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ひらめき☆マンガ教室 第4期 チームC制作『ふれたい。』感想

「ひらめき☆マンガ教室 同人誌売上レース」の第3弾です。タイトルどおり、本記事はチームC制作『ふれたい。』の感想です。

チームA制作『欲 その望みは破滅─。』チームB制作『読めば、聴こえる。』の感想はこちら。

では、まずはチームC制作『ふれたい。』の概要と試し読み&通販サイトのリンクから。

概 要
ふれること、
ふれられることを、
今までこんなに意識したことはなかった
 
でも私たちの周りには
好きな人、好きなもの、家族、友人、ペットetc…
実は数えきれない位『ふれたい』があった
 
例え言葉が通じなくても、
ふれることで伝わることが、確かにある
 
だから、せめて漫画の中では
『ふれたい』って、ちゃんと伝えたい。
 
  本の中でぼくとタッチ! フレ!
            by フレッテ
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仕様:A5 / 184頁
発行:2021/4/26
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●試し読み

●購入サイト(ゲンロンショップ、BOOTH)

では、以下に漫画素人目線でかんたんに感想を記していこうと思います。今回のチームCでこの感想のシリーズは終わりなので、最後に3冊全部読んで思ったことも少し述べようと思います。なお、各漫画の説明はする気ナシなので、気になったら実物を購入してください。

タイトルと表紙について

『ふれたい。』というタイトルは3誌のなかでもっともシンプル。

漢字に変換してみると「触れたい」と「振れたい」の2つが出てきました。ふつうに考えれば前者ですが、後者を包含した表現にするのもありでしょう。

「ふれたい」という言葉は原初的であるがゆえに、即座にいろいろと想像がふくらむお題だと思います。

ただちに思い浮かぶのはおっぱいですよね。ただまぁおっぱいは別格というか特別枠でしょう。

かつて亀屋万年堂の商品ナボナのCMに出演した王貞治は「ナボナはお菓子のホームラン王です」との名言を残しましたが、おっぱいは触れたい身体部位のホームラン王の地位を占めており、したがっていまさら言及するにはおよびません。

おっぱいは「触れたい。」界の王の座にいるとして、「ふれたい。」という言葉から最初に思い浮かぶのは、やはり他者の身体や精神(心)でしょう。

次に思い浮かぶのはもふもふ系を筆頭とした動物。

さらに次なるは物でしょうか。台にのった銅像の股間部分だけさんざんひとびとに触られたせいで股間部分の塗装が剝げてしまっていることからもわかるとおり、ひとはついつい物(モノ)に触れたくなってしまうものです。

あとはコンテンツの消費なんかにも「触れる」という言葉をつかいますよね。

いずれにせよ『ふれたい。』というタイトルから、主体と対象との距離感の話が期待されます。

で、表紙の絵なのですが。

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もうこの時点で触れたいです。このお姉さんが何者なのかは数ページめくると判明するのですが、あざといくらい「触れたい。」という欲望を喚起してきますね。

もしかしたらこの表紙も評価や読解に値するさまざま仕掛けに満ちているのかもしれません。たとえば手が見えているこちら側の存在(俺)が妙にショタっぽかったりとか、「ふれたい。」というタイトルながらも、むこうが意図してか無自覚かしりませんが触れさせたがっているようにも見えます。しかし、原初的な欲望に支配され、脳がマヒしてしまいました。

触れたいなぁ……二次元だけど……。

文:佐藤柊/絵:あまこう「まえがき」
チームAチームBになく本誌にあるのがこの序文です。

この序文があるだけで、統一的なテーマを元に作品が制作された感が強く出るんですよね。

もちろん経験も実力もちがう作家さんたちが集まっているため、作品への落とし込みに差はあるかもしれない。まさに「ふれたい。」にふさわしい作品もあれば、作品について構想を練る端緒に過ぎない人もいるでしょう。

けれどこれがあるかないかでは読み手の意識の持ち方が違うと思います。

ぶっちゃけ同人誌のタイトルなんてそんなに意識して作品は読まないですよ。でも、序文として本の内部で示されていれば意識してしまうと思います(意識することが良いことかはわかりませんが)。

