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【AISTS #35】 30週目 外出自粛10週目/サッカークラブの財務分析とチーム合宿 (2020/5/18-24)

スイスではロックダウンが段階的に緩和されていますが、新型コロナウイルスの新規感染者数は引き続き落ち着いています。
今のところ、6月8日の第3弾のタイミングで5人超の集まり禁止も解かれる予定で、AISTSも教室での講義を再開予定です。

前半は先週に引き続き Business of Football の講義を受け、水曜日に締めくくりのグループプレゼン。
祝日の木曜日を挟んで、金曜日夕方からは、スイス人のクラスメートの実家にお邪魔して、半年以上かけて取り組んできているチームプロジェクト総仕上げの合宿をしてきました。

Business of Football の講義

先々週先週に引き続きの講義です。
今週のトピックは、

- Wage costs and the players' labor market
- Analyzing financial performance
- Valuing future performance
- Leagues and competitive balance

サッカークラブでは選手に関する費用が大きく、年俸と移籍金償却が大部分を占めます。
選手獲得の際に支払う移籍金は契約期間で償却されます。

そこで、重要視される特有の指標として、獲得勝ち点に対する選手年俸(Wage cost per Point)があります。

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(Dr Bill Gerrard 講義資料より抜粋)

チャンピオンズリーグへの出場有無がコスト構造に大きな影響を与えるので、この表では非出場クラブのみで比較しています。
獲得勝ち点あたりいくらの年俸を払っているか、という指標で、より低い年俸で多くの勝ち点を獲得すると数値が小さくなり、効率が良いということになります。

もう一つ、新たに学んだのがこちら。選手の移籍に関連する利益率です。

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(Dr Bill Gerrard 講義資料より抜粋)

全体の利益を営業、資産、選手移籍の3つの切り分けて考えます。
選手移籍に関する利益は、

移籍金収入 − (移籍関連費用(エージェント等)+ 移籍金償却)

で計算されます。
移籍金の収入は選手売却時に一括で売上計上、一方で選手獲得に支払う移籍金は契約期間にわたって償却するので、時期的なずれは発生しますが、クラブが全体として選手を買っているのか売っているのかを表します。
この指標がプラスだと、選手の売却で利益を得ていることになります。

講義の締めくくりは、競争均衡(Competitive Balance)でした。
スポーツの面白さは、競争均衡とそれによってもたらされる結果の不確実性と深い関係にあります。
均衡を保つ要素は、

- Win dispersion(勝利の分散)
- Performance persistence(パフォーマンスの継続)
- Prize concentration(タイトルの集中)

サラリーキャップやドラフトなどの手法についての解説もありながら、結論としては、背景にある文化とファンが何を求めているかを理解して、制度設計をすることが重要というお話しでした。

グループプレゼン

僕らのグループが選んだのはユベントス。プレゼンに盛り込むポイントは以下の通りです。

1. ビジネスモデル、外部環境(5フォース分析)、内部環境(SWOT分析)
2. 損益計算書(収益源、コスト構造、今後の見通し)
3. 貸借対照表(主な資産/負債、資金調達方法、株主構成)
4. 株式価値算定(複数の手法での算定、投資是非の判断)

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(プレゼン資料より抜粋)

ユベントスは、セリエA 7位でチャンピオンズリーグに出場できなかった2010/11シーズンから持ち直した後、セリエA記録となる8連覇中です。
戦力均衡の観点でいうと、魅力的なリーグとは言えませんね。
リーグとしてはイングランドプレミアリーグに大きく水を開けられ、財務面では放映権収入に大きな差が生まれています。

ここ数年はクリスティアーノ・ロナウドを始めとする選手への投資にお金をかけていて、売上は伸びているものの、直近2年間は最終赤字となっています。
€600Mの売上に対して、選手年俸が48%、移籍金の償却を含めると70%を超えます。

結果として、2019年6月末時点の貸借対照表の純資産は€31M、自己資本比率はわずか3%です。
2018/19シーズンの最終赤字は€40Mだったので、今シーズンも同じ額の赤字が発生すると債務超過になってしまいます。
大財閥のアニェッリ一族が支えているので財政破綻は考えにくいですが、客観的には厳しい状況と言わざるを得ません(2019年12月に増資が完了しました)。

一方で、株価はここ数年で急騰しており、マルチプル、DCFで評価する株式価値は市場価格に届きませんでした。
比較対象とした上場しているクラブは、マンチェスター・ユナイテッド、ドルトムント、リヨン、アヤックス、ローマ、セルティック。
各種指標はマンチェスター・ユナイテッドが圧倒的に高く、リーグとしての基盤はあるものの、サッカークラブがより高く評価される可能性があるとも言えます。

とはいえ、客観的な財務分析(2019年6月末時点)に基づく判断としては「投資すべきではない」という結論でプレゼンしました。
なんとなくの印象で見ることの多いサッカークラブですが、財務諸表をじっくり見てみるのは面白かったです。
ユベントスがこれからどのように財務体質を立て直していくのか、楽しみです。

チームプロジェクト合宿

半年以上かけて取り組んできているチームプロジェクトも、終盤に差し掛かってきました。
6月1日にレポート提出、6月29日に最終プレゼンです。

カナダとフランスに帰国していたチームメイトがスイスに戻ってきて、5人までの集まりはOK、公共交通機関もほぼ通常ダイヤ、ということで、スイス人のチームメイトの実家にお邪魔して最後の追い込みをしてきました。

ルツェルンの湖沿いの斜面に立つおしゃれな家で、テラスからはこの景色です。最高でした。

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金曜日の夕方に車で移動して、その日はゆっくり。
土曜日の朝からレポート執筆に勤しみました。夕飯でのお酒もちょっと抑えて、ああでもないこうでもないと話しながら日付が変わるまで。
学生時代の合宿みたいで懐かしい気分になりました。

日曜日は少しゆっくりするつもりでしたが、やり始めると議論することはどんどん出てくるもので、なんだかんだで真面目な4人はこの日も夜までやりました。
帰りは電車で2時間強、ローザンヌに帰ってきたのは23時過ぎでした。

家庭料理でおもてなしいただき、ご両親にも大変お世話になりました。
スイスの中でもドイツ語圏なので、シュニッツェルやじゃがいもなど、ドイツ風の料理が多かったです。

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レポートの進捗ももちろんですが、地場の生活に触れ、チームメイトと語らった、濃密な週末でした。
あと一息、頑張ります。

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来週の予定

最後のモジュールである Medicine の講義が始まります。
チームプロジェクトのレポートを早めに仕上げて、余裕を持った週末を迎えたいです。


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