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あなたが本当に望んでいること

1. 本当の自分の思い

 「自分の思っていることはすべてわかっている」そう言い切れる人はどれくらいいるだろうか。当の人間の損得や快の充足に偏りがちな顕在意識で考えた欲求ではなく、本当の自分が願っていることが真の望みといえる。いくつかの選択肢があって迷うのは、本当の自分との交流がうまく図られていないからである。

 内在している本心の声を感じながら生きるほどに、「なぜだかわからないが、この選択をするのがよい」というふうに、答えが直観的に浮かび、理由は後で頭脳を使って論理的に検証することが多くなる。表層の思いと深層の思いが近づくほど、内側から生まれる安らぎが増していく。

2.顕在意識と潜在意識

 本当の自分が望んでいることはそれを成し遂げる資質をもっているから、そう思うよう促されている面がある。例えば、「多少の犯罪行為をしても捕まらなければ、自由気ままな豪遊生活を一生送りたい」と望む場合を考えてみる。一定数の人は「そうであればいいな」と思うだろう。ただし、本当の自分がその現実を願うことはあり得ない。

 なぜなら、本当の思いとは個人的欲求・価値観を超えた集合的意識に他ならないからである。仮に、顕在的な思いとしてそれを望んでいても、根源的には人は皆つながっているため、我欲に基づく破壊と享楽を志向することはない。

3.私と他者の相関性

 私と他者は相互に関連し合っている。目の前の相手への思いは潜在意識下で伝わっている。あなたがある人に暖かい気持ちを抱くと、その人はたとえ顕在意識であなたのことを嫌がっていたとしても、本人も気付いていない心の奥では愛のエネルギーに感応している。そして程度の差こそあれ、その人の心には温もりが刻まれる。

 私と他者の垣根は本来的には存在せず、心の内の思いはひな形となって、同じような外側の環境を創り出していく。

4.望むことを現実化するために

 人間の思い描くイメージには強力な力があるが、いくら良いイメージをしていたとしても、それを受け取るための行動がなければ願望は叶うことはない。そして、人には今の思考・生活にとどまろうとする安定欲求が本能的にある。「今のままでいたい」という思いと「変わりたい」という思いがせめぎ合っている。第一歩として行動を意識的に、かつ、少しずつより良く変えていくことができるかどうかが分岐点になる。

 そのためには、思いと行動をまず顕在意識上で一致させることが不可欠である。あることをすると決める⇒行動するというサイクルを簡単なレベル(1日30分歩く・今日は風呂掃除するなど)から始めると挫折しにくい。そうすると、決めたことを行動できる自分がつくられていく。このように、できる所から思いと行動の一致を繰り返すことで、潜在意識から発している本音の思いをより良い方向に修正していくことができる。

 ただし、その過程でいくつかの課題が表面化してくる。ネガティブな思考を悪とみなして排除しようとすることは思考の抑圧と隣り合わせである。また、善人であろうと望む心を善とみなすことは偽善性や自己向上への固執と隣り合わせである。自分の心が今どういう状態なのかを見つめることで、悪と判断している中に善があり、善と判断している中に悪があることを感じ取るようになる。

 このように、内観しながら、顕在意識と行動を一致させていくによって、人の思いの大部分を占める潜在意識に働きかけることもできる。行動の原因は潜在意識と、個人の意識を超えた単一かつ集合的な人類共通の意識に依るところが大きい。自己の潜在意識と交流することで、本当の自分の望みや今現時点の心の清濁に気付くようになっていく。心の内から湧き起こるふとした気付きと、現実的努力を織り交ぜることが必要になる。

 できるところから一つひとつ階段を上がるように行動していくことで、その人が潜在的に持っている能力が引き出されていく。たとえ今望んでいる状況にほど遠いと感じていても、目的達成に向けた実践の時間を少しでも持つことで未来を好転させることができる。

 その実践の時間を持つには趣味として続けるか、仕事として取り入れる方法がある。後者の場合、それを実現するための工夫と、ある程度の年月が必要になる。その分野の専門家として生計を立てるには、個人差は大きいが一般的に、準備期間と実務期間合わせて5~10年ほどかかる。

 いずれにせよ、それらは人に役立つことができる機会を生み出す。また、金銭のやり取りがあってもなくても、大なり小なり付加価値が求められるからこそ、磨かれる面がある。

5. 天職と適職

 天職とは本当に望んでいる行動であり、深い充実感を伴う。適職とはこの現実社会で生活していく上で自分の知的・肉体的能力を社会に提供する行動である。

 天職だけで生きるには特別な先天的才能を必要としていて、後天的努力だけでは到達できない。さらに、優れた才能を与えられた者でも若いうちから天職に関われるとは限らない。真の能力を見極められるために揺さぶられ、試されることが少なくない。そのため、幸不幸の振幅が大きくなりやすい。その過程で素質と努力を認められ、より向上していく場合もある。

 一方、自己との戦いに敗れ続け精神に変調をきたしたり、場合によっては自ら死を選んだり、病気や事故などで早逝する場合もある。

 また、適職だけで生きていると心の深い所に不全感が知らず知らずに蓄積してしまう。そのため、適職を基本としながらも、天職の要素も取り入れた生活が心に負担をかけないありかたといえる。

 望みを明確に思い描き、その成就に向けて行動していく途上で胸の奥からの直観や何気ない人の言葉から気付きを得ていく。その後は、当人の生き方次第で天職の比重が大きくなっていく。

 あなたの本当に望むことは何だろうか。また、あなたはなぜ、それを望むのだろうか。

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