「香水が苦手」の正体
「香水が苦手で、嗅いでるとすぐ頭が痛くなってしまうのですが、çanomaの香りは大丈夫です。なぜでしょうか？」
というコメントをもらうことがある。
大変ありがたいお言葉であるが、その理由はçanomaが天然香料のみを使っているからでも、アルコールフリーだからでも、オーガニックだからでもない。çanomaの香水は、天然香料及び人工香料を使い、水とアルコールで希釈し、オーガニックのカテゴリーには入らないものである。いわゆる通常の香水だ。
これは以前どこかに書いた気がするが、香水のクリエーションにおける特徴は、「何が入っているか」と同じくらい、「何が入っていないか」に出ると私は考えている。つまり、「作り手が好きなものが入っている」ということと同程度に、「作り手が嫌いなものが入っていない」ということもそのクリエーションを特徴付けうるということだ。
よって、「私の好みや感性によって排除された、ヨーロッパ人の手によって作られた香りには多くの場合入っている何らかの香料が、日本における“香水嫌い”を産んでいる」という仮説を立てることができる。この仮説はまだきちんと検証されていないし、その特定の香料が何であるかはいまだによくわからないが、çanomaがこのように日本マーケットで受け入れられていることを考えると、仮説が正しい可能性は十分にある。
もしこの仮説が正しかったとすると、「香水嫌い」という言葉は非常に不正確なものとなるだろう。香水は、香料、アルコール、及び水で構成されており、これらが混ざることで特殊な化学反応が起こらないことを鑑みると、「香水嫌い」はこれらの要素のどれかが「嫌い」であると考えられる。
水が嫌い、というケースはほぼないだろう。またアルコールは短時間で蒸発するため、噴射後すぐの香りを嗅がなければ問題はないし、周囲で香水をつけている人からアルコールの匂いがすることはない。全ての香料が苦手だ、ということは考えにくく、仮説の通りただ「何らかの香料が苦手」であるとするならば、香水に限らずその香料が使われているプロダクト全般が嫌いであるはずで、それをもってして「香水全般が嫌い」というのはあまりにも乱暴である。
私はここで、「香水嫌い」について批判を展開しているのではない。私が違和感を覚えているのは、「香水嫌い」となっている原因を探ろうともせず、すぐ代替品で“お茶を濁す”ブランドに対してだ。天然香料のみを使用している、アルコールフリー、高価な香料、オーガニック…これら耳障りの良い謳い文句で、さも「香水嫌い」のための解決策を提案したようなつもりになっている怠慢さを見るにつけ、何だかなぁ、と思ってしまう（もちろんこれらの謳い文句は、香水嫌いのためだけでなく、クリエーターの何らかの“こだわり”や、あるいは純粋なマーケティングのためのものであることも往々にしてあるのだが）。
きっと、世の中には本当に香水が苦手な人もそれなりにいるはずだ。そういう方に、香水を無理強いするつもりは一切ない。ただ、きっと「香水嫌い」を公言している方の多くは、一部の香水に含まれている特定のものが苦手、というだけでしかなく、ただその苦手だと認識させられた経験により、香水全般を目の敵にしているだけだ、と私は思料している。
1香水ブランドとして、そういった人に「これなら自分でも楽しんで使える」と感じてもらえるといいなぁ、と思う。
今日はそんなことを考えさせられた雨の日だった。明日は、晴れるかな。
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