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ひらめき☆マンガ教室 第4期 チームB制作『読めば、聴こえる。』感想

「ひらめき☆マンガ教室 同人誌売上レース」の第2弾です。タイトルどおり、本記事はチームB制作『読めば、聴こえる。』の感想です。

前回投稿したチームA制作『欲 その望みは破滅─。』の感想はこちら。

では、まずはチームB制作『読めば、聴こえる。』の概要と試し読み&通販サイトのリンクから。

概 要
このアンソロジーを読めば、あなたにもきっと“聴こえる——”
「音」をテーマに、11名の作家によるオリジナル漫画を収録したコミックアンソロジー。
恋愛、青春、家族、JK、特撮、萌え——エモーショナルからギャグまで、幅広いジャンルの短編を揃えました。
各作品の合間にはミニコラムも収録。音フェチのあなたも大満足な、ボリュームたっぷり156Pでお届けします!
個性豊かな漫画による11の「音」を、あなたも“聴いて”みませんか。
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仕様:A5 / 156頁
発行:2021/4/26
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Twitterにて最新情報を更新中!》
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●試し読み

●購入サイト(ゲンロンショップ、BOOTH)

では、以下に漫画素人目線でかんたんに感想を記していこうと思います。各漫画の説明はする気ナシなので、気になったら実物を購入してください。

タイトルと表紙について

『読めば、聴こえる。』というタイトル。

FL STUDIOで音楽制作したり、(15年以上前には)Soulseekを使用していた程度には音楽が好きな僕としては、このタイトルは「俺が読みたいやつがけっこう載ってそうだな」と期待しました。音楽好きの目をひきそうです。ディスクユニオン、あるいは今は名前を変えた高円寺円盤なんかにあっても良さそうな気もします。

余談ですが、TBSラジオのコーポレートメッセージ「聞けば、見えてくる。」の逆だな、ということは記述しておきたいと思います。(さらに追記するなら「揉めば、出てくる。」はコアラの人間の飼育員がコアラの肛門付近を揉みほぐして排泄を補助することを意味します)

画像1

青い空に夏服の制服なんて、めっちゃさやわかで青春っぽいじゃないですか! さやわか? さわやか? よくわからなくなるけど、変換で「爽やか」が出たのがさわやかなのでさわやかですね! 学生自身が描いた学園祭のパンフレットの表紙的なさわやかさと若々しさで、見ているだけで肌のエイジングケアが進みそうです。

関係ないけどさやわかさんの本を読んでいると以下の画像みたいなのを街で見かけたときに「あれ?」ってなります。

画像2

そんなときは東浩紀さんや大井昌和さんがひらめき☆マンガ教室主任講師を呼ぶ音声を脳内で再生して確認しております。

絵的には女子ふたりで耳元に口を寄せているので、百合が収録されていることを期待せざるをえません。

あるいは、異性と関係を持つことのできるひとが一部のリア充に限られていたリアルな青春のにおいがします。

僕自身、高校生時代はRolandのSC-88というMIDI音源でTMネットワークのコピーをしながらSquarepusherとか聞いていて、浜崎あゆみやモー娘。好きの多いクラスで浮いていたタイプなので、10代の頃の記憶が呼び覚まされそうなタイトルと表紙だな、と思いました。

清水しの「音無さんを許さない!」
表紙から期待したとおり、いきなり百合じゃねーか!! ありがとう!
内容的に過不足がなく、ふつうに商業誌に載っている漫画だなーと思いました。

思春期の切り取り方が絵柄にふさわしい可愛らしさで、読み手の読みたいものをちゃんと理解して描いてるように思います。

横たくみ「モノラルラブ」
このタイトルはステレオラブからきているのだろうか?

