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平塚市 龍城ヶ丘 都市公園整備計画への見直しの声、一万筆を超えて増えつづける署名・・「プール跡地だけの整備を。樹林帯は切らないで!」

3月28日71歳にて永眠されました坂本龍一さんのご冥福をお祈りします

安全性は何よりも優先される。
津波や飛砂から いのちと暮らしを守るため、先人たちは海岸に樹を植えた。
90余年の時を経て、それは豊かなみどりと 海を育てる大地を育んだ。
海岸林は、砂防林として機能し、塩・砂・風から暮らしを守る。
海岸林は、津波の水流を邪魔して速度を落とさせ、避難時間を確保させる。
国は、国土強靭化基本計画を策定し海岸林を整備育成する方針とした。
しかし平塚市は、海岸林には津波災害への抵抗力はないと評した。

平塚海岸 龍城ヶ丘エリアに、廃止されたプール跡地がある。
平塚市はプール跡地の整備に乗じ、隣接する海岸林を広範囲に切ると発表。
現地の海岸林は、平地の駐車場と都市公園になろうとしている。
住民安全を軽視した平塚市の判断に、地元は強く不信感をもった。
平塚市は、地元の住民合意がないまま、国交省に提出した官民連携事業手法検討報告書に「海岸エリアの公園整備の方向性について、地元に説明し、了解を取得」と書いた。
地元の花水地区自治会連絡協議会(花自連)は、これを承認した覚えはないとして2018年10月に平塚市に正式に抗議文を提出。
平塚市の不誠実さは、市政への不信感と大きな議論を生み出した。
警察は、安全面の不備、住民合意の無い点を指摘し、計画を延期させた。
平塚市の「住民対話」では、市に「賛成の意見」は重点的に拾い上げられ、問題点を突く「見直しを求める意見」は無視された。
海岸林は、いのちを守り、いのちを繋いでいる。
「プール跡地だけの整備としてほしい、海岸林を切らないでほしい」と住民は望み、署名は一万筆を超えた。

現地の海岸林は神奈川県の管理下となっている。
住民は神奈川県へ現地の保安林指定を求めたが、却下された。
理由は、現状で十分良好に管理されており問題が発生していないためとされる。
神奈川県は、平塚市が現地を大規模伐採をする「未来」が来ることを知りながら、「現在」に問題ないとして先手を読んだ対応をしないとする判断を下した。

専門家も見解を述べている。
神奈川県の海岸林の育成に大きく貢献した藤原一繪 氏(横浜国立大学名誉教授)は、平塚市にも神奈川県にも、計画の見直しを訴えている。
長く飛砂防止の研究に携わった鈴木清 氏(神奈川県元森林研究所 元研究部長)は、海岸林が伐採される地元住民安全への実害のみならず、日本で有名な「湘南海岸」からこの事例が発信されることによる全国的な海岸林開発への波及を強く懸念している。
国際的にもTSUNAMIの被害とその防御の必要性は今日、認識が高くなっている。

海岸地域だけの問題でも、平塚市だけの問題でもない。
平塚から、ひいては神奈川県から、悪い事例を世界に発信することになる日が迫ってきている。
より高い安全性の視座から、この問題の本質を見抜けるか。
とめるなら、いましかない。

2023年2月
豊かな海と暮らす平塚市民の会

砂に埋もれた廃墟、海岸プール跡地・・・住民は再整備を望んだ

神奈川県平塚市。海岸と国道134号線の狭間、龍城ヶ丘の一角。
かつてそこにはプールがあり、市民が集った。
昭和12年設立のその龍城ヶ丘プールは、平成25年、老朽化による膨大な修繕コストを理由に廃止が決定された。

2013年に廃止された龍城ヶ丘プール跡地(2023年2月撮影)

砂に埋もれゆく廃墟と化したプール跡地を見つめて、住民は思った。
このプール跡地は再整備されるべきなんじゃないか。
平塚市も当然そのように考えた。
プール跡地の窪んだ地形を活用したスケートボード練習場など、現地の区画内で実現可能ないくつかのアイディアが、パブコメを通じ市民から提示された。
しかし平塚市は平成29年、現地の三倍以上の面積を開発・整備する計画を発表した。その候補予定地にはプール跡地のみならず、隣接する海岸樹林帯が含まれていた。
プール跡地整備計画の発表を遡ること数か月前、平塚市は、Park-PFI制度を盛り込んだ都市公園条例の一部改正案まで可決させている。
Park-PFI制度についてはこちら
地元住民はどよめいた。
プール跡地に隣接する海岸の樹林帯は、津波や飛砂から住民のいのちと暮らしを守る「砦」の役割を果たしている。
その海岸林を切るなんて、住民は提案も了承もしていない。

