見出し画像

昨今の香水マーケットについて

ムシュくん、寝てます…。
※本文とはなんの関係もありません。

前回の記事の最後で、「ここ最近の香水マーケットの動きと、私から見た今日のニッチフレグランスマーケットの問題点について説明」する、と書いたので、書きます。書きますが、きっと長くなるんだろうなぁ…

この記事は、以前クラウドファンディングの際に書いた「フランス香水マーケットに対する個人的考察」と「均質化するニッチ」を合わせて、その上で私がブランドとしてどういったことをやりたいのかをまとめようと思う。
例によって長くなりすぎたら2回に分けます(執筆後注:結局2回に分かれます)。
それにしても今過去書いたものを見返しても思うけど、今年の箱根駅伝は凄かったなぁ…ちゃんと中継見たかったなぁ…

今日は近所のおじいさんがお話をしてくれます。

1. 均質化したメインストリーム

昔々その昔、メインストリームの大手ブランドがなかなか攻めたクリエーションをしていたころがあったそうな。その頃はまだニッチフレグランスブランドが数えるほどしかなかったそうじゃが、各大手ブランドが、顧客ターゲットをきっちりと絞り、今日の大衆的な香水とは違った、面白い香水を作っておったのじゃ。ほれ、Yves Saint LaurentのKourosなんかはその当時の香水じゃよ。嗅いだことはあるかね?ない?そうかね、今度機会があったら試してみるとよろしい。濡れたヤギみたいな匂いがする、素晴らしい香水じゃぞ。

そこへ、世界中で、老若男女に売れた香水が出てきたのじゃ。何かわかるかの?
Calvin KleinのCK Oneじゃ。1994年のことじゃったかのぉ。

この香水のせいで、どのブランドも、世界中で流行る香水が欲しい!私もCK Oneを作りたい!と思ったわけじゃ。それが、今のメインストリームの香水が大衆化した原因だと言われておる。

2. ニッチフレグランスの台頭

今日大きくなっているニッチフレグランスブランドの多くは、2000年の前半から中頃にかけて登場したものが多いじゃろ。これはあくまで仮説じゃが、メインストリームのクリエーションが大衆化していったことに不満を持ったクリエーターが反旗を翻したのが、ニッチフレグランスと考えられはしないかの?CK Oneの登場以降、香水がつまらなくなったから、ワシらで面白いものを作ろうじゃないか、と立ち上がったのじゃ。
Frédéric Malleは2000年、Le LaboとByredoは2006年じゃ。え?Maison Francis Kurkdjianは2009年と遅いのはどうしてかって?そりゃあ、奴はこれからニッチフレグランスの時代が来る、と先を行くブランドを見て気づいたんじゃろうなぁ、何しろ鼻が良いからのぉ奴は、先行くブランドの残り香でも嗅いだのじゃろう。ほっほっほー。

3. ニッチフレグランスの均質化

ところが、じゃ。香水ビジネスは思いの外参入障壁が低い。ちょっとしたお金さえあれば、誰もが簡単にブランドを作れてしまうのじゃ。結果、どうなったか。ブランド数がどんどん増え、今では毎年グローバルで300もの新しいブランドが世に出てくるそうじゃ。毎日世界のどこかしらで、新しいブランドの産声を聞くことができる、ということじゃな。なんとも、おめでたい話じゃ。
ブランドの数が増えたら、どういうことが起こるじゃろか?そりゃもちろん、競争が激しくなる。競争が激しくなったら、生き残るために売れようとする。売れようとするために、今のニッチフレグランスブランドがしていることが、ワシには、ニッチのラベルが貼られた大衆的な香り作りか、奇抜なコンセプトに引っ張られた、とてもじゃないが身に付けらん香り作りにしか見えんのじゃ。全てのブランドとは言わんがのぉ…
売れたニッチフレグランスの香水がパクリにパクられることも、もはや驚かなくなってしまった。いつぞやか、あるニッチフレグランスブランドのクリエーターが、「この香水は○○(大ヒットしたあるニッチフレグランスの香水)に似ているだろう。でも違うんだ。」と、堂々とパクっていることを認めるような発言をしておった。違いはあったかって?あったわけなかろう、純粋なパクリ商品じゃったよ。きれいに、そっくりそのままパクっておった。

4. 今日のニッチフレグランス

おじいさん、お話ありがとうございました。
ここからは、今日におけるフランスのニッチフレグランスブランドの私が思う問題点を書いていこうと思う。

まず、競争が激しくなった現在、新興のブランドが他のブランドとの差別化を試みるにあたり、フランスにおいては大きく分けて下記の2つの戦略を取った。

① 有名な調香師に調香を依頼し、その調香師の名前を全面に出す
② 高価な原材料を使っていると謳い、香水の液体部分の価値の高さを全面に出す

①の、有名な調香師の名前を前面に押し出す差別化戦略については、大きく2つの問題をはらんでいる。1つは、ブランドのクリエーターが実はあまり香水のことを知らず、調香師にきちんと指示が出せない、ということだ。以前の自己紹介シリーズのどこかで、「良い香水は良い調香師のみでは作られず、良いディレクションが不可欠である」と書いたが、そのディレクションが欠けており、片手落ちの状態になっているブランドがかなりあるように思っている。
2つ目の問題点は、①のタイプのブランドが増えてきたことで、独立した有名調香師に依頼が集中し、調香師が1つ1つのプロジェクトに時間をあまり割かなくなった可能性がある、ということ。結果、調香師が予め準備した香りのカタログの中から、クリエーターが好きな香りをピックアップして販売する、ということが横行しているらしい。そこにクリエーターが適当なストーリーテリングをつけて販売している…なんだかヘンテコな話だ。

②の高価な原料推しについては、元も子もないのだが、高価な原料を使うことが目的となってしまい、そもそも完成品としての香水が良い香りではない、ということがよく起こっている。んなアホな…と思われるかもしれないが、実際にこういったブランドはそこそこ存在している。クリエーターに話を聞くと、「○○産の○○は希少価値が高くて云々」という話を延々としてくれる。本当に、延々と。「良い原料(≒高価な原料)を使えば、良い香水が作れる」という信仰がどうもあるみたいだ。

ここでは詳しく書かないが、イタリアのニッチフレグランスブランドは、コンセプトを奇抜にし、香り自体もよくわからない独特のものを作る傾向が強いように思う。コンセプトと香りのインパクトのみで勝負して、「どうだ、アーティスティックだろう!」と鼻高々のブランドが非常に多いように思われる。不思議なことにこういったブランドはフランスには少ない。フランス人の方がコンサバなのだろうか。

まとめ

なぜこんなことが起こってしまっているか、と言われると、きっとクリエーターのやりたいことが、実質的に差別化になっていない、ということなのだと思う。つまり、「香水ブランドを作りたい」という願望止まりで、なぜブランドを作りたいか、そのブランドがあることによって使ってくれる人の生活がどのように変わるか、ということまで考えが及んでいないのだと思う。

「お前はどうなんだ?ちゃんとそういうこと考えているのか?」

という質問に答えるところまで書こうかと思ったが、字数的にそれは次回に回した方が良さそうなので、次回書きます。

ここ最近文章を書く機会が増えてきたものの、どこまで細かく説明するべきかイマイチ定まらず、若干中途半端な感じになっていることをお許しください。ここで日々書き続けていれば、きっとそのうちきちんとした文章が書けるようになるはず…!!!

次回も乞うご期待!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?