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スイカズラの香り

シャワーを浴びている時に、ふと思い出した。

「思い出した」というのは正確ではない。つまり私は、忘却の彼方にあった出来事が眼前にふと表れる体験をしたわけではないのだ。点と点が結びつくことで、忘れ去られていたあることが「確信のある推測」という形で“再現”された、くらいの表現がより適切であるように思う。


10年前、いわゆる“ませガキ”だった私は、そこまで頻繁ではないにしろ、時として香水を贈り物に選ぶことがあった。

それが頻繁でなかったのは、香水を贈り物とする際の自分なりのルールがあったからだ。「その人に似合っているものが見つかった場合にのみプレゼントする」という、とてもシンプルなものではあったのだが、このルールのおかげで、ませガキ時代の私がプレゼントした香水の数(及び私から香水をプレゼントされた人の数)は片手で収まる程度だった(はず)。


私は基本的に、香水の名前をきちんと覚えている。過去に私自身が使った香水も、プレゼントした香水も、名前を忘れることはほとんどない。

ただ、ある人にプレゼントしたAnnick Goutalの香水に限っては、どうしても名前を思い出すことができなかった。というか、その香水があまりにもその人にピッタリすぎて、名前を確認することすらしなかったように記憶している。

今はなき新宿のBARNEYS NEW YORKでその香水を購入した。10年以上前のことだ。


久しぶりにその人に会うことになったある日、家を出る前にシャワーを浴びている時に、その香水について考えていた。全体的にはグリーン・フローラルで、雨に濡れつつもしっかりと蜜っぽい香りを周囲に振り撒いている健気な花の姿を思い起こさせるものとして思い出していた。


“Le chèvrefeuille”だ。

記憶の中のその香りは、Chèvrefeuille、つまりスイカズラの香りそのものだった。だとすると私が贈った香水は、Annick Goutalの“Le chèvrefeuille”だろう。

なぜ今までそのことに気が付かなかったのだろうか。


その人に会うのは10年弱ぶりだった。その人もその香水のことは覚えていたが、当然名前までは思い出せなかった。

よって、その香水が“Le chèvrefeuille”だったかは、もはや確認のしようがない。ただ、今でもその香りは私の心の中に、その人の思い出と共にしっかりと刻み込まれている。それはきっととても美しいことなのだと思う。


スイカズラにまつわる、トリトメのないお話でした。

おしまい。


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