プール跡地に隣接する海岸樹林帯は、湘南海岸に強く吹き付ける相模湾からの風を遮り街を守る

豊かな海と暮らす平塚市民の会

平塚市の計画の進め方に対し疑問をもった地元住民はひとりまたひとりと立ち上がっていった。「海岸樹林帯を守ろう」と思いを等しくする者たちが自発的に集まり、自然環境を考え、暮らしを考え、海を大切にする自分たちの基本的な願いに到達する。自ずといくつもの市民団体が結成され、それらは同じ目標を掲げ、当然のように足並みを揃えていった。「豊かな海と暮らす平塚市民の会」もその一つである。

豊かな海と暮らす平塚市民の会 Facebookページ


自然災害から暮らしを守る海岸林の保全を訴える

湘南海岸一帯に広がる海岸林の植樹事業には、過去およそ100年が費やされてきた。それは昭和3年(1928年)の昭和天皇による植樹を起点とする「魚つき林」としての大地と海の肥沃化の機能に始まる。
以降、生態系としての豊かさ、東日本大震災で証明された津波被害減災効果に至るまで、海岸林は多彩な役割を日々無言で担い続けている。市民団体らはその歴史を学び、理解し、尊重し、国土強靭化基本計画に紐づけられたグリーンインフラとしての海岸林を平塚市による開発から守ることを目標に掲げた。平塚市に対しプール跡地整備のみを実現するよう働きかけ、同時に、市民に向けてその協力が不可避であることも訴え続けている。

地球規模でSDGs、ESGへの取り組みが社会的課題となっている昨今、平塚市の公園整備の在り方を問う。

SDGs:
持続可能な開発目標。世界の種々の問題を根本解決するための目標17つ
ESG:
長期的に成長し続けるため、事業リスクや事業機会を長期的に把握しなくてはいけないという3つの観点の考え方。
Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)

Park-PFI制度を利用するために海岸林の敷地が開発エリアに組み込まれた

平塚市は、Park-PFI制度を利用するため、一定以上の開発面積を必要とした(20,000m2以上、計画案公開当時)。
それには龍城ヶ丘プール跡地の7,000m2ではまったく足りていない。
そこで、プール跡地に隣接する樹林帯を含めて駐車場としての開発を付随させた。これによりPark-PFI制度の面積条件をクリアできる。

住民は、プール跡地だけの整備を求めている。
海岸林の伐採を求めてはいない。よって、地元住民は合意などしていない。
しかし、Park-PFI制度の利用を進めるために、平塚市による「住民対話」は一方的、隠蔽的に進められた。住民の合意を得る過程の不誠実さに、地元自治会は正式に抗議文を提出している。

市民団体らは市の手順の不透明さや安全面での不備を次々と暴き、Park-PFI制度利用の妥当性の無さ、利益相反の疑いまで含めた問題点を紐解いていく。この現状は、日弁連をして「市と市民に損害を与えることになり、市民は訴訟をすれば勝つことができる」とまで言わしめた。
この事実を、平塚市民は受容できるのであろうか。

隠された余波に気がつくことができるか

海岸林の開発によって呼び込まれる余波は、いくつかある。
海岸林の開発では現地の窪地を埋め立てるため、残土受け入れ課題として、有害物質を含む残土を視野に入れなければならない。ひとたび有害物質が持ち込まれれば、豊かな海は、一気に汚染の海へ変わり果てる。
平塚の海岸林の次に平塚市が狙っているものは、湘南平である。
さらには平塚総合公園が待っている。


プール跡地整備計画は2回の着工延期を判断

ひらつか海岸新聞 第7号
整備計画は2度も延期されるほど不完全なものであった

平塚市の整備計画は、令和3年12月及び令和4年6月の2度にわたりその着工が延期された。安全面での事前確認やそのための準備期間設定が不完全なものであったことによる。国道134号線との連結と交通の危険性を指摘されるなど、初期段階でクリアすべきであった安全性の課題について、議論が不十分なまま進められていた事実が明らかとなった。
これにより、計画の請負い先の積水ハウスと平塚市との連携の浅さや、周辺地域への安全面での配慮不足が露呈した。
安全性を軽視されたと知った住民の不安は一気に市への不信感と変わった。

