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çanoma式香水の作り方

「日本の感性を用いた香水作り」をブランドçanomaの1つのテーマとして掲げている一方、この表現は非常に曖昧である。

そもそも、「日本の感性」とは何か?そして、それを用いてどのようにして香水を作るのか?という疑問が浮かんでくることだろう。

これらの問いに、明確な回答はない。あくまで私の個人的な考えがあるだけだ。それについて今日は書いていきたい。

「日本の感性」というと、伝統的な日本文化を想像する方も多いだろう。実際にそういったものをテーマとしているニッチフレグランスブランドもいくつか存在する。

一方で、日本人としての私が、本当に日本の伝統的なものをきちんと理解できているかと言われると、非常に怪しい。例えば、着物を美しいと感じても、その真価を理解しているとは言えないし、そもそも日常的に着物に触れてるわけではない。着物と深く関わり合うことなく、「着物をテーマにした香水を作った」と言われたら、どこか表面的な印象を受けるのは私だけだろうか?同様に、日本の伝統的なものをテーマとしているブランドに限らず、自分の外からストーリーを引っ張ってきて香水を作っている海外のブランドに対しても同様の感覚を抱く。

もちろん、そういうものを好むクリエーターや消費者がいるのはよく理解しているし、そもそも自分とはあまり関係のないストーリーから香りを紡ぎ出すのが得意なクリエーターもいるだろう。ただそれは、私がやりたいことではない。

日本の伝統的なものをテーマにした際に、それを身近なものとして感じられる程、我々日本人が日本の伝統文化に精通しているとは思えない。

一方で、私たちはその伝統文化が培った土壌に生まれており、根っこの部分にはその伝統が間違いなく息づいている。

ということは、私の感性は、その伝統文化を根っこの部分に持ち、生活する上でその他様々なものから影響を受けることで培われているはずだ。私はこの、伝統文化とその他のものが混ざりあった、「現代に生きる日本人」の感性こそが、私たちが身近で、美しく、そして面白いと感じられるものだと信じている。

私は、「現代に生きる日本人」の1人として、私の感性を持って香水作りをしている。つまり、冒頭部分における「日本の感性」とは、香水クリエーターとしての私個人の感性を指している。

私の感性をどのように香水作りに生かしているか。

先ほど「自分の外からストーリーを引っ張ってきて香水を作っている」ブランドを表面的に感じる、と書いた。私はその逆のことをしたい。つまり、自分の内からストーリーを持ってきたいと考えている。

つまり、私の個人的な感動を創作のテーマとしているのだ。

感動はふとした瞬間に訪れる。そのためには壮大な恋愛をする必要も、大きな荷物を抱えて旅行をする必要もない。ちょっとした季節の変化や、些細な出来事に、心がぐらりと揺れ動く。

その心の動きは、私の内側から生まれたストーリーとなる。当事者である私は、このストーリーの真価をよく知っている。

これを香りに閉じ込めることが、私のクリエーションだ。調香師に、私の内から出てきたストーリーを説明し、各要素を香りで置き換えていく。それを香水という形で再構成し、細かい部分に修正を加えていきながら、自分の心の揺れに香りを近づけていくのだ。

もちろん、うまくいかないこともある。私の感動は強くて明確でも、香りとしては成立しないようなパターンだ。そういったものは、無理に完成させず、そのまま寝かせておく。ある日、もしかしたら面白い香りに化けるかもしれない。

これが、「感性を用いた香水作り」だ。それが毎度うまくいくかどうかの保証はどこにもないが、このやり方だと、偶然の要素が多分に含まれ、今までにない新しい香りが生まれうる。

うまく伝わっただろうか…?正直、このことについて説明しようとしても、いつもきちんと私の言わんとしていることを伝達できている自信がない。もしわかりにくい点があったら、遠慮なく教えて欲しい。今後この私の考えを説明するための参考にさせてもらえれば、と思う。


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