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松山優太
2022年8月22日 15:21
有都は美織の手を握ったまま美織の目をまっすぐに見つめ続ける。静かな展示室に絡繰時計の音だけが響いていた。美織はしばらくの間、目を逸らしたり何かを言いかけてはやめたりを繰り返していたが、ようやく有都の目を見つめ返して微笑んだ。「有都が秘密を教えてくれたから。私も秘密をひとつ教えてあげる。私ね、あの日川に流した短冊に、有都と結ばれますようにって書いてたの」美織は竪琴が展示されているケースを開
2022年8月7日 21:49
激しい雨音と絡繰時計の音が響く二人きりの美術館。絡繰時計が指し示す時刻は午後十一時四十分を回っていた。「私一人をベガミュージアムに呼び出すために、わざわざあんなことを予告状のビデオレターで言ったんでしょう?」 アルトはゆっくりと頷いた。「そうだよ、美織に一目会いたくて、美織にだけ分かるようにああ言ったんだ。願いを川に流した夜って聞いたら、普通の人は、笹流しが行われる七月八日が犯行の日だ