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【AISTS #37】 32週目 外出自粛12週目/Medicineの講義と就職活動 (2020/6/1-7)

スイスでは、6月6日にさらなるロックダウンの緩和があり、日常生活においてはほとんど制限がなくなりました
トップ画像はその前日の6月5日の様子で、バーやレストランではアクリル板の仕切りはあるものの、密な環境を気にしている人はほとんどいないような状況でした。

AISTSでも、いよいよ6月8日から教室での講義が再開されます。
自国に戻っているクラスメートもいるので全員は揃いませんが、講義は6月いっぱいなので、最後にまたみんなで集まれる状況になってよかったです。
オンラインでの配信も並行して継続されます。

月曜日は聖霊降臨祭でお休み、火曜日からは先週に引き続きMedicineの講義でした。
木曜日には、キャリアコーチとの面談があったので、就職活動についても少し触れます。

Medicineの講義

モジュールの全体像については先週書いたので、今週は具体的な講義内容について整理してみます。
自分にとって新しい分野で専門用語も多いので、日本語でまとめるのも一苦労ですが、いくつかのトピックを取り上げて、頭の整理も兼ねて書いていきます。
今週は以下の2つのテーマが中心でした。

3. Managing Performance in Sport
4. Managing Injury and Illness in Sport


Managing Performance in Sport - Performance Evaluation

アスリートのパフォーマンス、特に心肺持久力(Cardio‐respiratory endurance)の評価指標についての解説は、なんとなく理解していた内容がつながった感覚があり面白かったです。

• VO2max(最大酸素摂取量)
• VT: Ventilatory threshold(換気性作業閾値)
• RCP: Respiratory Compensation Point(呼吸性代償開始点)
• Peak Lactate(乳酸値)

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(Prof. Grégoire Millet 講義資料より抜粋)

最大酸素摂取量の単位は ml/(kg*min) です。体重に対して、1分あたりどれだけの酸素を摂取できるかと表す指標で、数値が大きいほど能力が高いということになります。
一般成人男性で40程度ですが、クロスカントリースキーでは90を超える選手もいるそうです。

グラフの横軸は最大酸素摂取量に達する最低速度(vVO2max)、縦軸は各種指標の数値です。
黒がVO2max、ピンクが酸素摂取量に対する換気当量、赤が二酸化炭素排出量に対する換気当量です。

右に行くほど運動強度が上がり、2つの閾値(VT1、VT2)があります。
呼気中酸素量が増加に転じるVT1が、有酸素運動から無酸素運動に切り替わるポイント、呼気中二酸化炭素量が増加に転じるVT2(RCP)は、生理学的に最大に近い運動強度に達するポイントです。

乳酸値は上記指標とは異なり、血中濃度を測定する指標ですが、VT1で増加のペースが上がります。

各指標の関係性は、

運動強度の増加
 → 酸素の供給が追いつかなくなる
 → グリコーゲンを乳酸に分解することでエネルギーを作る
 → 乳酸を取り除くためにより多くの酸素を取り込もうとして換気量が多くなる(同時に二酸化炭素が作られる)

という感じです。

Managing Performance in Sport - Genomics in sports

スポーツにおけるゲノミクスの可能性と課題についての講義も興味深かったです。
遺伝子やタンパク質に関する情報はオミックス(Omics)情報と呼ばれ、医療目的で研究が盛んな分野です。
これをスポーツにどのように活用できるかという議論です。

アスリート個人のオミックス情報に基づくトレーニングや食事を提供することで、怪我や病気のリスクを減らしたり、ポテンシャルを最大限に発揮したりすることが期待されています。
技術的にはだいたいの想像できることは可能になっているそうですが、コストと倫理的な問題を中心に、実用化に向けたハードルはまだ多そうです。

例えば、

・産まれた時点で適した競技が判定され、エリート教育を受ける
・胎芽の時点で病気の可能性を含む遺伝子情報をもとに、堕胎の判断をする
・遺伝子操作によって能力の高い個体を産み出す

といったいくつかのレベルがありますが、どこまでが倫理的に認められるかの明確な答えはありません(スポーツの文脈に限らず)。

このような議論はスポーツにおける公平性にも関わってきます。
例えば、生まれる国や家族の社会階層など、既に大きな格差があることは明確な事実である一方、ゲノミクスによって生じる格差は認められないのでしょうか。
答えが出るものではありませんが、特定の手法が良いか悪いかという議論を超えて、スポーツの本質とは何かを考える機会になりました。

就職活動

AISTSとしての就職活動への支援体制には、キャリアコーチとメンター制度があります。
6月いっぱいで講義が終わり、7〜12月の間に2ヶ月以上のインターンシップを経験することが修了要件となっています。
有給/無給は問わず、中には7月から正社員として働き始める人もいます。

キャリアコーチはフリーランスですが、週の半分はAISTSに来てくれています。
2ヶ月に1回のペースで個人面談がアレンジされていますが、それ以外のタイミングでも気軽に相談できるような存在です。
ざっくばらんなキャリアプランの相談から、卒業生の紹介やCV(履歴書)の添削といった具体的なサポートまで、幅広く対応してくれます。

メンターは、学生の志向やバックグラウンドに合わせて、卒業生が一人ずつ割り当てられます。
僕のメンターは、ある国際競技連盟で働くメキシコ人女性です。
現在の仕事に関する生の情報に加えて、非EU圏国籍の難しさなど、自身の就職活動を踏まえたアドバイスもたくさんもらっています。
非常に親身に相談に乗ってくれていてありがたい限りです。

ヨーロッパのスポーツ界(特に競技連盟)は、オフィシャルな採用プロセスもありますが、最終的には人脈がものを言う世界です。
ポジションが空いたときに声をかけてもらえたり、大量の候補者がいる中で推してもらえたり、そういった関係性を作っていくことが重要です。
上に書いたようなサポートを活用することで、一足飛びに業界内の人にアクセスできることがAISTSの最大の強みだと思っています。

と、頭では分かっているものの、なかなか行動しきれていない部分もあったので、そろそろ本腰入れて動いていきます。
木曜日にキャリアコーチとの個人面談があったので、国際競技連盟で働く数人の卒業生とつないでもらい、早速アポイントが決まっていっています。
この環境下で、初対面であってもオンラインで話すことが当たり前になっていることはプラスに働いていると感じています。

皆さん忙しい中時間をつくってもらうので、Takeするだけでなくこちらからも何かしらのGiveができるよう、しっかりと準備して臨みます。
予定や締切を決めないとなかなか動けない質なので、継続的に予定を作ることで自分に鞭を打っていきます。

来週の予定

いよいよ教室での講義が再開します。
前半は引き続きMedicineの講義、後半は2人チームでのプレゼンがあります。
木曜日の午後は、クラスみんなでワインテイスティングです。毎年恒例のイベントだそうです。
体調管理には気をつけながらも、楽しくやっていこうと思います。

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