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【AISTS #26】 21週目 紛争解決/リーダーシップの講義と新型コロナの影響 (2020/3/9-15)

今週は、前半が法律の分野で紛争解決 Settlement of Conflict in Sport の講義、後半は Leadership Development の講義でした。
スイスでも新型コロナウイルスの感染が広がっており、休校や営業制限の措置が金曜日に発表されました。
AISTSの教室が入っているローザンヌ大学は4月末まで原則入構禁止となり、3月16日からの講義はオンラインとなります。


紛争解決 Settlement of Conflict in Sport

裁判手続き外での紛争解決の手段は大きく2つ、Mediation(調停)とArbitration(仲裁)が挙げられます。
第三者が介入することは共通していますが、Mediationでは調停人はあくまで協議を手助けし決定するのは当事者である一方、Arbitrationでは仲裁人が強制力を持つ決定を下します。

スポーツで仲裁というと、CAS(スポーツ仲裁裁判所)が連想されますが、時間やコストがかかることから、CASに持ち込むのは最終手段に近い位置づけとなっているようです。

また、スポーツの世界においては、事業に関する問題と競技に関する問題を明確に分けて認識し、対応する必要があります。
法律に基づく処罰の対象となるものか、その競技のルールの中で出場停止などの処分で足りるものか、あるいはその両方か。更には、競技のルールといっても国際/国内/リーグ/クラブなどの適切なレベルでの対応が求められます。

スポーツにおける紛争でよく論点になるのは、以下の3点です。

・法律的な手続きの不明瞭さ(どこに持ち込むべきか、どの法律が適用されるか)
・個人の権利と制限(リーグやクラブがどこまで制限できるか)
・独占禁止法(独占的な立場である連盟やリーグによる統制はどこまで認められるか)

一口にスポーツと言っても、競技によって商業化や国際化のレベルが大きく異なるので、統一のルールを整備することは難しいと思います。
とはいえ、スポーツ特有の論点は多いのも事実であり、そこに精通した機関/専門家が必要であることは間違いありません。

CASの前段階として比較的簡単に低コストで調停を依頼できるような機関があるといいのかもしれません。
国レベルでは整備が進んでいる国もありますが、国をまたいだ問題が増えていくことは目に見えています。

参考:日本スポーツ仲裁機構


リーダーシップ Leadership Development

マネジメントのモジュールの一環で、リーダーシップについての講義を受けました。
リーダーシップは生まれつきのものか、訓練で身につくものか、という問いから始まり、リーダーシップに関する理論と事例を学びました。

リーダーシップの形態は大きく4つに分類されます。

- Transactional leadership
 具体的な取引(アメとムチ)でコントロール
- Instrumental leadership
 環境の整備とモニタリング/フィードバック
- Transformational leadership
 個人の自律や知性的な動機づけを重視、ロールモデルの提示
- Charismatic leadership
 強力なビジョンとシンボル化

中でも、カリスマ型リーダーシップについて多くの時間が割かれました。
近年提唱されている代表的なカリスマの定義は、

“values-based, symbolic, and emotion-laden leader signal” (Antonakis et al. 2016)

価値観の共有感情への働きかけが不可欠です。
実務としては、Substance(内容)、Frame(枠組み)、Deliver(伝え方)の3つがポイントとなります。
具体的には、

・Substance(内容):信念、チームスピリット、野心的な目標と自信
・Frame(枠組み):比喩、コントラスト、レトリック、繰り返し
・Deliver(伝え方)
:声色、表情、ボディーランゲージ

これらをふんだんに盛り込んだスピーチの代表例として紹介されたのがこちら。フィクションですが、分かりやすいです。

ちなみに、カリスマ型のリーダーとして例示されたのはこの6人でした。

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新型コロナウイルスの影響

ローザンヌが属する Vaud ヴォー州は、スイスの中でも感染者数が多く、比較的厳しい制限が課されています。

ヴォー州政府は,新たに以下の措置(抜粋)を発表しました。
(1)教育関係
・現在から4月30日まで,全ての教育機関で遠隔授業が行われる。
・医療関係者等の場合には,各義務教育機関に7時から18時30分まで子供を預けることができる。
・学童は維持される。
(2)イベント
 50人以上のイベントを禁止する。
(3)その他
 娯楽施設(映画館,劇場,美術館,青少年センター,スポーツセンター,ジム,プール,福祉センター,ディスコ,ピアノバー等)を閉鎖する。
(2020年3月13日 在ジュネーブ領事事務所のメールより抜粋)

この措置に従い、AISTSでも3月16日からの講義をオンライン(Microsoft Teams)で実施することとなっています。

講義はある程度オンラインで代替可能ですが、プロジェクトで予定していたインタビューや就職関連の活動はより大きな影響を受けそうです。
物理的にここにいることが一つの大きなメリットなので、活動できない期間が長くなり卒業までの時間的な猶予が短くなること、更には、会社/組織側の採用意欲や体力が低下することも懸念されます。

自分でコントロールできないことに頭を悩ませていても仕方がないので、短期的には時間に余裕ができることを前向きに捉えて、自分のやりたいこと/できることを見つめ直し、履歴書などの素材の作り込み、英語力の向上などに充てようと思います。


課外活動 ― CrossFit 体験

チームビルディングの一環で、チームプロジェクトのメンバーでCrossFitの体験をしてきました。
CrossFit クロスフィットとは、日常生活における動作のパフォーマンスと全身の機能向上を目的としたファンクショナルトレーニングを、ボックスと呼ばれるジムに集まり、インストラクターの指導のもと高強度で行うプログラムです。

僕はこちらに来るまで知りませんでしたが、北米や西欧ではかなり流行っていて認知度は高いです。
日本でも、東京を中心にボックスが増えてきているようですね。

思っていた以上に筋力が衰えていることを目の当たりにして悔しかったので、走るだけでなく筋トレも続けていこうと思います。

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来週の予定

冒頭に書いた通り、講義や打ち合わせは全てオンラインとなります。
社会学の講義の3週目、Sport and Globalization がテーマです。
旅行できる状況でもないので、いい機会と思って座学に勤しみます。


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