地元6自治会主催の住民説明会の実施(2022年11月)

地元自治会会長らは平塚市に対し、樹林帯の伐採をやめプール跡地のみの再整備とする計画の見直しを求めた。中でも、市民団体らの活動に賛同した平塚市南側エリア6自治会は、2022年11月に自治会主催による地元住民を対象とした住民説明会を開催し、樹林帯の機能と大切さ、望まれる整備対象は龍城ヶ丘プール跡地のみであることを再度確認し、その立場を明確にした。この住民説明会の開催に際し、主催者らは落合克宏平塚市長に郵送により出席を依頼したが、落合氏は調整がつかず欠席と回答した。

海岸林の防災機能・砂防林機能は現状で最良

地震による津波や台風等による高潮に対して、海岸林は防護柵の役割を果たす。
とくにいのちに関わる津波災害に対し、東日本大震災による津波の襲来を捉えた映像に海岸林の役割を明確に記録されている(千葉県、山武市)。
津波到達の際、海岸林にはところどころに海へ抜ける道路として切れ目があった。津波はこの切れ目から直線的に内陸へ侵入した。その一方で、海岸林に入り込んだ海水の浸水速度は明らかに低下した。海岸林が後背地の住民の避難時間の確保に相当量の有用性をもっていることが確認できる映像である。

(182) 海岸の樹林帯が津波を減災する効果があることの証明 - YouTube
出典: 小林陽一(龍城ケ丘樹林帯をきれいにする会 代表)

風環境の維持にも、海岸林は重要な役割を果たす。
湘南海岸には、相模湾から南西風が強く吹き付け塩と砂を後背地へ運びこむ。その風は海岸林とぶつかることで風速は低下し、巻き上げられた砂や塩は樹林内に落下し、飛来量を減じさせられる。
市民団体らによる飛来塩分及び風速調査における実測値によって、この事実は確認されている。

海岸林が伐採されれば、津波や飛砂に抵抗する機能は消滅し、後背地の住宅に大きく影響が出ることは、常識的に考えて疑いの余地がない。
平塚市は、「樹林帯の一部が残されていれば塩害は現状と変わらない」との主張を繰り返すが、その判断に資する情報・資料は開示されていない。

計画見直しを求める署名、一万筆を超える

「平塚海岸の樹林帯を切らないでください」

「自治基本条例に則った平塚市のまちづくりを求める平塚市民の会」(住所:平塚市 東真土)は、落合克宏平塚市長に対し、これまでに海岸樹林帯の伐採をやめるよう複数回にわたり署名を提出した。2023年3月現在、その数は一万筆を超え、勢いはさらに増し県外にも波及している。

市民団体らは、平塚市に対し、海岸林保全の意向を種々の方面より訴え続けている。また、地域に対しても、計画への正しい解釈と海岸林保全への理解を求める認知拡大に継続して取り組んでいる。

整備計画の進め方の妥当性を市政関係者に聞く

2023年1~2月、「豊かな海と暮らす平塚市民の会」と他4団体は、平塚市の市政関係者及び地方統一選挙立候補者に対し、公開アンケートを実施した。開発の進め方についての意見交換や対話等に資する参考情報を広く市民へ提供するために、この結果を活用することは有用であり、本計画の推進について前向きな議論が可能になることが期待されている。
平塚市政の在り方が、注目度を増している。

龍城ヶ丘プール跡地の整備に関する公開アンケート実施報告 詳細版

(動画 3:36)公開アンケート結果を解析しました ダイジェスト版

ご支援のお願い


わたしたちにできるアクションがあります

市民一人一人が、それぞれの視点と意見をもつことだろう。
自分の意見・考えを、市政に投げかける仕組みがある。
活用してみてはいかがだろうか。

関連記事 : 平塚市民にできること



プール跡地だけの整備・整美を望みます。樹林帯は切らないで!

お読みいただきありがとうございます。

「龍城ヶ丘プール跡地」だけを整備・整美する。
これを可能にするため、わたくしたちは平塚市と共に創造する方向性を求めて、平塚海岸の樹林帯を伐採しない公園整備の在り方を尊重していきます。

美しい海岸と湘南の風との共存を可能にする平塚海岸の樹林帯

地元住民が望む「こうあってほしいな」というプール跡地整備・整美への想いが、どうか平塚市政へ伝わりますように。
そのために、市民一人一人ができるアクションがあります。


 

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