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賛辞を贈る

人は得てして、自身の時間やエネルギーと引き換えに、なんらかの形で満足を得ようとする。本を読むこと、旅行に行くこと、ひいては家でダラダラすることも、そういったことに含まれるだろう。

それゆえに、それらから期待していた満足が得られなかった時は、ひどく落ち込むこととなる。

この時の落ち込み具合が大きいものに対して、人は慎重になるように思う。旅行を例に取ると、ただの旅行好きであれば、どこへ行っても大体はハッピーだが、旅行は好きだが満足いかない旅行をした時に大きく落ち込むタイプは、しっかり下調べをし、慎重に旅行先を選ぶ傾向にあるだろう。

私に関していうと、「美味しくないもの」を口にした際の落胆が大変に大きい。食事の時間及び食事に対する支払いにより出てきた、本来ならば私を満足させてくれるはずのものが、何らかの理由により私に不満を引き起こした場合、私は怒りに近い落胆をおぼえる。

だから私は、美味しいお店を見つけるとついついリピートしてしまう。なので、オフィスの近くでランチをする際は、好きなお店を回遊魚のようにぐるぐる回ることとなる。ちなみに私のお気に入りは「押競満寿」と「Tocagee」だ。


ところで、私は極度の甘党である。よって、「甘いものによるガッカリ」はなんとしてでも避けたい。オフィス近所にあるスイーツ店を隈なく調査した結果、私はある1つの素晴らしいお店にたどり着いたのだ…


それが、フラウラ

何を食べても美味しい。ケーキも、パンも、ちょっとしたメレンゲのお菓子も。お店を訪れるたびに、そのメレンゲのお菓子を一欠片、サービスでいただけるのだが、それが家路への足取りを、まさにそのメレンゲのお菓子のようにふわりと軽くしてくれるのだ。

また、いつも店頭に立たれている女性(後で知ったがフラウラのシェフ桜井氏の奥様だった)の接客が素晴らしい。テキパキと動きながらも1つ1つの動きや言葉は丁寧そのもの、いつも笑顔を絶やさず、最後のお辞儀も美しい。接客業のお手本のような方だ。

私の大のお気に入りは、「キャトルキャール」というパウンドケーキ。シンプルながらとても美味しく、ボリュームもあり常温で1週間もつ。来客時にもよく振る舞っていた。


そんなフラウラの閉店を知ったのは、つい2週間ほど前。フラウラのケーキを片手に携え、こちらも大好きな「デレクトコーヒーロースターズ」にコーヒー豆を買いに行った時のこと。「フラウラ、閉店しちゃうんですってね」とお店の方に声をかけられた。

ショックだった。せっかく見つけた美味しいお店がなくなってしまう、あの丁寧な接客が受けられなくなってしまう、そして、大好きなキャトルキャールがもう食べられなくなってしまう…


今日12月16日が、ケーキ販売の最終日だった。最後のケーキを求めて長蛇の列ができていた。私もその列に加わった。

30分程並び、ようやくケーキとキャトルキャールを購入することができた。もちろん、丁寧な接客と一欠片のメレンゲ付き。


そのケーキを食べながら、私が求めている「美味しさによる満足」とは何だろうか、とふと考える。

ただ味が美味しいケーキならば、他のお店にもある。ケーキのレシピもお店ごとに大きく違っているわけではないだろう。

しかし、私は自然とフラウラに向かってしまう。そのケーキを口にすればするほど、他のケーキ屋から足が遠のいていくのだ。

フラウラのケーキには、他のケーキ屋にはない独特の統一がある。ケーキを構成する複数の要素が、パズルのピースがはまるように1つのまとまった味を形成する。それは香りでいう「アコード」のようであり、そして各ケーキのアコードは、どこか「フラウラらしさ」を醸し出している。

私はそのアコードに、「美味しいケーキとは」という命題に対する桜井シェフの思索の足跡を見出した。彼の全てのケーキは、複雑でありながら統一感があり、さらに軽やかに仕上がっているのだ。そこに至るまでの熟考と試作の影が、ケーキの凛とした味わいの後ろに朧げながら見えている。


私はきっと、「美味しさを追求する姿勢」そのものを求めているのだ。その姿がより色濃く表れているものに、私は満足できるのだと思う。

それは香りについても同じで、「良い香りとは」ということを掘り下げる姿勢に私は感動し満足する。そしてそれが感じられない今日の香水業界に不満を覚え、çanomaを立ち上げた。


もうフラウラのケーキが食べられなくなることは残念でならない。それは私の生活を彩る1つの色が消えてしまうことを意味している。

しかしそれでも、フラウラのケーキに触れ、桜井シェフの哲学を垣間見、そしてそれを1人でも多くのお客様に伝えようとする奥様の姿を目の当たりにしたことは、私の人生において大きな学びであり喜びとなった。

素晴らしいお店を作った2人に、賛辞を贈りたい。


今後、お店を長野県のどこかにオープンするらしい。いつか長野に行く際に、少し無理をしてでも立ち寄ろうと思っている。またあのキャトルキャールを口にできる日を、今から心待ちにしている自分がいる。


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