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オードリーの哲学 〜フランカーと派生商品〜

オードリーが好きだ。彼らの漫才も、出演するテレビ番組も、そしてもちろん、ラジオ番組『オードリーのオールナイトニッポン』も、大好きだ。

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特に、若林さんの考え方にすごく共感することがある。今日は彼のある発言を引用し、それに関連して香水について書いていこうと思う。

以下の発言は、中京テレビ『オードリーさん、ぜひ会って欲しい人がいるんです。』という番組の、お笑いコンビのカミナリが出演した会でのもの。カミナリの石田さんが、2016年、2017年と出場したM-1グランプリに、2018年も出るべきか迷っていて、若林さんに投げかけた「どうしてオードリーは準優勝した翌年のM-1グランプリに出場しなかったのか」という質問に対する回答である。文字起こしをしてみた。

俺たちは形を決めて、その形で行かなきゃいけなかったから。漫才の腕とか、テンポとか間とか、そういうのでいけないからさ。東京の芸人って舞台数とか少ないし。で、形を見せちゃったからさ、審査員の人あんま変わんないじゃん。だから、その形があった上で全く同じもの見たら去年と一緒ってなるから、スカしとか、変えなきゃいけないじゃない。でもそれはスカしであるから、進化じゃないじゃない?ありものを外すだけだから、なんか、そういうふうに、退化させたくなかったんだよね
(中略)
周りは進化っていうんだよ、多分。去年と変わってるって、やり方が。例えば、叩かないとかさ、叩き返してそれをなんか弾き返すとかなってきちゃうけど、叩いて叩き返すことが元だから、スカしたくないから。ずいぶん言われた、出ないんだ、根性ねぇな、とか。でもそれは進化じゃないからね、と思って。

ここでいう「形」とは、オードリーの代名詞である「ズレ漫才」のことだ。つまり、「ズレ漫才」という完成された「形」がある以上、その一部を変化させたもの(=スカし)は、彼らにとっては退化であり、そういうものをM-1グランプリで披露することは、彼らにとっては「退化」である、ということを意味している。

香水の世界において、オードリーの言うところの「退化」に該当するものは2つある。1つはフランカー、もう1つは派生商品である。前者は、同じボトルを用いた、香りと名前を少しだけ変えた商品をさす(Miss Diorに対して、Miss Dior Cherieのようなもの)。後者は香水の香りを元にしたキャンドルやルームフレグランス、ボディソープなどのことである。どちらも基本的には売上を伸ばすためだけの商品だ。

最近の大手ブランドによるフランカー戦略は行き過ぎているように感じる。Yves Saint LaurentのBlack opiumは、そもそもがOpiumという香水のフランカーであるだけでは飽き足らず、2014年に発売された後、既に21個ものフランカーが出ている。フランカーを出すこと自体は悪いことではないが(フランカーが予想を遥かに上回って成功した例もある)、あまりにも連発されるとやはり印象はよくない。

ニッチフレグランスブランドがフランカーを出すことは少ないが(それでも少しずつ増えてきた印象はある)、派生商品には積極的に取り組んでいる。これは私の個人的な好みの問題なのだが、これら派生商品において、ボディソープや石鹸は積極的に使いたいと思う一方、ルームフレグランス系は避けている。好きな香水が同じトーンで香り続けるというのが、どうもあまり好きではないようだ。ルームフレグランスにはルームフレグランスに適した香りがあるように私は考えている。

ブランドの運営母体が株式会社である以上、その至上命題は「株主利益の最大化」である。よって、それに寄与するフランカーや派生商品の制作について、異議を唱えるつもりは一切ない。私もブランドが大きくなっていく過程で、フランカーはわからないが、少なくとも派生商品については取り組みたいと思っている。

私がここで言いたいのは、「そこに哲学はあるのか」ということだ。

オードリーは、自身のお笑いの哲学に基づいて、周囲の批判にもかかわらず、準優勝した翌年のM-1グランプリに出場しないという選択をした。周りは進化と呼ぶかもしれないものを、自分たちは「退化」だと考えていた。
一方で、昨今の香水業界におけるフランカーや派生商品には、全く哲学を感じない。「売れている商品のフランカーを出すと売上が上がると風の噂で聞いたもんで」くらいの感覚で、フランカーや派生商品を出しているように見て取れるのだ。それらを出すことにより、ブランドとしてどういう価値を提供できるのか、あるいはどこまで会社の利益に貢献するのか、という考えもなく、周りがみんなやっているから、私もやろう、程度に見受けられる。なんというか、フランカーや派生商品から、中途半端な印象を受けるのだ。

これからきっと、私にも、フランカーを出す、あるいは派生商品を制作する、という判断を求められるタイミングが訪れると思う。その時に、オードリーのように、私自身の哲学に立ち返って、そしてそれに基づいて選択をしていきたい、と若林さんの発言を受けて強く感じた。

ところで、オードリーが好きすぎて、オードリーのお2人に、ぜひ私の香水を試してもらいたいと思っている。それにあたって、中京テレビの『オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。』に出演することが一番の近道であるように思っているのだが、どうだろうか。出たいなぁ…会いたいなぁ…

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