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ユタラボInterview⑥ 宇都 星奈さん

東京の大学に通う宇都さんは、認定NPO法人カタリバにてボランティアスタッフをしている中で、誰かの「やりたい」という思いを応援・サポートすることが好きであることに気付きます。

そんな彼女がこの4月に大学休学、さらには益田での挑戦を選んだ背景にどんな思いがあるのかを聞いてみました。

周囲の期待に応えていた中で、抱えていた不安

――高校時代から大学進学にかけて詳しく教えてください。

負けず嫌いな性格だったので上に行きたいという気持ちが強かったことと、周囲の期待に応えたいという思いで、高校は進学校を選びました。刺激的な環境の中で、計画を立てて勉強するすることを心がけていました。勉強は、努力した分だけ成果が出るのでやりがいを感じていましたね。
 当時は漠然と法律に興味がありましたが、特に将来やりたいことを見つけることはできていなくて。だから、入った後に学部を決められるということと、学校側からの勧めもあって、東京大学を目指すことにしました。現役では合格できず浪人をすることになり、地元の予備校に通いながら勉強に励みました。そして1年後、どうに無事に合格することができ上京しました。
 大学では、サークルやバイト、ゼミなどで、忙しくも充実した日々を送っていました。吹奏楽系のサークルやゼミにおいては、先頭に立って仕事をすることも多かったです。
 ただ、生活は充実していたものの、大学に入ってからあるコンプレックスを感じるようになっていました。それは、周りの友人たちと比べて、わたしには、「これにすごく興味がある」「これに熱中している」といったような、いわば「私といえばこれ!」といえるような好きなもの・興味があるものものがないということです。何かに対する熱い思いがないまま進んでいいんだろうかという不安を抱えながら、漠然と勉強をする日々を送っていました。

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写真:大学でのサークルの様子


カタリバとの出会い

 そんな漠然とした不安を抱えながら過ごしていた大学2年の秋、たまたま大学の先輩の紹介で「カタリバ」という教育系のNPO法人に出会い、ボランティアとして活動を始めました。ただ、もともと教育について学んでいたわけでもなく、特に教育に興味があるわけでもなかったため、最初は正直、なんとなく誘いに乗っただけでした。
 カタリバの中では、出張授業カタリ場や高校生のマイプロジェクトの伴走などを通して、多くの高校生や自分と同じ大学生スタッフと関わるようになりました。
 出張授業カタリ場では、「対話」を大事にしています。高校生は、大学生との対話を通して「自分ってどんな人なのか」「自分はどうありたいのか」を考え、自己内省をし、その中で自分の本当の想いに触れていきます。そうした活動に関わる中で、わたし自身も深く自己内省をするようになりました。その中でわたしは、「自分はこれまで何も自分自身で選んでこなかった」ということを痛感したんです。
 周りから言われるまま、勧められた通りにしていれば大丈夫だと思っていたし、期待に応えたいという気持ちが強かった。けれど、その気持ちが強すぎて、「自分自身は本当はどうしたいのか」という素直な気持ちに目を向けることができていませんでした。だから、カタリバで大学生スタッフと一緒にプロジェクトを進める中でも、私はどうしても「何が自分に求められているんだろう?」ということを考えてしまっていました。けれどそんなわたしに対して、周りの大学生スタッフたちは「こうしてほしい」と教えてくれるのではなく「あなたはどうしたいの?」というわたしの本音に丁寧に丁寧に耳を傾けてくれたんです。
 そういう関わり方を通して、周りが求めているような”正解”に沿うだけではなく、自分で選んでいくことや自分で決めていくことが少しずつできるようになりました。それと同時に、そんな自分でありたいと強く思えるようになりました。

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写真:出張授業カタリ場で紙芝居をする様子


 先ほども言ったように、自分には何かに熱中するということがあまりなかったんです。だから、マイプロをやっている高校生やカタリ場プログラムで出会う高校生が目を輝かせながら自分の好きなものや目標について話している姿を見て、いつも漠然と「うらやましい」と感じていました。
 けれど、カタリバのボランティアを1年半くらいやっている中であることに気づいたんです。それは、カタリバでの活動が、いつのまにか、夢中になれる好きなものになっていたということです。

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写真:マイプロで伴走した高校生と


 今までやってきたことは、周りを気にして「こうするべき/こうあるべき」で動いてきた部分が多くありました。だけど、カタリバの場合は、はじめて「気づいたら楽しくなって続けていたこと」だったんです。そしてこの活動を通じて、わたし自身はやりたいことがどんどん出てくる性格ではないけれど、わたしは、やりたいことのある人を応援することや、漠然としたやりたいという思いを持っている人の伴走をしたりすることが好きなんだ、と気づいて。そんな「好き」という気持ちには自信を持てるようになりました。