それはさておき、ストレートに「音楽」を題材にしたこの作品。

銀杏BOYZはむろん僕も好きで、というか直撃世代といってもよく、自分自身の過去の恋愛を思い出しました。

シンプルだけど圧倒的共感を呼ぶ作品だと思います。漫画まんまのことが僕におきたわけじゃないのに、自分に起きたことも同然に読めました。

そんな僕はこの漫画で男の子が聞いてる日向坂が最近とても大好きです。

天草仁郎「イマジナリー・サウンド」
心の音楽データベースに照合して既知なら内的な音楽ファイルが再生され、データになければ更新される。そんなお話。

これはですね、音楽でなくSEだったら『ファイブスター物語』と『花の詩女 ゴティックメード』の関係で実感しましたね。

『ファイブスター物語』のコマ内でうるさいくらい書き込まれたGTM(MH)の駆動音が、すべて鳴ってるやばい映画ですから。この映画を見る以前と以後では単行本を開いて鳴る音が違いますからね! ですよね!?

畑こんにゃく「シドラミソ」
一コマめでてっきりギャグマンガかと思いました。

合コンで知り合った彼氏はゲームしてる横で料理しているコマにさしかかったあたりでは、彼氏側の欲望とシドラミソの音源であるぐるぐるしたものが融合したり対立する展開がくるかと思ったのですが(それによってぐるぐるが何の比喩が推察できると期待したのですが)、そうはならず。

メキメキ教という言葉のセンスから大槻ケンヂの『新興宗教オモイデ教』『くるぐる使い』的なものをほのかに感じたので、なんとか中長編に発展させてほしいです。

広木素数「ラブソングのないサイドB」
これはちょっと僕にはよくわからない話でした。

というか、38歳の僕の無意識がこのおっさんの言っていることを「わかりたくない」と思っているのかもしれません。

出だしのコマで無線のイヤホンを使い女の子がなにかを聴いているのに、乗車の際にちゃんと外していることとか関係を読み解くポイントは色々とあるのでしょうけど、なんかよくわからなかったです。

小林煌「私は盗みたい」
ひらマンの良いところを解説してくれている有用な文章でした。

つまようじ「先輩に告白したいJCの話」
なつかしの「スクールランブル」の初期の話みたいな感じですね!

でもどのへんが「音」なのかはまったくわかりませんでした!

ただ、擬音を豊富に使ってる作品だとは思いました。

こぐまあや「風鈴のひと」
若い男女関係の裏側にちょっとした悪意や賭けみたいなものがある切ない青春の作品。これも僕にあったことのような気がしますよ。なかったけど、あったことですよ。

童貞時代に自分をかまってくれる彼氏持ちのお姉さんっていますよね。自分の人生をふりかえると、具体的に数名の顔が思い浮かびます。

詩織さんという初代ときメモみたいな名前のお姉さんのファッションもいちいちいいんですよ。日常感のある露出が多くて距離が近かいのではないかと童貞を錯覚させたり、オシャレ過ぎないけど女性らしくて非モテの自分でもワンチャンあるのではないかと思わせてきたり。

内容的にも過不足なくって、いいもの読めたなーって感じです。

ちなみに、この作品にミステリー要素を足していくと光原百合「十八の夏」になると思います。

本誌での個人的ナンバー1でした。

佐野史子「聴覚は音を求める」
僕たちが日ごろ気にとめないけどたしかに存在している音を拾い上げてほしいですよね。

畑こんにゃく「読んでも、聴こえない」
おまえそこそこいい目にあってね?>土の精

くたくた「くゆる」
自分はどちらかというと貪欲なタイプのオタクで、なんならFC東京のゴール裏で飛び跳ね歌い、ブーイングしてるやつなんですけど、この作品の主人公のようなモードに切り替わってるときがしばしばあります。おそらく多くの人間はパートタイムでこの漫画のようなモードのスイッチが自動的に切り替わるんでしょうけど、主人公の女性はその持続時間が長すぎたのでしょう。

重要なシーンに見開き1枚の大きな絵を持ってきているのですが、ページのノドに主人公の顔がきてしまうのはどうにかならなかったでしょうか。仕方ない気もしますが(いまから15年くらい前に『逆境ナイン』が実写映画化したときに島本和彦と藤田和日郎が合作したのですが、藤田和日郎がノドのところに絵を描いてしまい、島本和彦がそこにツッコミを入れていたので、やっぱ一工夫あってもいいような気もします)。

ハミ山クリニカ「漫画を描くときの音」
静かじゃないと書けない自分とは正反対の話。でもこういう人いるらしいですね。不思議。

なないつ「彼女たちの本音」
またも百合じゃないですか!

