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様々な問題の彩

ひどい1日だった。

朝起きてメールをチェックすると、私の香水の成分分析をしている日本の会社から一通メールがきていた。

「成分表に記載がある一方で、検査では検出されなかった物質が3つあります」

恐れていたことが…成分分析の結果が成分表と違う、ということは、いずれにしても成分分析をやり直さなければならず、それに伴って時間もお金も余計にかかることになる。

ただし、成分表に記載がない物質が検出されるよりマシだった。レシピが間違っていない限りにおいて、それは異物混入の可能性を示唆するからだ。

内容を見てみると、紫外線吸収剤に関するものが問題になっているようだった。検査結果は、工場でアルコール等と共に追加するはずの紫外線吸収剤がまるっと入っていないということを示していた。

まず最初に疑ったのが、工場での手違いだ。本来入れるべき紫外線吸収剤を入れ忘れていたのではないか、と思ったのだ。もしそうだとしたら、非常に腹立たしいことだ。今後の工場でのオペレーションも信頼できなくなってしまう。

しかし、ふと思った。もしかしたら、そもそも紫外線吸収剤は、諸々のオペレーションが終わった後、最後の最後に追加するではないか、と。

確認してみると、やはりそうだった。我々は紫外線吸収剤を入れる前のものを送ってしまっていたのだ。

通常、紫外線吸収剤は、着色料と共に添加する。私の香水には着色料は添加されないが、なるべく長く香りを楽しんでもらいたい、という私の願いから、紫外線吸収剤だけは添加することにしたのだ(実はこれが思いの外いい値段する)。
着色料は、macération(漬け込み)が終わった後に添加する(漬け込みについては、以下の記事を参照)。工場が日本に送った検体は、漬け込み終了前のものだったので、紫外線吸収剤が入っていなくて当然だった。

私は工場に、日本に検体を送る目的を、薬機法対応のための成分検査であることを説明していた。よって、私はてっきり、工場は全成分が入ったものを送っていたと思っていた。それが、蓋を開けてみると、紫外線吸収剤を入れる前、つまり、漬け込み終了前の香水を送っていたのだ。

さて、今までだったら、工場に対して怒りをぶちまけていただろう。「成分検査なんだから、全成分入っているものを送らないとダメに決まってるだろう。そんなことちょっと考えたらわかるはずだし、あんたら何年その仕事やってるんだ!」と。もちろん、最初は腹立たしかった。しかしながら、少し時間が経ち冷静になってからは、

「なるほど、こういうふうなことが起こりうるのね」

と、どこか感心している自分がいた。

ブランドを立ち上げる決意をしてから今までの一年ちょっとの間で、予想もしなかったようなことがすでに複数起きている。その中でも今日の出来事が一番深刻かもしれないが、いつの間にか、以下のように考えられるようになっていたようだ。

私は問題が必ず起こることを知っている。
それがいつどこで何について起こるかわからないだけだ。

今回のこの出来事によって、実は紫外線吸収剤に関するもの以外に、成分表に一部誤りがあることが発覚した。これはアレルギー成分に関するもので、パッケージに表記しなければならないものだった。

私は来週、パッケージを注文予定で、今ちょうどデザインの最終確認をしているところだった。もしこの件が発覚する前にパッケージを注文していたら…と思うと恐ろしい。ある小さなミスが、その先にある大きなミスを防いでくれた形となった。ふぅ…

この件は私の香水の調香師であるJean-Michel Duriez氏のサポートで、なんとか早期に解決しそうだ。今日の夕方、彼から、

Tu es en train d'apprendre un merveilleux métier ! Tu auras une belle vie :)

とメッセージがきた。「君は今素晴らしい仕事について学んでいる最中なんだよ。素敵な人生が待っているよ」という内容だ。

本当にそう思う。いつどこで起こるかわからない様々な問題が、私の人生を彩るのだ。

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