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俺の60のキーワード【13.エンゲージメント・ファースト】

俺がキャリアの中で唯一社長をやったのがこのこの会社エンゲージメント・ファースト。メンバーズ のグループ会社戦略の一環として2012年に立ち上げ2020年まで独立の法人として存続した。設立に際してのプレスリリースにある設立主旨は下記。

メンバーズは早くから、Facebookを代表とした実名SNSが新しいコミュニケーション革命を起こすものと考え、企業のFacebook活用のための支援サービスを提供してまいりました。Facebookページの制作・運用、自社サイトのソーシャル化、キャンペーンにおいて大手企業をはじめ多くの実績をあげております。
これらの経験・ノウハウをもとにメンバーズでは、企業の「社会的に意義ある事(Good Works)」を主にソーシャルメディア通じて企業ファンと共創し、企業利益に貢献するエンゲージメント・マーケティングの支援を行う専門子会社、株式会社エンゲージメント・ファーストを設立することとしました。
メンバーズは今後ともソーシャルメディア時代をリードし顧客とともにビジネスを創造する「インターネット・ビジネス・パートナー」として、企業のソーシャルメディア・マーケティングを推進してまいります。
2012年9月14日

要するに「企業はソーシャルメディアを活用し、顧客との共創し、より良い世の中を作るのだ!そのお手伝いします。」を役割に立ち上げわけだ。背景にはソーシャルメディアの盛り上がりとポーター が提唱したCSVだ。CSVに関しては60のキーワードでもあり、俺の仕事の中心なので改めて取り上げるが、「社会課題はこれからのビジネスの源泉であり、社会課題を解決することでビジネスが回ることで世の中も良くなる」という考え方で、ネスレが中南米での事業をこの考え方を実践し成功した当時のCEOピーター・ブラベックがネスレ全体の経営に取り入れ、2007年にはCSV報告書を発表している。ポーター はネスレに乞われてこれを検証、体系化(?)し、2011年のハーバード・ビジネス・レビューで「共通価値戦略(Creating Shared Value)」で発表し、その後SDGsなどをはじめとする社会課題解決xビジネス機運が高まってきたのはご存知の通り。私が属しているメンバーズ も2011年からこの概念を経営のど真ん中に据えている。この実践をまずはエンゲージメント・ファーストというCSVに専門特化した子会社でということで立ち上げた。
我々はこのCSV推進のエンジンとしてソーシャルメディア、特に実名性でビジネス親和性が高いFacebookを活用するやり方で挑んだ。きっかけの一つは2011年4月に共著で「フェイスブック・インパクト」という本を出したのだが、要するに当時まだまだソーシャルメディア、特にFacebookがビジネス活用されていない時代にビジネス、マーケティングで活用しましょう的な本で、なんと震災後一ヶ月後に出版に至っている。かなり突貫で執筆陣がそれぞれのパートを担当し書き上げた直後に震災があり、出版社も果たして出版をすべきかどうか迷ったわけだが、震災でソーシャルメディアの存在が大きくなり踏み切り出版に至った。

フェイスブックインパクト

デンマークのデザイン会社bespokeとの業務提携も印象的な仕事だった。彼らの手法Futures Designを日本向けにローカライズし、多くの企業、メンバーズ、NPOなどに展開、未来志向で物事を考えるというシンプルながら、とてもパワフルなフレームワーク、ワークショップで、今後もその重要性は高まってきている。

BespokeのNicとAndyと

俺にとっては子会社とはいえ、独立した会社の苦手な(苦笑)経営を任された経験は大きかった。社会課題解決をビジネスで解決するので、立ち上げから単年度黒字は必須で、これはこれでキツかったが八年間の経営を通して単年度黒字は維持し続けることができた。途中うちの規模としては大きめのM&Aも行い、大きな借り入れもしながら最終的にはこの投資に対してもしっかりとリターンを得ることができた。2020年にはメンバーズ子会社はメンバーズ本体に帰属することとなり、エンゲージメント・ファーストはメンバーズグループ内でCSVを推進する室として継続することとなり今に至っている。徐々に社会や企業の動きや生活者の価値観も変わりつつあり、社会課題解決意識は高まっている。弊社の定点調査であるCSV Surveyでも明確である

6割(63.1%)が地球温暖化や気候変動問題に関心があると回答。
年代別で見ると、20代は5割(50.0%)であったのに対し、50代は7割(71.9%)、60代は約8割(78.4%)と年代が上がるにつれ生活者の地球温暖化・気候変動への関心が高まる傾向に。
約7割(66.7%)は「価格が同等もしくは1割程度割高でも気候変動に配慮した商品を選ぶ」と回答。さらに、購入者の9割(96.3%)は「継続して購入したい」と回答し、気候変動に配慮した商品の購入者は満足度が高いことが伺える。

気候変動と企業コミュニケーションに関する生活者意識調査 

いつもながら早い仕込みだったが2012年にこのドメインでビジネスを立ち上げた意義は大きく、俺としてもビジネスの最終コーナーを駆け巡るには素晴らしいチャレンジができていると思う。決まったことをやり続けることも重要だが、VUCAの時代においては変化に対して大胆に挑むことも大切だと痛感している。

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