テーマトークのところに描かれてる絵が「素直に本音を言えた後の後日談」的なものだったらうれしかったなーと思いました。

kuzikuzira「大人の声」
絵がけっこう好き。おもしろさを期待してしまう絵でした。

2020年4月に怒りの退職をし、2021年2月にふたたび働き始めるまでの精神的に辛かった日々を思い出しましたね。そんな僕は連日のパワハラでふたたび無職に戻りかねない状況にあり、そんな状況下で読んでしまったのでラストのコマが来週あたりの自分の姿なのではないかと思いました。

よこうただ「ひらめき★漂流教室」
タイトルで一瞬「銀杏BOYZか?」と思いました。僕の音楽脳が反射的に。

僕はひらマンは受講していないけれど、カルチャーお白州はチャンネル購入しています。

pote「メイドインハート!」
ショタと性癖に忠実なメイド良い!

絵的に可愛かったです。

僕も鼓動は好きです。睡眠中の幼女の鼓動を聴く常習犯ですし、イケメンの心臓の鼓動だけを集めたコンピレーションCDとか聴いてるし、DHCのマルチビタミンを両耳につめてビタミンの鼓動を聴いてるし、Zの鼓動も聴いてますし。TR-808のキックの音の次くらいには鼓動音が好きです。

僕的にはこの作品だとメイドの寝息を聞きたかったですけどね。

藤原白白「Now on air」
両親健在なれど、祖父も祖母もすでにいない僕。

数年前にあった、長野の小諸に住んでいた母方の祖母の葬儀は行けませんでした。

そう遠くないうちに亡くなるとは思っていたけれど。人に胸を張れるような人生を歩んでいない僕は親戚と会いたくないし行かなかったんですよね。
亡くなるまでの間にもっと自分を恥ずかしくない存在にできていたら、と葬儀に行かずに考えていました。

そんな経験があったので、この一歩を踏み出さなければという強迫観念じみたものに襲われるのはよくわかります。

しかもこれ続くんですね、作者さんのツイッターアカウントで。フォローするやつでしょ、これ。

にしても、これなんでヘッドフォンでラジオ聴いてるのでしょうか。声を近くで感じたいからですかね?

正三「なにが聴こえるか」
このコラムで書かれていることがだいたい聴こえてました。ひらマンは追えてない(さやわかさんの動画チャンネルのコメント欄で「ひらマン4期は読みます!」とか言ってしまったのに読めてない)のですが、今から読みますかねぇ。ニートになりそうだし。

推しコメ!
このページいいですね。漫画を描いている人同士の視点で語られていて。僕は漫画を描いていないので、実際に手を動かして描いている人たちと見方が違うことをこのページから教わりましたよ、たぶん。

総評的なもの
コラムはあるものの、チームAと違ってこちらは頭から尻尾までギッシリ漫画がつまっている本で、漫画同人誌としての満足感は高かったです。買ってよかった!

チームAと同様に各受講生の持ちページはそんなに長くないものの、あまり物語的な過不足を感じませんでした。うまいからなのか、偶然なのか、僕自身がすでに1冊読んだことで慣れたのかはわかりませんけれど。

さわやかな表紙なのに切ない記憶がけっこう呼び覚まされ、そういう意味では毒を隠している本だなーと。もしくは人間それぞれが記憶の中の毒を隠しながら生きているのかもしれませんが。

以上。チームC『ふれたい。』の感想に続く。


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