序文に少女の絵が添えられていますが、これも可愛いし、必要以上の情報をふくんでないデザインやポーズなのもいいですねぇ。

木ノ上万理咲「触れたい背中」
表紙の女がいきなり登場するこの作品。

はっきり言ってすべてが最高としかいえません。ひらめき☆マンガ教室同人誌売上レースの3誌に収録されたすべての作品のなかで個人的1位はこれです。

フィクションの世界で古書店といえば、ロングヘアーの胸のおおきな眼鏡美人が登場するものと昨今は相場が決まっています。三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』の栞子さんしかり菅野マナミ『ひまわりさん』のひまわりさんしかり。

まぁ、この認識にジェンダー的な問題があるっちゃあるんでしょうが、僕的には性癖のど真ん中です。

本作でもロングヘアに眼鏡、縦セタにジーンズという大変あざとい姿で主人公である青年のもとに転がり込んできて、しかもリボンで髪をまとめてやがります。おまけに受賞歴のある話題の作家で幼馴染ヒロインとかいう読者を喜ばせる設定の塊みたいな女です。ロングスカートでなくジーンズという選択が腰回りや尻、ふとももふくらはぎと触れたい欲をかきたててきて、実に計算された女です。なんで谷間が見えてるセーターを着続けてるんだおまえは。

「触れたい背中」というタイトルのとおり、このお姉さんの背中に触れるのですが、触れたこと自体よりも、その反応を見て主人公の心に変化が生じるのがいいですよね。先んじておっぱいで一度ラッキースケベしているのですが、その段階でもしていないドキドキをここで経験するのがいいですよ。

触れた瞬間よりも、触れたことで生じた反応が、後の「触れたい。」を呼ぶ作りになっていると思いました。

柴田舞美「外に行きたい」
文庫になっているような昭和のSF少女漫画みたいな雰囲気。

雰囲気のある背景だなーと思っていたら、それもちゃんと理由が(ハードSF的な考証ではないですが)ありました。

「触れたい背中」でストレートな「触れたい。」を提示された直後に変化球がいい感じの絵で投げ込まれる本自体の構成としても2番目に置かれる意味があると思います。

矢野七味「ねこまわり」
これはけっこうSFだぞ。

猫が降ってくる見開きの構図と雲の表現がけっこう好みでした。

とりあえず作者のかたにはこれがSF短編だと言い張ってほしいです!

俗人ちん「ハリくんに触りたい!」
性癖に忠実な漫画かとおもいきやギャグ漫画でした。

ラスト直前のお姉さんの血の出方とかも、ぜつみょうな味わいですね!

あまこう「丑三つ時」
いっぷう変わったBLなんですけど、やっぱ怖いわ、これ。

壁一枚扉一枚向こうのことはわからないので恐怖を想像しちゃうことってあるわけですが、それを利用したBLってよくできてたアイディアだなーと思いました。

たんに怖いやつが通過するだけでなく、見てることに気がつかれるのがやばいですよね。

通過する怖いやつにとっても触れることのできる可能性のあるのが主人公なのでしょうか。そう思うと三角関係四角関係に発展しそうな作品なのかも。こわっ。

盛平「赤ずきんちゃんの道草」
絵が上手い、というのが第一の、そして最大の印象です。

おばあちゃんのきのこサンドとか美味しそうだし。レシピだけじゃなく絵的にちょっとあやしいけど美味しいかも? って思わせる力があると思いました。

コバヤシ「Don't Touch 貧乏神!」
やっぱりあんじゃねーか、おっぱい漫画! 「触れたい背中」だけじゃなくってもう1個!

