによって被害を受けたような、被害者面をするが、何も被害を受けたのは学生だけではない。こうした状況を受けてか各大学は全学生に対してICT環境整備を名目に数万円の給付の実施を発表しているが、まだその具体的な給付方法は発表されていないところが多い。

ここでも、一つ疑問がある。
「大学は全ての学生に対して一律で給付すべきか否か」である。
正直に言うと僕自身は現状、ありがたいことにICT環境が整っており大学の支援がなくともオンライン授業を受けることに問題はない。こうした支援が必ずしも必要でない学生の割合は少なくないようにも感じる。
環境が整っておらず、授業が十分に受けることが出来ない学生に優先的に給付するなり、PC等を貸与するなりするべきなのではないだろうか。

コロナ禍で多くの教育課題が初等・中等・高等教育を問わず浮き彫りになった。マンパワーの課題やシステムの課題、その他様々な課題が出てきている。しかし、こうした状況であるからこそ、そうした課題のソリューションを見つけ出していける時期であると僕は考える。もちろん、最前線で先生方が必死に頑張っていることは胸にとどめておいた上で、適宣声を上げればいい。

しかし、忘れていけないのは自分だけが被害者ではないという点だ。9月入学に関しての論考でも書くつもりであるが、高校生にせよ大学生にせよ、あたかも誰かのせいで卒業式や入学式がなくなった、通学出来なくなった、返してといった主張は控えるべきだと思う。「はれのひ」の問題で振り袖が着れなくなったこととはわけが違うということだ。だからこそ、こうした声に対してケアやサポートをする体制が必要だと思う。誰もがみなストレスを感じているだろうが、僕ら若者やそれよりも上の世代に出来ることこそが中高生や小学生のケア・サポートなのではないかと思う。


参考資料
https://mainichi.jp/articles/20200428/k00/00m/040/130000c
https://mainichi.jp/articles/20200429/ddm/005/070/041000c
https://www.u-presscenter.jp/2020/04/post-43533.html
https://www.businessinsider.jp/post-211994
https://www.businessinsider.jp/post-211762
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/04/post-93287_1.php


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