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【AISTS #20】 15週目 スポーツインフラ ― IOCと新国立競技場 (2020/1/27-2/2)

今週はスポーツインフラの講義が中心でした。新国立競技場の件もあり、イメージのしやすい話が多くて面白かったです。

週末はこちらに来て初めてスキーに行ってきました。天気はいまいちでしたが、クラスメイトとスイスの雪山を楽しんできました。

スポーツインフラの講義

各トピックについて、外部からの講師を迎えての講義でした。今回はなかなか充実の講師陣でした。トピックと講師の所属は以下の通り。

1. Introduction to Architecture and the design process (IOC)
2. The changing needs of the invisible architecture (IOC)
3. Venue planning for the Olympic Games (Paris 2024, IOC)
4. Temporary Infrastructure (qiip)
5. Legacy and impact of the Sport Infrastructure Technologies (Populous)
6. Technology and future sports infrastructure / architecture (IOC)

スタジアムのような大規模施設の建設においては、プロジェクトマネジメントが85%、設計が15%くらいで、マネージャーに求められるスキルはcoordination, alignment, communicationという話から始まりました。
利害関係者が多く、これはスポーツや海外に限った話ではないですね。

"invisible architecture" とは観客から見えない施設のことで、運営スタッフの控室から記者会見場などのメディア関連まで様々。オペレーションでは "Back of House (BoH)" と呼ばれます。

qiipは10人に満たない会社ですが、世界的なスポーツ大会の仮設会場の建設に数多く関わっており、オリンピック招致においても重要な役割を担っています。
恒久施設の負の遺産を作らないよう、仮設会場の重要性が増す中で、経験と専門性を持つ少数精鋭部隊でユニークなポジショニングをしている面白い会社です。

Populousは業界では有名な大手設計会社で、2012年ロンドンオリンピックのメイン会場を設計し、ザハ案が選ばれた新国立競技場の最初のデザインコンクールにも応募して優秀賞を受賞しています。
採用はされなかったものの、東京オリンピックには会場アドバイザーとして関与しています。


講義の内容や就職に向けた活動について、より踏み込んだ内容を発信/議論させていただこうと、Team Marketing の岡部さんが主宰するLYDオンラインサロンの中で分科会を立ち上げてみました。
もちろんオンラインサロンでは、他にもいろいろな企画が動いています。ご興味のある方は覗いてみてください。


IOCと新国立競技場

今週の講義を通して、IOCの競技会場担当者目線での新国立競技場の見方を聞けたので、整理してみます(あくまで、一担当者からの話を受けた個人的な考えとしてご認識ください)。
総評としては "it could be better, but it is definitely better than the initial plan" とのことでした。

まずは時系列で事実関係の確認から。

2012年11月15日 ザハ案がデザインコンクールの最優秀賞に決定
2013年1月7日 立候補ファイルをIOCに提出
2013年9月7日 東京が2020年夏季オリンピックの開催地に決定
2015年7月17日 安倍首相がザハ案に基づく計画の白紙化を発表
2015年12月22日 最終案(A案)に優先交渉権者が決定
2016年12月11日 着工
2019年11月30日 竣工
(参照:Wikipedia)

最終版の立候補ファイル(競技及び会場)を提出する前にデザインコンクールは終わっており、ザハ案のデザイン、1,300億円の予算で記載されています。
そもそもオリンピックのためだけに計画されたものではないですし、IOCとしては、計画から大きく外れずに間に合ってくれればいいというのが基本スタンスと感じました。

計画変更や建築資材/人件費の高騰を受けて、建設費が当初計画から増えるのはよくあることで、ある程度は仕方ないものと認識しているようでした。増加することでIOCの負担が増えるわけではないですし。
とはいえ、倍以上となる3,000億円超えの試算にはさすがに懸念があったようで、ザハ案の却下は "brave decision" との評でした。

大会後の活用については、たしかに具体的な計画は出てきてないけどそれほど心配はしていない、とのこと。
こちらについても、(実際そうなのですが)IOCの責任範囲外というニュアンスが感じられました。

2012年ロンドンオリンピックのメインスタジアムであるロンドンスタジアムも、サッカークラブ(ウエストハム)のホームスタジアムとして活用されていて転用の事例として紹介されることが多いですが、改修費は当初計画よりも大幅に増加し、一クラブのホームスタジアムに多額の公的資金が注がれたとする批判が多くあります。
昨年訪問した時の記事はこちら。

ただ、IOCとしても、2004年アテネ大会後あたりから負の遺産に対する危機感は大きく、2024年パリと2028年ロサンゼルスはほぼ新設無しの見込みです。
結果として大都市でしか開催できないというジレンマに陥っていますが、New Normという方針を掲げて変わろうとしています。

少し話はそれますが、インフラの観点からも、オリンピックでのサッカー競技はトレンドに沿っていないと言えると思います。
ワールドカップの価値を保ちたいFIFAと、注目と多くの観客を集められるサッカーを競技に入れたいIOCの妥協案で年齢制限を付けて実施していますが、開催"都市" 以外にもインフラ(競技会場、宿泊施設、交通機関)が必要となります。

ユースオリンピックでは、2018年ブエノスアイレス大会から、サッカーの代わりにフットサルが採用されました。
フットサルへの変更は、参加選手の人数とインフラの新設を抑える方向性にフィットしています。
また先日、スペインサッカー協会が、オリンピック採用に向けた活動を加速する方針を発表しました。今後の動きが楽しみです。


課外活動

木曜日は、久しぶりのご当地ディナー、スペイン&メキシコ&アルゼンチンでした。
本場のいいテキーラは美味しかったです。アルゼンチンのフェルネットというお酒は薬みたいな味がして口に合わず。

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週末はこちらに来て初めてスキーに行ってきました。学生時代以来、10年以上ぶりですね。
Les Diablerets というスキーリゾート、ローザンヌから電車で2時間くらいです。天気はいまいちでしたが、みんなで身体を動かしてビール飲んで、楽しかったです。今日は全身筋肉痛です。

来週の予定

スポーツにおけるICTの講義と、金曜日には先週からの3週間で準備しているグループワークのプレゼンがあります。

週末はまだ考え中。春夏に行きたいところはたくさんあるのですが、この時期がいい旅先がなかなか見つからず。おすすめあれば教えてください。

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