 自分の好きな気持ちに自信が持てるようになってからは、今からでも遅くはないから挑戦したいという想いが芽生えるようになりました。はじめて、やりたい!と思えること・好きなことが見つかったんだから、それを大事にして何か新しいことに挑戦してみたいという気持ちになったんです。今までは、言われる通り、進められる通りにレールに沿ってきたけれど、ここからは自分の人生を自分でつくっていくという意識のもとで何かに取り組みたいと思うようになっていました。

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写真:益田高校でのカタリ場の様子


益田との出会い

――なるほど。自分の人生を自分でつくるという言葉が身に沁みます。宇都さんが益田と出会うきっかけは何だったのでしょうか?

 昨年の11月に開催された、益田高校でのカタリ場に参加したことです。カタリバがもともと益田に入っていたので、ちょっと興味があってのぞいてみようという感じだったんですが、益田で強く感じたのは益田の人たちがすごくいきいきと暮らしているなということでした。
 仕事や家庭以外の居場所を持っている人が多かったり、地域に飛び出して何かをやっている子どもや大人がいたり。自分のやりたいことを形にして実行している人がいて、しかもそれをサポートする体制が整っている。頑張りたいという想いをもっている人をみんなが応援している環境があるということに感動しました。

ユタラボと自分がやりたいことが重なった

――共感できるところが多くありました。初めて益田を訪れてからユタラボでインターンするまでを教えていただけますか?

檜垣さんからインターンのお誘いをもらって、
①自分が新しいことにチャレンジしてみたいと思っていたタイミングと重なったこと
②益田の暮らしぶりに惹かれたこと
③ユタラボがやろうとしていることと、自分がやりたいこと/自分がカタリバを通して好きだなと気づいたことが重なっていたこと

 この3つが大きかったです。
 自分なりの幸せを信じながら、人との繋がりのあたたかさの中で暮らしていく。そんな自分の目指したいものがここでなら実現できるかもしれないと思いました。

――宇都さんにとっての幸せは具体的にどんなものや瞬間ですか?

 以前のわたしは、いい大学や企業に入って…というのが幸せになるためには必要なのかと思っていた部分は少なからずありました。なんとなく決まっているレールや一般的に”正解”と言われるものって、やっぱりあると思うんです。以前の私は、そのレールにのっていれば幸せになれると思っていて、自分の人生に対してすごく受け身だったんです。でもそうではなくて、自分の「幸せを感じるもの」と「やってみたいこと」を大切にして、自分の選択に納得感を持てている状態が「わたしなりの幸せを信じている」ということなのではないかと思っています。

――譲れない部分は?

 生き方として大事にしているのは、自分の中でこれだ!と思えるものを自分の責任で選ぶということと、やらない言い訳をしないということです。
これをやりたい!とびびっとくる瞬間があっても、自信がなくて進むことをためらってしまうことがよくあるので、そういうときに「やらない言い訳をしない」ということを意識しています。

――最後に、益田でトライしたいこととユタラボでトライしたいことを教えてください。

 今までは、高校生のライフキャリア教育に関わっていましたが、益田ではあらゆる世代のサポートができます。「豊かな暮らし」を掲げているユタラボだからこそ、いろいろな世代が思う「豊かな暮らし」を実現できるようサポートすることに力を注ぎたいと思っています。
 私自身、何かやりたいという気持ちはあるけれど、口に出したり実際に動いてみたりするというのは苦手なので、同じ境遇の人に寄り添い、一緒に考えるというところから始めたいなと思います。
 やりたいという想いでどんどん進められる人もすごくすてきだけど、そうではない人にも寄り添えるのがわたしの強みなのではないかと思っています。 

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宇都 星奈|Seina Uto 
一般社団法人豊かな暮らしラボラトリー 大学生インターン
鹿児島県出身 東京大学法学部学生(現在休学中) 2018年から2019年まで
「認定NPO法人カタリバ」で大学生 ボランティアとして活動。2020年より現職。「働きやすい環境づくり」や「納得感のあるキャリア選択」といった、労働問題や人材育成に関心を持って活動している。NPOカタリバでは高校生に対する日常生活から進路までの相談活動を行い、ユタラボでは対象を大人まで拡げて社会教育活動の充実を進めている。

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