シンプルで深い言葉
以前、調香師Jean-Michel Duriezの言葉として、「いい香水とは、使う人に寄り添い続けるものである」というものを紹介したことがある…ように記憶しているのだが、私の勘違いだろうか。
これは私が彼に投げかけた「Jean-Michelの考えるいい香水とは？」という質問に対しての回答であった。
私はその質問をした時、もっとテクニカルな回答を想定していたため、この答えには少々めんくらったが、「なるほど、これだけ力のある調香師でも、使う人の側に立って考えているんだなぁ」と感心もした。
今日、そのことをなぜかふと思い出し、そしてそこに違う意味合いを見出した。
一瞬嗅いで「いい香り」だと感じられるものを作るのは、そこまで難しいことではない。心地よい香りを中心にシンプルな構成にすれば、それなりにいい香りにはなる。
「使う人に寄り添い続ける香り」というのは、それとは少し次元の違う話となってくる。
最初に試した瞬間の「いい香り」に終わらず、使っていくうちにさらに好きになっていくようなものでなければならない。
世の中には、「いい香り」だが使っているうちに飽きられてしまう香りが多々ある。使用する個人に飽きられ、また時代に飽きられ…このようにして多くの香水が生まれては消えていく。
「使う人に寄り添い続ける香り」となるためには、飽きられることなく、常に「いい香り」であることがとても重要だ。
名香として残り続けるものが新たに生まれる香水の数に比べると一握りであることを見ても、「寄り添い続ける」ものがいかに生まれ難いものであるかがわかるであろう。
Jean-Michelのあの言葉が、今日改めて、深みを伴って感じられた。
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