『ふれたい。』という本なんだから当然ですね。僕も触れたいです。僕もおなじ状況なら触れますね、とりあえず1回目は。

上司に怒られてる最中に思いつかれたということですので、とりあえず本作を上司に進呈し、お礼を申し上げるといいと思います。

あへー「霊能ガールと二重人格ボーイ」
絵とかセリフ回しとかキャラは面白かったです。

ただネームの情報開示の順序がもうちょっと考えられていると、たぶんもっと読みやすくなると思います。たぶん。少なくとも1回ページを戻ってしまいました。

シバ「ミレンの和太鼓」
ドラムとか太鼓を実空間で聞いた時の物理的に体を殴ってくる感じ(まぁ、音は全部そうなんですが)、ひじょうによくわかります。だからその感動を作品にしてみようって考えるのはなんかわかります。小説じゃもっと淡白になりそうだし、漫画表現向きの感動ですよね。

「ふれたい。」要素がよくわからなかったです。でも作品的にはいくらいでも盛り込めそうだなーと思いました。

うめていな「ヒカリの見つけ方」
この夫のほうの忙しいけど心の中では想ってる感じよくわかります。忙しくても想っている瞬間はちゃんとあるんですよね。性欲どころじゃなくなるけど。それと辛さにたえていたのにたえきれなくなってしまう感じも。

1年半より前に身体が触れていたころは心も触れていたのでしょうか。もしかした当時は触れていたからこそ、いまは触れていないことに気がつけなかったのかもしれませんね!

あと、輪郭をとじずにぼんやりと描かれた絵が、日常に慣れきってしまって周囲から何かを発見しようという意識が失われてる主人公女性の認識の世界を表現しているように読めて、内容と絵がマッチしてると思いました。

中山墾古城まなkubota/文:あへー「ひらめき☆マンガ教室 卒業生鼎談」
やっぱ歩くかシャワー浴びるかしますよね! どうしてもネタや展開につまったらね!

頭を働かせる以外にやることをない状況をつくるといいってことなんでしょうね、きっと。

文・写真:佐藤柊/絵:あまこう「触ってご利益!「ふれたい。」スポット」
日本各地の触れるといいことあるものを紹介するちょっとしたページ。

僕だったら長野の安曇野にある双体道祖神(男女のお地蔵さん)の男が女のおっぱい触ってる種類に勝手に割り込んでおっぱい触りますね。勝手に愛撫していきますね。

ゲンロン ひらめき☆マンガ教室 第4期 チームC「「ふれたい。」あとがき」
これも他が意外とやってない本の末尾のあとがきページ。みんなお疲れ様でした。

総評的なもの
いちばん本らしい作りの本だという印象でした。まえがきとあとがきがあったからでしょうか。

現行の掲載順もストレートな意味での「ふれたい。」で始まり、2作目で意表をつき、ラストを肉体的なふれあいではないもので締めるという、まっとうな構成になっていたと思います。

この本で最も印象的だったのは木ノ上万理咲さんの「触れたい背中」になってしまいます。チームAチームBと違って掲載作品のキャラクターが表紙になっている時点で、どうしても「触れたい背中」が印象を持っていってしまうと思いました。

「ふれたい。」というタイトルでありながら、安直な下ネタがぜんぜんなかったのも本全体をとおして好印象でした。読んでるこっちの方が性的なことばかり考えていた気がします。

以上。

3誌読み終えて
まずはみなさん同人誌づくりお疲れ様でした! こんな大人数が集う合同誌を形にするのって、楽しそうだけどやっぱ大変だと思うんですよね。それを(構想通りのものになったかはさておき)作りあげたことは素直にリスペクトですよ、マジで。一生一緒にいてくれやですよ、マジで。できた本のレベル的にも甲乙つけがたいし。

3誌共通して思ったのは、すっごく当り前のことですが、商業作家はレベル高いなーってことです。ちゃんとお題をふまえていて、読み手のことまで考えて描いてるものばかりなんですよね。

素人の僕なりに「これはよくわからない」って感想を書いたものは、たぶん「考える」量が少なかったのではないか、と推察します。漫画を構成する各要素をそろえるための思考の取っ掛かりくらいにしか使ってなかったりとか(実際どうかはわかりませんが)。
考えすぎて描けなかったら元も子もないわけですが、やっぱり情報がゼロの状態の相手に伝えるには計算が大事なんだと思います。

いずれにせよ、ひらめき☆マンガ教室の受講期間を最大限有効活用して、なりたい種類の漫画描きになれたらいいですね。残りの受講期間での友情・努力・勝利をお祈りします。

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